UXをベースに最新の電動化技術を投入
レクサスは、中国・広州で開催されている広州モーターショーで、ブランド初のEV(電気自動車)市販モデル「UX300e」を世界初公開した。コンパクトクロスオーバーのUXをベースにEV化したこのモデルは、2020年以降、中国や欧州などを皮切りに順次発売し、日本でも2021年前半の発売を予定している。
2019年の東京モーターショーでレクサスは、これまで培ってきた電動化技術を大幅に進化させ、クルマがもたらす楽しさや喜びを提供し続けることを目指す電動化ビジョン「Lexus Electrified」を発表。広州モーターショーで発表されたUX300eは、そのLexus Electrifiedに基づいて開発された初のEV市販モデルとなる。
パドルシフトでの減速操作も可能に
開発の軸としたのは、EVの潜在能力を活かしてクルマの根源的な価値を磨き上げること。コンパクトSUVであるUXの持ち味である取りまわしのよさや優れた利便性、個性的なデザインはそのままに、EVならではの優れた静粛性や、上質で奥深い走りを加味した。
とくに運転感覚は、EVであってもドライバーの意図に忠実かつ滑らかな加速が味わえることに注力している。最高出力150kW(204ps)の高出力モーターをフロント部に搭載し、ドライブモードセレクトによってペダル操作に対して瞬時にトルクが立ち上がるパワフルなフィーリングを実現。
しかも、パドルシフトで減速度を4段階から選択することが可能で、ガソリン車のエンジンブレーキと同じように減速操作ができるなど、EVの特性を生かしながら従来のガソリン車と同じようなドライビングフィールを体感できるようになっている。
静粛性を活かした上質な走行フィーリング
現行UXは俊敏な走りと上質な乗り心地が好評を博しているが、この点も継承済み。EVの要であるモーターやバッテリーを車体下部に配置することで重心高を下げ、なおかつ前後重量配分や慣性モーメントも最適化が図られている。
また、独自の車体基本構成である「GA-Cプラットフォーム」が持つ性能をさらに磨き上げるべく、ブレースの追加やショックアブソーバの減衰力最適化など、EV化による運動特性の変化に合わせ、細部に至るまでチューニングを実施。これらにより、EVとなってもUXの走りにおける魅力は存分に味わえる。
走行中の静粛性に優れているのはEVならではの利点だが、UX300eではさらに床下バッテリーに遮音壁としての機能を持たせるなどで、走行中に生じる風切り音や小石・砂などの巻き上げ音を抑制。こうした配慮も、プレミアムブランドのSUVにふさわしい上質なフィーリングの実現に貢献している。
航続距離400kmを達成
EVを選ぶユーザーにとって気になるのは航続距離だが、UX300eは400kmという日常的な移動を不自由なく行なえる能力を持つ。54.3kWhという大容量リチウムイオンバッテリーを採用したほか、ハイブリッド車で培ったモーター、インバーター、ギヤ、バッテリーといった主要装備の効率を最大化し、システム全体としての性能向上を図ることで、運動性能や日常の使い勝手との“二律双生”を達成した。
機能面では、最新のコネクティッド技術の採用に注目したい。専用アプリでスマートフォンと連携することで、バッテリー残量や走行可能距離表示、充電の必要があるか否かを確認できる。また、充電完了までの時間を把握したり、出発時刻に合わせて充電が完了するようタイマーを設定することなどが可能だ。
ルックスは「都会派コンパクトクロスオーバー」と銘打って登場した現行UVと同様に、タフな力強さと俊敏な走りを想起させる大胆かつ洗練されたフォルムが魅力。そのうえ、EV化に合わせて、優れた空力性能を確保するべく専用ホイールや床下空力カバーを新開発した。
また、車内はシフトバイワイヤを採用したセンターコンソールをはじめ、すっきりとしたEVらしい操作系としている。
ベースモデルであるUXが属するコンパクトSUV市場は2000年代中盤以降に急速に拡大し、現在も世界的な人気に衰える兆しは見られない。支持される理由は多々あるが、概していえば「取り回しがよく運転しやすい」、「小型のわりに居住性や実用性に不満を抱かせない」、「乗用車的な運転感覚が味わえる」などといったことが、根強い人気の理由だろう。
しかし、数が増えすぎた感は否めない。全長を4500mm以下に設定したSUVは、国産、輸入を合わせると32車種ほど存在する。まさに群雄割拠の様相を呈しているわけだが、このなかで訴求力を持つには先述した人気の理由に加え「個性」も必要となる。そうした観点でいえば、「電動化」というのはアピールポイントとしては有効だろう。
UX300eの登場が、コンパクトSUV市場にどのような新たな潮流をもたらすのか、今後も注目したい。