EVクラス優勝経験者の新マシンは現在開発中
アメリカで2番目に歴史があるヒルクライムレース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称パイクスピーク)」の2020年6月に行われる第98回大会に、2019年に日産・リーフe+で参戦した奴田原文雄選手が参戦を発表。9年目となる次回大会の参戦マシンは、新開発のプロトタイプEV(電気自動車)になることも明らかにした。
アメリカ・コロラド州にある標高4302mを誇る山を舞台に、1916年からアメリカの独立記念日前の週末に開催されているヒルクライムレースがパイクスピークだ。
このレースは、標高2862m地点にあるスタートラインから4302mの頂上付近にあるゴールまで、標高差約1500m、156のコーナーを持つ全長約20kmのコースを駆け上がり、そのタイムを競うもの。峻険な山にあるワインディングを「誰が一番速く山を登れるか」を競うという、単純明快なレースだ。
アメリカでは、インディ500(インディアナポリス500マイルレース)に続き、世界で2番目に歴史のあるレースだが、ゴール付近では酸素が薄く、内燃機関のエンジンの出力は約30%低下するといわれており、マシンはもちろん、それに乗るドライバーにとっても過酷なレースである。
もともとのコースは、未舗装の登山道を走るダートレースだったが、2012年に道が全面舗装化され、以後競技タイムも大幅に短縮。従来は、四輪車だけでなく二輪車も参戦していたが、2019年大会で死亡事故が発生した影響もあり、2020年大会では2輪部門の競技を一旦不開催とすることがすでに決まっている。
2020年大会もSAMURAI SPEEDから参戦
通常、エントリーする選手やチームは、毎年1~2月にその第一回目リストが発表される。だが、奴田原選手は今回、その発表を前に、自身が所属するエクストリームパワースポーツチーム・SAMURAI SPEEDからの2020年大会参戦を表明した。
結果は両年ともに、出走前に天候が悪化したため、標高が低いゴール地点に変更された短縮コースでの挑戦にとどまり、残念ながら2年連続でレースの全行程を走ることは叶っていない。今回、早々と参戦を表明した背景には、そういった過去の雪辱を果たしたいという、チームと奴田原選手の2020年大会にかける意気込みの表れなのかもしれない。
より競争力があるEVレーサーを開発
奴田原選手は、2006年に東洋人初のFIAモンテカルロラリー優勝、現在も全日本ラリー選手権に参戦を続けているトップラリースト。パイクスピークでは、2012年に「#230 トヨタ・モータースポーツTMG EVP002」を駆り、10分15秒380のタイムでEV(電気自動車)クラス優勝(総合6位)を果たした実績を持つ。
奴田原選手にとって9年目の参戦となる今回のパイクスピークでは、参戦する車両を市販の日産リーフから変更。「参戦車両のコンペティション能力の改善を図るためプロトタイプEVを製作しエントリーする」という。まだその車両概要は発表されていないが、これまでとは異なり戦闘能力を大幅に向上することは間違いない。
過去2年、連続して市販EVで短縮コースしかアタックできなかった奴田原選手。次大会では、よりスピードを増したマシンを駆ることで、まずは予選で好成績を残し、本戦の出走順を上げることに期待したい。パイクスピークの本戦は、出走順が早い方が悪天候に出会う確率が下がるからだ。好天の下で、フルコース・フルアタックをする勇姿が見られることを、今から楽しみにしている。
他の日本人選手の動向は?
他にも日本人では、過去2年参戦を続けている小林昭雄選手(ゼッケン249/2000年式ポルシェ911 GT3-996型)も参戦を予定している。なお、昨年パイクスピーク初挑戦ながら、予選では日本人最高位7番手を獲得(決勝はマシントラブルでリタイア)した吉原大二郎選手(現在アメリカでフォーミュラ・ドリフト・シリーズに参戦中)の動向はまだ伝わってきてはいない。
98回目の大会となる「The Broadmoor Pikes Peak International Hill Climb, brought to you by Gran Turismo」は、現地時間2020年6月22日(月)の車検日からスタート。予選と練習走行を6月23日(火)~26日(金)の4日間にわたり実施後、セットアップデーという休息日を挟んで、6月28日(日)の朝7時半から決勝レースが開催される。