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若者のクルマ離れなんて誰が言った!? 学生たちが軽自動車レースにハマる理由

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭

無理せず楽しめる新しいモータースポーツ

 「最近の若者はクルマに興味がない」……スポーツカーの販売不振やレース人口の減少を、そんな理由で納得させる風潮があるとはいえ、本当にそうだろうか。事実、今でもクルマが大好きな若者は変わらずいるし、盛り上がっているイベントも少なくない。そのひとつである軽自動車レースを楽しむ、学生チームやドライバーを紹介したい。

 クルマで遊ぶ若者が減っているのは事実かもしれない。理由は決して興味がないワケではなく、主に金銭的な事情だと筆者は考えている。20年前までは若者でも買いやすく、イジって楽しめる価格帯のスポーツカーが多くあったが、現在は車両の価格だけじゃなくタイヤサイズも大きくなり、ランニングコストは高くなるいっぽうだ。クルマに興味はあるし、好きなのに“買えない”。もしくは維持だけで精一杯というのが現実だろう。

 では、学業に差し障りのない範囲のアルバイトや、仲間どうしで少しずつ資金を出し合うレベルで、楽しめるクルマ遊びがあれば? そんな疑問に対する答えのひとつが、軽自動車によるワンメイクのイベントだ。そんな一例として、福島県のエビスサーキットで開催されている「東北660耐久レース」およびスプリントレース「東北660選手権」のケースを見てみよう。

大学の自動車部などからのエントリーが増加

 東北660耐久レースは、各方面からのリクエストにより2018年から「学生クラス」を設けたところ、口コミで大学の自動車部に伝わり2年目にして10台近くエントリー。一方、2011年から続く新規格NA(自然吸気エンジン)だけのスプリントレース「東北660選手権」は4~5年前から学生の参加が急増しているという。

 理由は何といってもコストの安さ。中古の軽自動車はタマ数が多いうえに低価格(3万円で入手した例もある)で、自動車税はもちろん、サイズが小さいゆえタイヤ代などもさほどかからない。さらに、いずれのイベントも改造範囲が制限され、チューニング代があまりかからず戦闘力の差が小さい、というのも低コストと楽しさを両立できている理由だろう。

 特に、旧世代の軽自動車は電子装備が簡略化されており、自分たちで勉強しながら整備できるのも大きい。彼らを応援するプロショップも増えており、メンテナンスにしろ走り方にしろマナーにしろ、安全にレースを楽しめるようアドバイスし、トラブルがあったときは力を貸してくれる。こうした安心感も、学生など若者のエントリーが急増している要因の一つに違いない。では実際にレースを楽しんでいる、ドライバーたちの声を取り上げてみたい。

 

仲間と協力して参加しやすい耐久レースの醍醐味

東北学院大学/スズキ・アルト(HA24)

「自分が入部したときからアルトは部車としてありました。ただ当時は新入部員の練習用でしかなく、この耐久レースが始まったことで改造し直して、先輩やOBの方に協力してもらいながら楽しんでいます。部員は9名で学校から支給される部費の他、月に2000円を集めて活動費にしています」(畑中拓磨くん)

 

日本大学工学部/ダイハツ・ミラ(L275)

 「東北660選手権で活躍する先輩がおり、軽自動車の面白さにハマり耐久レースに参戦しました。現在、部員は30名と他に比べれば多いほうですが、部費が少ないのでドライバーどうしで協力しあってます。それでも普通車に比べれば劇的に安いし、クルマ作りも整備の勉強を兼ねてDIYで楽しみつつやっています」(山口友輝くん)

 

秋田県立大学/スズキ・アルト(HA23)

 「2年前はダイハツのムーヴで耐久レースに参戦し、去年からアルトに車両を変更しました。自動車部としての活動はチームワークや達成感を味わえ、学校側にも胸を張って報告できるのもいいですね。作業は自分たちの手に負えないことを除いてDIY作業。16名の部員でジムカーナやドリフトのイベントにも参加しています」(内海哲也くん・有田樹生くん)

 

 これら学生クラスの車両は、すべて新規格のNAエンジンを搭載。東北660選手権が盛り上がったおかげでデータは多く、何より車両代やタイヤ代も安いので経済的な負担が少なくて済む。軽自動車は燃費がいいのでガソリン消費量が少ないことも、彼らを惹きつける魅力なのだろう。

 

 また、レース前の整備や給油、ドライバー交代は経験とチームワークが大切。レース中にトラブルが起きたときは、別クラスで参加しているプロショップが手を貸す。このように若者をサポートする大人たちの存在も大きいのだ。

 

 参加者の経済的な負担を少しでも減らし、レースを楽しんで欲しいというメーカーもいる。オイルメーカー『ネクザス』もそのひとつで、学生クラスに特別協賛している。

 データロガーを使ってそれぞれの走りを解析することも。ひとりのが速いだけじゃ勝つのは難しいため、チーム全体のスキルアップが必要だ。そして耐久レースは長丁場。一般クラスに参加したプロショップ『オートリサーチ米沢』より、東北名物の芋煮が各チームにふるまわれた。

 昨シーズンは12月1日に開催され、エントリーは合計で20台。新規格に旧規格、ターボにNAと軽自動車ならば何でも参加できる。2020年は12月6日に開催で、引き続き学生クラスを設ける予定だ。

 

維持費の安い軽自動車は日常の足にも

 次は、スプリントレース「東北660選手権」のケース。このイベントは、スポーツランドSUGOとエビスサーキットが舞台。2020年もシリーズが4戦、およびセミ耐久の特別戦で合計5回を開催する。実際に参加している学生の声やどんな活動をしているのかなどを紹介しよう。

日本大学工学部/ダイハツ・ミラ(L275)

 「元々は父がクルマ好きで、その影響で走り始めました。大学で自動車部に入ったら先輩が東北660選手権に参加しており、父が買ってくれたミラで2018年にデビューしたのが始まりです。こちらはスプリントレースだけに、最初は怖かったけど徐々にマシンをコントロールする自信もつき、今では雨のレースでも不安なく振りまわせるようになりました。2019年は最も台数が多い3クラスで表彰台にも乗って、父や大学の仲間たちに少しは恩返しできたと思っています」(小松日高くん)

 

 レースでは、クルマの整備なども自ら行う小松くん。自動車部の仲間やOBに見守られ、慣れた手つきで作業をこなす。部車が同じL275ミラなので整備のツボも心得ている。仲間とクルマを維持する耐久レースに比べると負担は多くなるが、日常の足としても使うことも多く、1台のクルマをうまく活用している学生も多いのだ。

 2019年には、スプリントレースだけでなく、東北660選手権の特別戦として設けられた60分のセミ耐久レースにも参戦。2019年の締めくくりと思い参戦し、予選6位/決勝6位で無事に完走を果たしたのであった。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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