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FCAヘリテージHUBで出会った! カルロ・アバルトが所有した「2400クーペ・アレマーノ」に試乗

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: FCA/嶋田智之

現代の技術でより精密に再生産されたフィアット・アバルト595

 驚きは、そこでは止まらなかった。2400クーペ・アレマーノのシートから滑り出て美しいフォルムを眺めていると、件の現場責任者がニコニコしながら、「古いクルマの扱いに慣れてるのは音を聞いてて解ったから、こっちもどうだ?」と、丸くて小さいヤツを指差したのだ。

 フィアット・アバルト595。より正確にいうなら、1974年式のフィアット500に現在のアバルト(というかFCAヘリテイジ部門)が新たに復活(?)させた“595チューンナップキット”を組み込んだものである。

 いわば、最新のフィアット・アバルト595ともいうべき個体。FCAがヒストリックカー・イベントなどで公式的なデモンストレーションなどで走らせている1台だ。

 もちろんお断りなんてしない。ダブルクラッチを使いながら走らせてみると、この595は“マジか?”というくらいに速い。新車のような状態がキープされたメンテの行き届いた個体であることも要因だろうが、現代の技術でより精密に再生産されたキットを正確に組み込んでいることもあるのだろう。

 これまで何度かクラシック595を試乗させていただいた経験はあるけれど、そうした記憶のどれよりも速い。排気量の小ささを感じさせないぐらいに低回転域から力強く、素晴らしく乗りやすい。しかも、そのキットは、どうやら一般のユーザーでも手に入れることができるそうだ。それにはちょっとばかり感激させられた。

 FCAがここ数年の間にヘリテイジ部門を強化してきてることは知ってたけれど、そのアクションのひとつがこういう幸せなかたちに結びついてることまでは想像していなかった。本当に素晴らしいことだと思う。それもこれも、カルロ・アバルトというひとりの男がチューニングキットというものを世に送り出して、世界中のクルマ好きを熱狂させたという史実があるからだ。

 あらためてパイオニアとしてのカルロ・アバルトの、そしてアバルト&C.の凄さというものを思い知らされた。

 アバルト設立70周年。1949年には僕はまだ影も形もなかったけれど、できることならカルロ・アバルトと会って、色々とお話を訊いてみたかった……。心の底からそう感じている。

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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