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「電通」子会社の新カーシェア事業、愛車の一時交換アプリ「カローゼット」は安心して使えるのか?

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TEXT: Auto Messe Web編集部  PHOTO: カローゼット/Auto Messe Web編集部

「他車運転特約」付き保険への加入が必須

 従来、クルマのカーシェアリングサービスには、タイムズやカレコなど事業者が所有するクルマをシェアする事業者タイプと、DeNAが運営するanyca(エニカ)など個人オーナー間でシェアする個人間タイプがある。

 カローゼットは後者に近いサービスだが、エニカなどではシェアする者同士の間で取り決めた使用料が発生。その金額に対して一定割合の手数料(10%程度)を運営側に支払う仕組みだ。一方のカローゼットは、個人間での金銭やり取りはなく、前述のような会員費と前借り精算の費用のみとなる。

 また、入会時には、任意の自動車保険に加入することが条件となるのもエニカなどと同様。これは、借りたクルマで事故をおこしたり、傷を付けた場合のトラブルに対処するためのもの。

 カローゼットでは、車両保険が付帯している商品など、他人のクルマを運転していた場合にも補償の対象になる「他車運転特約」付き保険への加入が必須となる。エニカでは、損保ジャパン日本興亜や東京海上日動と連携しているが、カローゼットでは損保会社の指定は特にない。

地方のカーオーナーがターゲット

 同社のアンケート調査によると、「クルマを所有する必要性が高い」と回答した人は、東京23区内では3人に1人。一方で、首都圏40km圏内では約6割、40km圏外では約8割、地方都市では最大9割以上となり、全国平均でも約10割に及ぶ。

 これらを踏まえ、同社ではサービスの主なターゲットユーザーを、都心を除く全国のクルマを「所有する」人に設定。具体的な会員目標数は非公開だが、できるだけ幅広いユーザー層の獲得を目指すという。

 ちなみに、このサービスの概念を「OPA(OPEN PERSONAL ASSET、オープン・パーソナル・アセット)」と名付けている。これは、自分の資産(この場合はクルマ)を他人に貸した時間分だけ、他人の資産(クルマ)を借りる権利が付与されるという考え方。現在、同社はOPAの概念やシステムなどをPCT国際特許に出願済みで、申請が通ればPCT(特許協力条約)に加盟する153の国(2019年10月現在)全てに対し権利を持つことになる。

 さらに、同社では、このOPAを今後もクルマ以外の分野、例えば近隣の住民同士で子供服や本などの一時交換を行なうといった事業も展開予定。三菱地所や東京海上日動、大和ハウス工業、Fujisawa SSTといった4社が、住宅や地域開発に関連した事業などとOPAを連携させた協業を行なうことになっている。

トラブルへの対象は万全なのか? 

 話をクルマに戻そう。一般的に個人間でモノの一時交換(貸し借り)が行なわれる場合、顔見知りであっても様々なトラブルが発生する可能性は否めない。

 クルマの場合で例えるならば、交換を約束した当日に待ち合わせ場所に来ない(ドタキャン)や、廃車になるほどの事故を起こされて貸した方が処理に忙殺されるといった懸念だ。

 また、人によっては車内をひどく汚されたとか、ペットを乗せられたことで臭いが取れないといった苦情を言う人もいるだろう。借りた方はたいしたことがないと思っていても、貸した方はボディに目立つ傷を付けられた、と思ってしまうケースも想定される。

 こういったトラブルに対して、カローゼットでは、「あくまで個人間の問題」として仲介などはしない方針。念のためにコールセンターでアドバイスはするというものの、果たしてそれだけで大丈夫なのかは疑問が残る。

 ちなみに、業界で先んじるエニカでは、365日のメール・電話でのカスタマーサポートのほか、修理工場と連携した修理サポートサービスなどを行なっている。

 

利用者が見えてこない不安

 クルマは、買うときはもちろん、維持するにも相応のお金がかかる「高価な資産」。所有している人たちには、思い入れもあるし、特に日本人はクルマの傷や汚れ、車内の臭いなどに敏感な人種だ。

 子供服や本などとは、単価や趣味性など、そもそもの特性がかなり違うのではないか。もし、運営側がそれらを踏まえずにビジネスを行なうのであれば、結果的に利用者が嫌な思いをする危険性があることが懸念される。

 そもそもそんな「クルマ好き」は、こういったサービスを使わないと言えばそれまでだが、逆にいえば、一体どんな人がこのサービスを利用するのだろうか? 今ひとつ利用者層が見えてこない。

 前述のプロオーナー制度であれば、個人がプロの業者からクルマを一時交換する(実質は借りる)ことになるので、利用する個人も安心できるだろうが。

 電通グループでは「初のCtoCプラットフォームサービス」というカローゼット、懸念が筆者の取り越し苦労でないことを祈る。

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