ベーシックセダンから超高級車からまで
大阪・南港で開催された旧車オーナーが自慢の愛車を展示するイベント「昭和レトロカー万博2019」。コンクールに出すようなレストアを施したクルマもあったが、「所有すること、乗ること」を楽しんでいることを感じさせる旧車も多々見受けられた。そのようなクルマの中から注目の国産4ドアをピックアップしてみた。
日産・プレジデント
1965年に登場した日産のフラッグシップセダン。初代は専用の3ナンバーボディに4リッターV8または3リッター直6エンジンを搭載。佐藤栄元首相の公用車や大企業の社長車だったりと、まさに特別な人のためのクルマだった。2年遅れで登場したトヨタ・センチュリーとは国産最高級セダン市場の双璧といえるモデルだった。
水平基調の外装デザインでリヤの横長で大型のコンビネーションランプが特徴的。当時のアメリカ車を彷彿とさせる伸びやかなボディラインが魅力であり、インテリアも水平基調デザインを採用する。
プリンス・グロリア
プリンス自動車が1966年に日産に吸収合併される前の1962年に発表したのが2代目の「グロリア」。発売当初は1.9リッター直4エンジンを搭載したが、1963年に量産乗用車として日本初のSOHCエンジンとなるG7型2リッター直6を追加した。
この6気筒エンジンは、第2回日本グランプリ参戦のために生産された2代目スカイラインのホモロゲーションモデルに搭載したもの。当時のスカイラインは4気筒エンジンだったため、この6気筒を搭載するために、ボディフロント部を200mm延長したのは有名なハナシ。まさにレースに勝つために誕生したスカイラインだった。
ちなみに展示車は、G7型エンジンをベースに2.5リッター化した直6エンジンを搭載した『グランドグロリア』。トランクリッドには「2500」のロゴバッチが誇らしげに貼られ、内装には西陣折りを採用するといった超高級グレードだった。
マツダ・ファミリア
マツダは、1967年にロータリーエンジンを搭載した初の量産車として「コスモスポーツ」を発売。1年後の1968年には、2代目ファミリアにもロータリーエンジンを搭載したモデルを追加した。最初はファミリアロータリークーペというネーミングの2ドアのみだったが、1969年には4ドアにも搭載モデルを拡大。ファミリアロータリーSSという車名だった。
その後1970年には、ロータリーエンジン搭載車もファミリア・プレストロータリーシリーズに集約。搭載エンジンは、コスモスポーツと同じ10A型491cc×2ローターだったが、最高出力はコスモスポーツより10馬力低い100馬力だった。
三菱・ランサーEX
1979年に登場した三菱・ランサーの2代目モデル。ナイフで切ったようなスクエアなデザインは、当時としては革新的で広い居住空間が確保されていた。1981年には1.8リッターターボエンジンを搭載した「ランタボ」の愛称をもつランサーターボを追加ラインアップ。
今回展示されていたのは、ベーシックグレードのGLで、1.4リッターNAエンジンに4速MTという組み合わせだった。車内を見るとカーオーディオはラジオのほか8トラックカセットデッキ、ドアのサンバイザーは純正品で、当時の三菱マークが刻印されており、まさに昭和からタイムスリップしたような個体だった。
じつは、このクルマはワンオーナー車。ランタボのようなコレクターズカーではないだけに、現在のオーナーが大切にしてきたからこそ現存できたのだろう。
趣味性が高いスポーツカーとは異なり、どちらかというと実用性が表に出て来る旧車セダンは身近な存在。50代以上の人たちの若い頃には、日常にあったはずだ。それだけに懐かしさや当時の甘酸っぱい思い出が甦ったことだろう。