一般公道を走る区間があるということ
世界最高峰のWRC(FIA世界ラリー選手権)をはじめ、ラリー競技に参戦するマシンにはナンバープレートが装着されているが、競技車両なのに、なぜナンバーが必要なのだろうか。
簡単に言えば、ラリーが「公道」を使用して争われる競技だからだ。たしかにスペシャルステージ、略して”SS”と呼ばれるタイムアタック区間は主催者によって占有されたクローズドの区間となることから、サーキットと同様にどのようなチューニングを施したマシンでも走行が可能。競技ライセンスさえあれば運転免許証さえ不要だ。
だが、走行したSS区間から次のSS区間へ移動する時には、ロードセクションと呼ばれる一般公道を走行。それゆえに、ラリー競技では世界選手権のWRCや全日本ラリー選手権など格式を問わず、競技車両といえどもナンバープレートはもちろんのこと、ヘッドライトやウインカーなどの保安パーツも必須なのだ。さらに、当然だがロードセクション通行時は運転免許証も必要となる。
免許取得できない年齢の若手のケースは?
ちなみに、ノルウェー出身の世界的なラリードライバーであるペター・ソルベルグ選手の長男、オリバー・ソルベルグ選手は、2019年に開催された数々の世界的なラリー競技にドライバーとして出場。
だが、欧州のラトビア選手権やアメリカのラリー選手権、ARA(アメリカン・ラリー・アソシエーション)などに出場した当時は、まだ17歳で免許証を取得できる年齢ではなかった。そこで、10月に彼が18歳の誕生日を迎え、免許証を取得するまでの期間はコドライバー(ナビゲーター)がロードセクションで運転を行なっていたというエピソードもある。
海外の競技でも自国登録ナンバーでOK
話をナンバープレートに戻そう。前述のとおり、一般公道をロードセクションとして使用するラリー競技では、競技車両にもナンバープレートが必要。全日本ラリー選手権の参戦マシンには日本のナンバープレートが装着されているが、WRCなど世界を転戦するマシンには、どこの国のナンバーが装着されているのだろうか?
それはチームによっても異なるが、基本的にワークスチームの競技車両には、チームの本拠地となる国で登録されたナンバーが装着されることが一般的。各国を転戦する国際ラリーでは、カルネと呼ばれる「一時的な輸出入のための措置」の適用により、拠点となる国のナンバーさえあれば、それ以外の国でも公道を使ったロードセクションの走行が可能となっているわけだ。
トヨタ・ヤリスが仮ナンバーだった理由
ちなみに11月8日〜10日に開催された「セントラルラリー愛知・岐阜2019」で、勝田貴元選手がドライブしたワークスマシン、トヨタ・ヤリスWRCには日本で発行されている「仮ナンバー」が装着されていた。
この大会は、2020年に開催されるWRCの日本ラウンド「ラリージャパン」のプレイベントとも言えるもので、トヨタ・ヤリスはじめ、WRCなどの国際レース参戦マシンも出場。それらの中で、トヨタ・ヤリスWRCは、チームのロジスティック拠点であるエストニアで登録されたもので、エストニアと日本は相互協定がないことから、エストニア発行のナンバーでは公道が走れなかったという事情があった。そのため、同大会には日本の仮ナンバーを装着して競技に参戦したのだ。
また、新井大輝選手がドライブしたシトロエン・C3 R5、福永修選手がドライブしたシュコダ・ファビアR5などのWRCマシンは、一時的な輸出入のカルネではなく、輸入品として通関していることから、こちらも仮ナンバーを装着して競技に参戦したという。
本番の2020年ラリージャパンでは、さらに多くの「外国籍」マシンが走ることになるが、それら車両のナンバープレートはどのような扱いになるのだろうか。欧州など他国のラウンドと同様に、カルネの登録ナンバーが認められないと混乱を招く恐れもあるため、その動向に今から注目したい。