クルマの進化や環境問題で必要性がなくなった
時代は世につれ……。あるときは流行っていたのに、時が経つと忘れ去られてしまうものはいろいろとある。もちろん自動車のアフターパーツ関係も同じくだ。とはいえ、クルマの場合は人々の関心が薄れるというよりも、性能や品質の進化によって通用しなくなるというほうが大きいかもしれない。今回は平成の時代にチューニングで流行ったものを振り返ってみよう。
アーシング
ご存知のようにクルマの配線において”マイナス”はボディを使用する。それゆえに配線が細い部分や劣化した部分があると電気の流れが悪くなって、各部が本調子でなくなることもあった。そこで新たに配線を追加することで、要はマイナスの線を強化するというのが「アーシング(アースイング)」というもの。
現在では純正の車体やアースケーブルが強化されているので、その恩恵は薄れてしまった。かくゆうワタクシ、2000年すぎたぐらいだろうか。いち早く目をつけて「CARトップ」という自動車雑誌で連載をやったところ、大反響。紹介した電線専門店に注目が殺到して、1週間徹夜で発送したというエピソードもあった。電源まわりが弱い旧車では、今でも体感しやすいといえるだろう。
発泡ウレタン
クルマのサイドシルやピラーなどに発泡ウレタンを流し込んで、内部からがっちりと固めるというボディ補強メニューも流行った。マツダがRX-8のマイチェンでメンバーに発泡ウレタンを注入したこともある。これも2000年過ぎたころだろうか。フレーム内に充填していくと内部で発泡して膨らむのだが、問題はウレタン自体が水分を含んで錆の原因になったり、事故時の被害がひどくなりやすくて燃えやすいといった問題があった。
そうこうしているうちに、ノーマルのボディ剛性が大幅にアップ。その必要性のみならず、サイドシル内も隔壁が多く設けられて、ウレタンが充填しにくいなど作業性も難しくなった。ちなみに純正でもAピラーの内部などには発泡ウレタンを入れている場合もあるので、一概にダメというわけではないが、わざわざ後で充填する意味が薄れたのは事実。ただ、ボディ補強という観点で競技車両などでは意味があるだろう。
ステアリング交換
エアバッグが普及する前は、走り好きならばクルマを買ったらステアリングを「モモ」や「ナルディ」などに即交換するのが当たり前。真円度の高さや握りの良さ、小径化による操作性の向上など、交換する意味は十分あった。
しかし、こちらもエアバッグ付きのステアリングが増えると自動車保険(エアバッグ割引が受けられなくなる)の問題や、わざわざ乗員を保護するシステムをなくすというリスクなど、あえて社外品に交換するメリットは減少。交換時に必要となる「ハンドルボス」もさまざまなタイプがあったが、こちらも同時に廃れてしまった。とはいえ、現在では純正エアバッグを流用して交換できる車種別ステアリングも登場しているので、興味ある人は調べて欲しい。
ストレート触媒
”触媒を抜く”、というのはマフラーを太くするのと同時に大きな効果はあった。特に日本のスポーツカーに多かったターボ車の恩恵は受けやすく、排気の抵抗となる触媒を取ってしまうことでパワーを稼ぐのは簡単だった。
そんな観点から「ストレート触媒」が流行。1万〜2万円という手ごろなチューニングパーツにも関わらず、高回転時は特に体感できたものの、車検は通らないし、環境を考えると今や”極悪”的な行為となってしまった。そのため、高出力と高浄化を高次元で両立させた「メタルキャタライザー」という保安基準に適合するスポーツ触媒が登場。ストレートタイプは廃れていったのである。
リミッター解除
ほとんどの国産車には時速180km以上(軽自動車は140km以上)出ないように、スピードリミッターという機能が装備されている。その昔はメーターケーブルを抜いたり、メーター裏のカプラーを外すだけでリミッターを解除できるクルマもあった。コンピュータもシンプルな制御だったので、リミッター解除用のアダプターを装着するだけでカットすることができた。
しかし、いまやコンピュータは、エンジンだけでなく車両全体を制御しているので、簡単に解除できないし、多額の費用をかけてわざわざやる時代でもなくなった。そもそも公道を飛ばすこと自体が社会的にも許されない時代だけに、サーキットを走るようなクルマは別として、実際は出しもしない自己満足程度でリミッターをカットする意味もないだろう。
番外編・キャブチューン
これは平成と言うよりも昭和の時代だが、当時のクルマが採用したキャブレターのいいところは、口径の大きいものに交換するだけでなく、内部のアクセル全開時の燃料の量を決めるジェット(ノズルのようなもの)などを交換するだけで、セッティンクが簡単に変えられたこと。現在ではバイクも含めて、キャブレター車は日本では絶滅。当然ながら旧車を除いてアナログなセッティングも同時に絶滅してしまったのである。
以上、かつては流行っていたけど、今では廃れてしまったチューニングを取り上げてみたが、マフラーやエアクリーナーですら、最近は元気がなくなってきている(そもそも国産スポーツカーが減少)。自動運転に邁進する今、チューニングやパーツ交換といったものは厳しいのだろうか。