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高級車ブランドの日産「インフィニティ」とホンダ「アキュラ」を日本導入しないワケ

あのレクサスでも年間6万台程度

 トヨタの高級ブランドとして北米で「レクサス」チャネルの展開が始まったのが1989年。日本での導入は2005年からと時間がかかったが、いまではレクサス・ブランドのグローバル販売で1割弱のシェアを実現。欧州に次ぐ市場として存在感を放っている。具体的にいうと2019年上半期(1月~6月)のセールス状況において、世界販売の合計が約36万台で、日本は約3.2万台といった具合だ。

 その他の地域では、北米が約14.9万台、中国が約9.5万台、欧州は約4.0万台といった規模。いずれも半期の数値なので、年間にすると日本での販売規模は6万台程度という計算になる。

 トヨタが北米でレクサスを立ち上げたのと同時期、日産とホンダもそれぞれ高級ブランドを生み出した。ご存知のように、日産は「インフィニティ」、ホンダは「アキュラ」だ。どのようなモデルを販売しているか馴染みはなくとも、マイナーチェンジ前のスカイラインがインフィニティのエンブレムをつけていたことを覚えているクルマファンは多いだろう。

 また、日本ではホンダのブランドで売られているNSXは北米に行くとアキュラのフラッグシップとして位置付けられている。つまり、インフィニティやアキュラで扱っているクルマを日本で販売していないわけではない。しかし、独立したブランドとしての展開はされていない。それは何故なのだろうか。

 大きな理由は独立したブランドを展開するには、レクサスのように販売網もしっかりとわける必要がある。しかし、インフィニティとアキュラの期待できる販売台数を考えると、そうした販売チャンネルを維持するのが難しいと考えられているのだろう。

アキュラの販売見込みは年1.9万台

 ここで、トヨタとレクサスの関係からそれぞれの販売見込みを計算してみたい。2019年1月~10月の日本国内における新車販売台数(軽自動車を除く)は、トヨタ112万9770台、レクサス5万3478台となっている(自販連調べ)。これを比率にすると4.7%となる。多めに見積もって、標準ブランドの登録車販売規模に対して5%程度が高級ブランドの見込み販売台数だとしてみよう。ホンダの登録車は年間販売が38万台規模であるからアキュラの見込みは1.9万台。日産の年間販売を34万台だとしてインフィニティは1.7万台となる。

 この台数のために新規の販売ネットワークを日本中に展開するというのは、肌感覚として難しいと感じるのではないだろうか。そのため、トヨタ以外のメーカーは高級ブランドの国内展開に二の足を踏んでいる。日本向けにローカライズするコストも考慮すると、かかるコストの面から現実的ではないというのが、大方の見方だろう。

 ただし、年間2万台規模というのは輸入車であれば珍しくはない。ここで主要な輸入ブランドの2019年度上半期(4月~9月)の販売データを見てみよう(JAIA調べ)。

メルセデス:3万1742台
BMW:2万4136台
VW:2万3526台
アウディ:1万3162台
BMW MINI:1万2677台

ボルボ:9173台
ジープ:7954台
プジョー:5343台
ポルシェ:3688台
ルノー:3218台
フィアット:3197台
シトロエン:2195台
ランドローバー:2031台
アバルト:1403台
ジャガー:1360台
アルファロメオ:1195台
スマート:1013台

イタフラ系と同規模ならばペイできる?

 これも半期分の数値なので、2倍にすれば年間の規模感が見えてくる。ドイツ御三家が突出しているのはご存知の通りだが、PSA(プジョー・シトロエン・DS)の合計で約1.6万台、ボルボが約1.8万台、FCA(ジープ・フィアットほか)の合計で約2.7万台といった具合だ。

 いずれも台当たりの単価でいえば、インフィニティやアキュラと大きくかけ離れてはいないレベルであろうことを考えると、1.5~2.0万台の年間販売が見込めるのであればビジネスとして成立する可能性はありそうだ。

 とはいえ、今回はトヨタとレクサスの販売台数という条件から約5%という比率を仮説として導き出したが、あくまで数字遊びであって市場調査をした結果ではない。アキュラ・ブランドのフラッグシップセダンである「RLX」の日本版「レジェンド」の年間販売が500台にも満たないレベルであることを考えると、いくら人気のクロスオーバーSUVをプラスしたからといって、先ほど計算した年間1.9万台という数字が甘い見込みであることは明確だ。さらに言えばレクサスが国産高級ブランドへの期待値を高めている中で、同等のクオリティを製品だけでなく、販売スタイルに盛り込むのは難易度が高い。

 ここ数年の動きを思い返せば、日産もホンダも日本市場においては高級ブランドの導入とは真反対の、軽自動車のセールス増に力を入れることで生き残ろうとしている。軽自動車という売れ筋を用意するというのは、エントリーユーザーをキャッチするという戦略ともいえる。そうした明確な意思があるわけで、高級ブランドを導入すると考えづらいのも事実だ。

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