日本初のドアミラー採用車は”エクサ”
自車の後方側面を確認するための、いわゆる「サイドミラー」にはふたつの種類があるのはご存知だろう。現在主流の「ドアミラー」と、それ以前に採用されていた「フェンダーミラー」だ。
日本国内では、もともとは法律的にドアミラーは禁止されていて、フェンダーミラーのみが許可されていた。1983年に解禁されたのだが、これはすでにドアミラーが主流だった輸入車を改修する手間を省くためで、いわゆる”外圧”によるもの。ただ、日本車勢も”待ってました”といわんばかりに、日産のエクサが同年5月にマイナーチェンジでドアミラーに変更すると、同月には4代目となったトヨタのカローラ・レビン/スプリンタートレノ(AE86)に採用して登場した。
じつは、それ以前でもわざわざドアミラーに変更した改造車は存在したし、取り締まりから逃れるために、フェンダーミラーを残しつつ、ドアミラーを追加するという苦肉の策も取られたりした。つまり、外圧うんぬんの前に、国内でも待望論が出ていたわけだ。
ドアミラーに待望論が出るということは、フェンダーミラーの人気が落ちたとも言えるのだが、その最たる理由はやはりデザイン面だろう。また、前方に付いているので視界は広いものの、そこに映る対象物は小さいという欠点や、歩行者と接触した時のダメージを考えても危険性は高い。
しかし、いま改めて考えてみると、欠点というのはその程度しかなく、調整しづらいという意見もあるが、末期には電動調整機能がついたフェンダーミラーもあったし、そもそものデザイン性にしてもベレット1600GTが採用した通称”ベレGミラー”や砲弾型、せんべいミラーなど、いま見てもカッコいい形状をしたものが意外と多かった。また、ドアミラーに比べて視線移動や死角が少ないうえ、車幅感覚も掴みやすいなどのメリットがあったのも事実である。
とはいえ、ボディとのデザイン的な一体感はドアミラーのほうが上だし、車庫入れなどのバックで位置を合わせるのもドアミラーのほうがラク。欧米では数少ないフェンダーミラーをわざわざ採用するほどの利点がなかったというのが正直なところだ。
現在でもフェンダーミラーは健在しており、トヨタのジャパンタクシーはいい例。センチュリーなどのショーファーカーでも、最近までフェンダーミラーは残っていた。理由は視線の移動が少ないからで、ドアミラーだと助手席にも人を乗せた場合、視線が被ってしまって失礼というのが理由だ。
もし、いまでもフェンダーミラーを付けようと思えば、社外品があるので可能。年配のドライバーがたまにドアミラーを取り外して付けているのを見かけるが、サイドミラーはあくまでも付属物なので、取り付け方法や車幅などに注意すればフェンダーミラーに変更しても法律的に問題ない。
サイドミラーの変化としては、現在ではカメラ映像を車内のモニターに映し出す「ミラーレス(デジタルアウターミラー)」が、レクサスESに量産車として初めて採用されたのは記憶に新しい。フェンダーミラーからドアミラーに変わった時には視線移動に手こずったが、こちらも若干の慣れが必要になることだろう。