SUPER GTとDTMの相違点と今後の展望
車両規定でDTMにはあるがS-GTにはなく、大きく違っているのが、空気抵抗を抑えてストレートスピードを高める「DRS(抵抗低減装置:Drag Reduction System)」と、一定期間だけ燃料流量を増やしてパワーを引き上げる「プッシュ to パス」の存在だ。
ふたつはレース中の追い越しをし易くするデバイスで、レースを盛り上げるために“抜きつ抜かれつ”を増やそうということから、DTMでは採用されているがS-GTでは採用されていない。
一方、S-GTではGT500とGT300が混走しており、DTMが同一クラスのみで戦っているのに対して、S-GTにはパフォーマンスの違う両者が混走することで、“抜きつ抜かれつ”だけでないレースの面白さが存在する。
競技規則でも両者の間には様々な違いがある。例えば、DTMはタイヤ交換のためのルーティンピットインはあるものの、ドライバーが1人で走りきるスプリントレースであるのに対して、S-GTではタイヤ交換だけでなくガソリン補給とドライバー交替もあるセミ耐久レースで、レース距離/レース時間もDTMが1時間足らずであるのに対してS-GTは250kmから500マイル(約800km)と、より耐久色が濃くなっている。
しかし何よりも最大の違いは、DTMではタイヤメーカー一社が提供する同性能のコントロールタイヤ(現在は韓国のハンコック製)を使用。一方のS-GTではコンペティション・タイヤとなっており、ブリヂストン、ミシュラン、ヨコハマ、ダンロップの4メーカーが技術開発競争を繰り広げている。
コントロールタイヤを使用するDTMとしては「タイヤをイコールとすることでレースが面白くなる」ということで、これも正論だが、S-GTでは「モノづくりの観点からタイヤでもコンペティションを続けていきたい」としている。これも紛れもなく正論だ。
他にも様々なレギュレーションの違いがあり、Class1の車両が出来たからといって両者の交流は決して安易に実現できるものではない。とは言え、特別交流戦の仕掛け人のひとりでもあるARTAの鈴木亜久里総監督は「日本でトヨタ(レクサス)とホンダや日産がやりあってるところに海外のメーカー、BMWやアウディが加わったら面白いに決まっている」とコメント。
そう、DTMにS-GTを戦っている国内のメーカーがフル参戦したり、反対にS-GTにDTMを戦っている海外メーカーがフル参戦するにはまだ時間がかかるかもしれない。
しかし、今回の特別交流戦のように7台のDTM勢が加わっただけで、これだけ最高潮に興奮されられるレースになる。まさに的を射た亜久里監督の言葉。年に一度であっても、お互いに遠征し合って双方のレースを盛り上げることは続けてほしいものだ。