あくまでも速度違反の抑止が目的
高速道路や幹線道路で制限速度を超過しているクルマに目を光らせている「速度違反自動取締装置」。通称「オービス」(オービスは、ボーイング社の商標)だ。速度違反自動取締装置は、一般道路で30km/h以上、高速道路では40km/h以上の速度超過の際に、対象車のナンバープレートとドライバーの姿を撮影し、それを証拠として違反者を検挙するために設置されている(超過速度の数字はあくまで目安)。
通常は、速度の出やすい長い直線部分に設置されることが多いが、そのカメラの手前に2カ所ほど「速度自動取締機設置路線」といった取締を警告する看板が設けられていることが多い。同じ速度取締でも、ネズミ取りは“こっそり”隠れて待ち構えているのに、なぜ無人の速度違反自動取締装置には、事前の警告版が出ているのだろうか。
これは過去の裁判で「速度違反自動取締装置は、主として自動車運転者の速度違反の抑止効果を最大の目的で、いわゆる囮捜査類似のものであるとの非難を回避するためにも、走行中の運転者から一目瞭然たるものにすることが捜査機関に果せられた責務である」という判決が出ているためだ。
要するに、違反者を検挙するのが目的ではなく、速度違反の抑止が目的。”予告看板で速度違反を抑止できれば、本来の目的は果たすことができるはず”、というもっともな判決が、予告看板を提示する一番の根拠になっている。
また、たとえ速度違反の疑いがあるドライバーであっても、無断に撮影することは、撮影される側(同乗者を含む)の肖像権やプライバシー権を侵害する可能性があるため、撮影した写真を道路交通法違反の証拠として採用するには、撮影の「事前告知」と「犯罪行為の瞬間の撮影」の二つの条件が必要であるという判例もあるのだ。
ただ、「撮影自体は違法ではない」(最高裁判所の判例)とされ、しかも予告看板の設置義務は、判例が基になっているだけで、法律として明文化されているわけではないので要注意。
事実、最近導入がはじまった「移動式オービス(過去記事:古いレーダー探知機では反応しない移動式オービス)」の場合、警察官が速度違反自動取締装置のそばで立ち会っていることもあり、予告看板ナシの取り締まりの例も報告されている。(簡易タイプの「ネズミ取り」という扱いだと思われる)
いずれにせよ、速度違反自動取締装置で撮影されてしまった後に、警察へ出頭し、予告看板の有無を争点に、裁判沙汰にするのも面倒なこと。速度違反自動取締装置にシャッターを押させない走りをするのが一番重要である。
最近は、速度違反自動取締装置の最新位置情報を知らせてくれる、スマホ用のナビアプリやカーナビソフトも存在する。安全運転を心がけ、無事故無違反の優良ドライバーを目指すようにしよう。