144馬力とは思えない力強い走りを披露
2400クーペ・アレマーノは、アバルトにしては珍しい大排気量のラグジュアリーグランツーリスモ。ベースとなったのはフィアット2100ベルリーナで、ホイールベースを200mm縮めたプラットフォームに、ミケロッティがデザインし、カロッツェリア・アレマーノが製作した2+2のクーペ・ボディを架装している。
1959年に2200クーペ・アレマーノとしてスタートしているが、1961年に排気量を拡大して2400クーペ・アレマーノへと進化。アウレリオ・ランプレディ設計の直列6気筒OHVエンジンは144馬力を発揮して、最高速度は200km/hを突破した。 けれど、そうしたプロファイルよりも重要なのは、ヘリテージHUBにある2400クーペ・アレマーノが、カルロ・アバルト自身が生前に愛車にしていたクルマそのもの、ということだ。
エンジンは一発で始動。アイドリングも極めて安定。FCAヘリテイジ部門が管理してるクルマらしく、コンディションは抜群に良さそうだ。暖機の後にギアを1速にエンゲージすると、カチリと確実なタッチが伝わってくる。そしてアイドリングのままクラッチを繋ぐと、クーペ・アレマーノは滑るように、じつにスムーズに走り出した。 なんてキメ細かな吹け上がり方、そして心地好い感触。たった144馬力だというのに、数値を超えて力強く、年式を感じさせないほどに速い。サウンドもアバルトらしく、野太さを感じさせる快音だ。それが控えめで美しいこのフォルムに収まっている。
サスペンションもしなやかにストロークして、乗り心地も文句なし。アバルトなのにレーシングカーライクなところはなく、当時のクルマにしては驚くほどに出来映えのいい、速くて気持ちのいいGTカーだ。洒落者であり、自身もクルマ好きだったカルロ・アバルトが日常の足として愛用したのは、そうしたキャラクターがあったからなのだろう。