スポーツ走行に応じた事前のメンテナンス
「来週は久しぶりのサーキット走行。とくにメンテナンスはしていないけど、愛車にはこれといった問題はないし、相変わらず絶好調。それでもサーキット走行の前には、メンテが必要なのか?」
サーキット走行ではアクセル全開時間が長く、エンジン、ミッション、タイヤ、ブレーキなどに、公道とは比べ物にならない高負荷がかかる。たっぷりとサーキット走行を楽しんで、なおかつ自走で確実に帰宅するには、走行前にひと通りのメンテは欠かせない。
その証拠に、国産車で最もサーキットが似合うクルマ=日産GT-R(R35)の場合、「スポーツ走行点検整備記録簿」というのが、わざわざメンテナンスノートの綴じ込みになっているほどだ。
このGT-Rで奨励されている、スポーツ走行前の点検・調整・推奨項目をベースに、他のクルマにも共通する項目をピックアップしてみよう。
油脂類
まずは、エンジンオイルやその他の油脂類が規定量であることを確認。高負荷高回転となるサーキット走行の場合、オイルが足りないとエンジンの焼き付きやブローの直接原因となるからだ。たとえ、壊れなくても不足気味だと、油温も上昇しやすくなる(少ない場合は補充)。
冷却水の補給と濃度調整
サーキット走行は、機械的には熱との戦い。それだけに冷却系は万全にしたい。ラジエーターリザーバータンク内の量を確認し、MAXの位置になるように調整。(冷却水のエンジンクーラント濃度は30%を推奨。クーラントが濃いと冷却効率が落ちる)
エンジン・ドライブトレイン
エンジンやラジエータ、トランスミッション、デファレンシャル周辺やその他、下回りからオイルや冷却水の漏れやにじみがないか点検。(触媒付近の熱害の有無も要チェック)
タイヤ・ホイール
次にタイヤの摩耗状態、亀裂の有無をチェック。タイヤの空気圧の測定・調整して(内圧調整は、冷間時に行なう)、ホイールナットのトルクのチェックを忘れずに行なっておくこと。ただし、規定トルクで締めすぎにも注意したい。
また、ホイールに付いているバランスウエイトが脱落しないようにアルミテープなどで保護。ハブのガタの有無も点検をしておきたいところだ。
リムずれが起きたときにわかりやすいよう、ホイール内側のタイヤとの合わせ目など、油性マーカーで「合わせマーク」を入れておくのもいいだろう。
ブレーキ
サーキット走行においてもっとも大事なのがブレーキ。パッドの残量は十分か。ローターにクラック等は入っていないかを要チェック。ブレーキフルードは濁っていた場合は走行前に交換。ペダルを踏んだ時の踏みごたえはしっかりしているかを確認し、アタリが悪ければ必ず交換しておくこと。
ブレーキペダルの踏みごたえがフカフカしていたり、長期間フルード交換を行っていない場合は、エア抜き、もしくはフルード交換も検討したい。ホースやキャリパーのブーツなども確認したいところだ。
ざっと、これぐらいの項目は確認してからサーキットに向った方が安心だ。
リスク軽減メンテは怠るべからず
まとめると最低でも、タイヤ・ホイール、ブレーキ関係、オイルと冷却水の量、下まわりの目視確認ぐらいはしておきたい。できるのであれば走行前にチューニングショップなどに行って、オイル交換と同時に下まわりの点検をお願いし、近日サーキットに行くことを伝えて、一通りチェックしてもらうのがベストだろう。
走行会などに出張して、サーキットメンテを担当しているメカニックに聞いても、「走行前の点検は非常に重要。現場で起きるトラブルの大半は、事前の点検・メンテで防げるもので、それを怠ってトラブルが出ると、赤旗(走行中止)が出される事態になってしまうこともある。これでは他人の走行時間を削ったり、自分も走れず、修理代もかかり、自走で帰れなくなって大変なことにもなりうる。ノーチェックで走るのはリスクがあるし、高くつく。走行会の1週間から数日前には、一度点検しておいてほしい」とのこと。
プロに頼んでも、数千円程度のコストで点検してもらえるはず。愛車の調子が悪くなくても、サーキットに行く前はメンテとチェックを忘れずにしておきたいものだ。