ポルシェ専門店が作った牽引車は日本未導入の先代ハイラックス
2019年12月6日から大阪市・インテックス大阪で開催されている「大阪モーターショー2019」に阪神高速道路が出展。パトロールカーのほか阪神高速道路の路面の劣化状況をチェックする特殊な4輪車を牽引する、トヨタ・ハイラックスが展示されていた。他の道路会社にも同様な計測機はあるが、4輪タイプは阪神高速道路のみ。しかも、その筐体の製作からナンバー取得まで行なったのがポルシェを得意とするチューニングショップだという。
「路面が摩耗すると滑りやすくなり、スリップ事故が起こりやすくなります。従来はDFテスターという路面に設置する検査機を使っていましたが、車線規制が必要でした。そこで走行しながら路面の状況を計測できる、HALLIDAY(RT3)を導入。日本で4輪タイプを使用しているのは阪神高速だけですね」と、阪神高速技術・吉田課長は説明してくれた。
まず、計測機を牽引するトヨタ・ハイラックスに着目してみよう。ベース車両に最適なのは、路面の計測時に使用する大量の水を入れたタンクを(荷台に)搭載でき、重い計測機を牽引できるクルマ。
さらに計測データをチェックする人を乗せるため、リヤシートを備える必要もある。そういった条件に合ったクルマを探していたところ、行き着いたのがこのダブルキャビンタイプのピックアップトラックであるハイラックスだったそうだ。
じつは、このハイラックスは日本では発売されていないタイ製の先代モデル。デッキのリヤゲートには「VIGO(ヴィーゴ)」という輸出名のエンブレムが装着されていた。
計測機に話を戻そう。4本の車輪のうち、内側2輪は移動用で外側2輪が計測用。計測地点になったら外側2輪を接地させ、内側2輪が浮き上がるようになっている。外側の2輪は、路面がもっとも摩耗しやすい箇所を通るように間隔を設定しているという。
計測時には、荷台のタンク内にある水をポンプで汲み上げ、タイヤの前方に装着されている平たい形状のノズルから散水する。
滑りやすい濡れた路面状況を作り出すことで、劣化状況を確認するそうだ。
2つの外輪の軸に装着されているセンサーは、路面の抵抗値を計測。そのデータを元に路面の劣化状況を算出して、補修工事が必要なのかを判断するそうだ。
センサーなどのパーツは、アメリカのHALLIDAYという会社のものだが、タイヤやそれら機材を搭載するトレーラーは、東大阪市のチューニングショップの「Gluck(グラック)」に製作依頼。
「計測機を搭載するトレーラーは高い精度が必要だったのですが、その製作を受けていただいたのがGluckさんでした。ポルシェのチューナーさんで、ボディ製作(補強のこと)からできる実力を持っているので実現できました。アメリカからHALLIDAY社の技術者も来日して、一緒に作業を行ないました。さらにGluckさんにはナンバーの取得までお願いできたので助かりました」と吉田課長。
また、車内には計測機を操作するパネルを装着。そのパネルにはタイヤの上下や散水量の調節などのスイッチが付いている。計測時にはデータを後席の人が持つパソコンに接続するため、前述の通り、2列シートのダブルキャビンのピックアップトラックが必要だったそうだ。
走行しながら計測できるから、従来のように車線規制による交通渋滞を引き起こすこともない。これからも、阪神高速の安全を守り続けていく「強い味方」だ。