サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

国産プレミアムSUVを代表する「トヨタ・ランドクルーザー」 登場から68年の歴史を振り返る

世界中で愛され、累計生産台数1000万台突破

 意外なことだが、日本車のなかで最も長い歴史を誇り、21世紀になった今も売れているクルマはトヨタの大型SUVである「ランドクルーザー」だ。ライバルからSUVキングとして崇められるようになったランドクルーザーは2019年、累計生産台数1000万台の金字塔を打ち立てた。最初に足跡を記したのは1951年に誕生したトヨタジープBJ型から台数を積み重ね、自動車史に残る偉業を達成。メイド・イン・ジャパンのクルマづくりの優秀性を、世界が認めたのである。

三菱JEEP以前にトヨタ「ジープ」が存在

 ランドクルーザー(以下ランクル)のネーミングで登場したのは1954年6月だが、実は「ランクル」には前史がある。その3年前の51年、警察予備隊(現・陸上自衛隊)の車両採用試験に向け、トヨタはジープBJ型を試作し、富士山6合目までの登坂試験などを行なった。そして53年から本格的な生産に入ったが、「ジープ」という車名がアメリカのウイリス・オーバーランド社の商標権に抵触。そこでランドクルーザーと改名したのだ。 ランドクルーザーは55年夏に初めてのモデルチェンジを行ない、20系へと進化。ホイールベースが短いショートボディとストレッチ仕様のロングボディ(30系)があり、ボディタイプも多彩で、この20系の時代にはワゴンも設定していた。が、生産の大半は2WD車。エンジンは、直列6気筒OHVガソリン2機種を揃えている。

 

人気が高く新型が登場しても生産を続けた40系

 60年1月にモデルチェンジを果たして40系へと進化。強靭なラダーフレームや4輪リーフリジッドのサスペンションを受け継ぎ、副変速機を2速に増やした。また、北米市場からの要求から高速性能と快適性の強化を図っている。 この40系はホイールベースやボディタイプ、ドアの枚数の違いなど、多くのバリエーションを誇り、ショート、ミドル、ロングボディに加え、フレームを300mm延ばしたスーパーロングも設定。67年には4ドアバン(45系)に代わるワゴン系列モデルとして55系ランクルが投入される。 パワートレインも多彩。直列6気筒のガソリンエンジンが主役だが、オイルショックを機にランクル初のディーゼルを設定し、直列4気筒エンジンも送り出した。その後は排ガス対策にも力を入れている。

 40系ランクルは、そのほとんどが海外に輸出され、信頼性の高さを強くアピール。80年に4ドア、ロングボディの60系ランクルが誕生したが、20年経っても人気が高かったため40系ランクルは生産を継続した。

 

ATモデルも登場しプレミアムSUVの先駆けに

 ワゴン系の55系ランクルの後継車として登場した60系ランクルは、大柄な4ドアのロングボディで、リアゲートは横(観音)開きのほか、上下開きゲートも設定。近代的なステーションワゴン風のフォルムを採用し、パワートレインはガソリンエンジン、ディーゼルエンジンともに直列6気筒が主役だったが、4気筒ディーゼルもラインアップされた。

 ワゴンに初めてディーゼルエンジンを用意したほか、4速ATも設定。ハイルーフタイプには電動サンルーフも用意されている。60系ランクルはファンから「ロクマル」の略称で親しまれ、プレミアムSUV市場の足場を築くことに成功した。

新サスペンションの採用で乗り心地が向上

 60系の販売の中心はオーストラリアや中近東など、海外だった。が、日本でもアウトドアブームを追い風に、SUVのワゴン派が増加。この機を捉え、89年秋の東京モーターショーに出品したのが後継モデルとなる80系ランクルだ。ラダーフレームを受け継いでいるが、その上にひと回り大きな4ドアボディを被せた。サスペンションは、リーフタイプから4輪ともコイルスプリングのリンク式リジッドアクスルに進化し、快適性は大幅に向上。89年12月に発売を開始した。

 バンは直列6気筒のディーゼルエンジンだったが、ワゴンは4リッター直列6気筒OHVを搭載。92年にはワゴンのエンジンを4.5リッター直列6気筒DOHCにグレードアップし、電子制御4速ATを組み合わせた。96年から前席エアバッグシステムやABSを標準装備したことも大きなニュースとなった。また、本革シートを設定するなど、乗用車ムードの仕立てとなって高級感もアップ。ちなみにワゴンの駆動方式は、クラス初のフルタイム4WDを採用している。

 

レクサスでの販売も視野に入れ高級化

 1998年1月に100系ランクルが登場。レクサスブランドでの販売を視野に入れた100系は、ついに余裕あふれる4.7リッターV型8気筒DOHCを搭載する。同時にバンが積む直列6気筒ディーゼルも4バルブ化してドライバビリティを向上。サスペンションも卓越した走破性と快適な乗り心地を両立させるため、ダブルウイッシュボーンと縦置きトーションバーの組み合わせ。トップグレードは、3段階調整式のアクティブハイトコントロールサスペンションや電子制御のスカイフックTEMSを採用した。 また、ステアリングギアはラック&ピニオン式となり、99年夏からは挙動安定制御システムなどの電子制御安全デバイスを積極的に採用。トップグレードとして加えられた「シグナス」は、レクサスのランクル版である。

 

レクサスLSと同じ4.6リッターV8を搭載

 2007年9月には200系ランクルへとモデルチェンジ。悪路走破性と快適性だけでなく、安全性も大きく向上させている。心臓部はレクサスLS460と同じ4.6リッターのV型8気筒DOHC。この精緻なエンジンに副変速機付きの6速ATを組み合わせた。

 60系時代のランドクルーザーは、そのほとんどが海外で発売されている。昭和の頃はマニア以外には名前を知らない人が多かったが、平成の時代になると一気に知名度を高め、ランドクルーザー・プラドが三菱パジェロに代わってクロスカントリー4WDの王者に君臨する。

 強靭なラダーフレームと副変速機付きのトランスミッションにこだわり、本格派を追求し続けたランクルは、いつしか世界中のオフロードファンの憧れの的となった。そして2020年のオリンピックイヤーに新型ランドクルーザーが発表される予定。世界の悪路で活躍する300系の姿を見れる日はまもなくだ。

モバイルバージョンを終了