生徒たちの熱意を込めた現代版AE86
言わずと知れた名車、トヨタの4代目カローラレビン&スプリンタートレノである「ハチロク(AE86)」を、宮城県仙台市の「花壇自動車大学校」の学生たちがレストア。『花壇86』と名付けられたクルマは、往年のスタイルを再現できるところは再現しつつ、新しい技術も取り入れて性能アップに繋げた。「次の世代にも受け継いでほしい」との熱意が詰まった1台を紹介したい。
ハチロクがデビューしたのは昭和58(1983)年なのだが、作り上げたのはハチロク誕生からずっと後に生まれたハタチほどの生徒たち。明らかに世代のギャップはあるが、大ヒットしたマンガ「頭文字D」の影響もあり、彼らにとっては親近感や憧れのあるクルマだという。
コンセプトは「世界でもっともカッコいいスポーツカーを作る」を掲げ、東京オートサロン2020への出展を目指して製作スタート。プロジェクトは学校に置いてあったボロボロのエンジンや車体をレストアするところから始まり、サビを落として再生できない部位は思い切って切断、新しい鋼板を溶接して新車レベルまで復活させた。違和感のないフェンダーは形状が似ているということで日産キューブ純正を流用。バンパーを延長してサイズを合わせたそうだ。
単なるレストアではなく、新しい技術やトレンドを取り入れることも『花壇86』のテーマ。ボディカラーは現行型86の3コートパールをベースに、同じく現行86のブラックメタリックを使って当時人気だった白黒ツートンを再現。ブラックの部分にはさり気なくカスタムペイントを施したり、リヤのエンブレムはフリーハンドでレタリングするなど、若者らしいセンスも随所に取り入れている。
そしてエンジンは7代目レビン/トレノ(AE111)に採用された20バルブの4A-GE型にスワップ。エンジンルーム内の配線類を最小限に減らす手法「ワイヤータック」により、美しくスッキリした雰囲気に仕上げた。もちろんエンジン本体にはオーバーホールが施され、アネックスのエキマニやトラスト製のラジエーターも装着。パワーよりも耐久性や気持ちよさを追求した仕様といえるだろう。
また、室内では7点式のロールケージとレカロのバケットシートが目を引く。さらにシートはルーフと一緒に生地を張り替えることで、統一感をキープしつつ高級感を演出させた。足まわりはブリッツの車高調整式サスペンションとディクセルのブレーキパッド、ホイールはレトロなデザインがハチロクにマッチするワーク・エキップ03の15インチをチョイスするなど、さりげなく当時感をキープしているのも好感である。
製作に携わったイマドキの若者がカッコいいと思うのはモチロン、AE86が新車で購入できた50代をはじめ、当時は手に入れやすく身近な相棒だった30~40代、そしてまだ免許を取得していない少年まで、あらゆる世代の心に響くマシンに違いない。