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SUPER GTとDTMの違いは? 日本とドイツの最高峰レースがガチンコ対決した意義 

富士スピードウェイで特別交流戦を実施

 天候不順な週末となった11月23日(土)~24日(日)、富士スピードウェイでは、SUPER GTとDTMの特別交流戦が開催された。これはSUPER GT(S-GT)を統括するGTアソシエーションとDTMを統括するITRが、”クラス1″と呼ばれるふたつのシリーズ戦に共通したレギュレーションを策定した結果で実現したドリームレース。日欧における“最強のハコ車”レースがコラボしたのだ。

 10月にドイツのホッケンハイムで行われたDTMのシリーズ最終戦に、S-GTの代表として3台が出場したものの、初めてづくしのなか日本からの参戦車は完敗に終わっていた。

 だが、今回はホームコースで迎え撃つ格好となり、日本勢=S-GT勢の反撃に注目が集まっていた。

 

 ファンの期待に応える格好で土曜日のレースでは「KeePer TOM’S LC500」を駆るニック・キャシディがポール・トゥ・ウィン。2~3位にも「KEIHIN NSX-GT」の塚越広大と「RAYBRIG NSX-GT」の山本尚貴が続いてS-GT勢が見事に表彰台を独占したのである。

 日曜日のレースでも激しいドッグファイトに競り勝った「Modulo Epson NSX-GT」のナレイン・カーティケヤンがトップチェッカー。2~3位には遠征組のマルコ・ヴィットマン(BMW M4 DTM)とロイック・デュバル(BMC Airfilter Audi RS5 DTM)が入り、まるでシナリオでもあったかのような大団円を迎えていた。

 2列縦隊で極限まで車間を詰めた体制のまま、全車がフルスロットルでスタートしていく “インディ・スタート”は迫力満点で、取材陣からも非常に好評だった。

 

SUPER GT×DTM交流戦、実現までの経緯

 ドイツを主戦場に戦っているDTMは、1984年にグループA車両によるレースシリーズとして誕生。93年には車両規則を一新してグループAツーリングカーにおけるクラス1規定を導入した。参加する自動車メーカー/ワークスチームによる技術開発競争が一気に激化し、95年にはFIAが国際ツーリングカー選手権を制定したが、コスト急騰から自動車メーカーの撤退が相次ぐことになった。結果、主役が次々と去り、DTMは96年にシリーズ休止へと追い込まれたのである。

 3年間の休止期間を置き、DTMは2000年には再開されているが、第一期の反省からコスト高騰に繋がる過度な技術開発競争を規制。参加メーカー間の協力のもと、車両規定も話し合いによって決定し、プロモーションにも力を注ぐなど、盛り上げに勢力を傾けた結果人気も上昇、第一期以上の繁栄をみることになる。

 

 一方のS-GTは、グループA車両による「全日本ツーリングカー選手権」が93年限りでシリーズ休止となったのを受けて94年から本格スタートを切った「全日本GT選手権(JGTC)」が前身。2005年に現行の「SUPER GT」に移行している。

 こちらも、グループC車両による「全日本スポーツプロトタイプカー選手権(JSPC)」が休止/廃止に追い込まれた反省から、メーカーが協力し合ってプロモーションにも力を入れ、トップカテゴリーへと発展していった。

 そんなDTMとS-GTのコラボは2010年ころから開始。両シリーズでは以前のクラス1とは異なる”Class1″と呼ばれる共通の車両規則を新たに制定し、3年に1度の車両規則改定のたびにお互いが”Class1″に近づけてきたのだ。

 S-GTでは2014年モデルからカーボン製のモノコックに共通部品を使用し、2ℓ直4直噴ターボエンジンを搭載。DTMでも2ℓ直4直噴ターボエンジンを2019年から採用した。ただし、まだまだ両者の車両規定や競技規則に関しては隔たりが少なくないのが現実でもある。

 

SUPER GTとDTMの相違点と今後の展望

 車両規定でDTMにはあるがS-GTにはなく、大きく違っているのが、空気抵抗を抑えてストレートスピードを高める「DRS(抵抗低減装置:Drag Reduction System)」と、一定期間だけ燃料流量を増やしてパワーを引き上げる「プッシュ to パス」の存在だ。

 ふたつはレース中の追い越しをし易くするデバイスで、レースを盛り上げるために“抜きつ抜かれつ”を増やそうということから、DTMでは採用されているがS-GTでは採用されていない。

 一方、S-GTではGT500とGT300が混走しており、DTMが同一クラスのみで戦っているのに対して、S-GTにはパフォーマンスの違う両者が混走することで、“抜きつ抜かれつ”だけでないレースの面白さが存在する。

 競技規則でも両者の間には様々な違いがある。例えば、DTMはタイヤ交換のためのルーティンピットインはあるものの、ドライバーが1人で走りきるスプリントレースであるのに対して、S-GTではタイヤ交換だけでなくガソリン補給とドライバー交替もあるセミ耐久レースで、レース距離/レース時間もDTMが1時間足らずであるのに対してS-GTは250kmから500マイル(約800km)と、より耐久色が濃くなっている。

 しかし何よりも最大の違いは、DTMではタイヤメーカー一社が提供する同性能のコントロールタイヤ(現在は韓国のハンコック製)を使用。一方のS-GTではコンペティション・タイヤとなっており、ブリヂストン、ミシュラン、ヨコハマ、ダンロップの4メーカーが技術開発競争を繰り広げている。

 コントロールタイヤを使用するDTMとしては「タイヤをイコールとすることでレースが面白くなる」ということで、これも正論だが、S-GTでは「モノづくりの観点からタイヤでもコンペティションを続けていきたい」としている。これも紛れもなく正論だ。

 他にも様々なレギュレーションの違いがあり、Class1の車両が出来たからといって両者の交流は決して安易に実現できるものではない。とは言え、特別交流戦の仕掛け人のひとりでもあるARTAの鈴木亜久里総監督は「日本でトヨタ(レクサス)とホンダや日産がやりあってるところに海外のメーカー、BMWやアウディが加わったら面白いに決まっている」とコメント。

 そう、DTMにS-GTを戦っている国内のメーカーがフル参戦したり、反対にS-GTにDTMを戦っている海外メーカーがフル参戦するにはまだ時間がかかるかもしれない。

 しかし、今回の特別交流戦のように7台のDTM勢が加わっただけで、これだけ最高潮に興奮されられるレースになる。まさに的を射た亜久里監督の言葉。年に一度であっても、お互いに遠征し合って双方のレースを盛り上げることは続けてほしいものだ。

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