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2020年、トヨタが2人乗りモデル販売! 法改正が進む中「超小型EV」が“それでも”普及しないワケ

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: トヨタ自動車

都市部では3輪バイクのようなタイプの方がいい

 その点で注目すべきは、バイクのように前後に人が座る方式の超小型EVだ。走行安定性を高めるため、前2輪・後1輪の3輪車で、全幅が狭く、ドイツのスマートが初期に構想したように、1台分の駐車枠(スペース)を効率的に利用することができる。こういったタイプは、トヨタも以前からi-ROADというモデルを開発し、日本はもちろん、海外でも都市部のカーシェアリングなどの実証実験用車両として使っている。

 ほかにも、初代日産リーフのチーフデザイナー井上真人氏がイタリアのIAADで開発したWHEEVIL(ウイーヴィル)などがある。このモデルは、走行中は広いトレッドで安定性を高め、駐車する際はバイクのように車幅を狭くするためトレッドを縮めることが可能。都市部での使用を前提とした作り込みがなされている。

 このように使用形態を現場で実感できる超小型EVでなければ、市場調査や地域問題を机上で検証しただけで本物は生まれない。現場・現物・現実から生まれた超小型EVでなければ、売れるはずもない。

 さらに、自動運転化は不可欠な要因となっていくのではないか。高齢者対応といっても、運転免許証が必要であれば、免許証を返納した高齢者は救済されない。安くて、日常の足になるだけであれば、廉価な軽自動車で十分であるし、地方に軽トラックが多いのも、仕事と生活の兼用にもなるからだ。しかも衝突安全性能を満たしている。

 自動運転化された超小型EVが、では来年から国内どこでも走れるようになるかといえば、それもまた難しいであろう。となると、八方塞がりになる。

 超小型EVありきではなく、超小型EVをどのように使うかという具体的な構想が前提だ。それを全国均一に導入するのではなく、地域に根差した導入の仕方が具体化されなければならない。

 つまり、大量生産・大量消費という20世紀に構築された製造業の儲けの発想から脱却しなければ、実現できないのが超小型EVである。それは従来の自動車メーカーの姿からの脱却であり、大手自動車メーカーでは実現不可能であるかもしれない。

 もっと小回りの利く、バックヤードビルダーのような存在が、各地域に点在し、その物づくりの一つとして生まれるのが、本来の超小型EVではないだろうか。

プラットフォームの汎用化などがカギ

 大手自動車メーカーが役立てるとしたら、基本となるプラットフォームや、自動運転を実現するためのセンサーや制御といったシステムの構築である。それらを汎用化し、プログラム次第で各地域に適応できるように仕立てる。そこは資本のかかるところであり、零細や中小の企業では手に負えないかもしれない。超小型EVについて、トヨタが為すべきは、そういうことではないだろうか。

 超小型EVは、個々人の生活やニーズに合わせた“パーソナルモビリティ”とよく言われる。つまり、老若男女を問わず、笑顔が溢れるような乗り物にすることがその使命なのだ。これが実現することで、初めて街の様子は変わるだろう。見た目の景色が変わることが大切なのではなく、人の心が温まり、気持ちがほぐれる社会になる……超小型EVは、そういった社会づくりに貢献する乗り物であることが最も重要なのだ。

 

 

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