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マツダの名機「ロータリー・エンジン」がスポーツカーに最適な理由とは

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了、Auto Messe Web編集部

初の量産エンジンはコスモスポーツに搭載 

 ドイツの技術者、フェリックス・ヴァンケル博士が考案しドイツのメーカー「NSU」と共同で開発したエンジンが「ヴァンケル・エンジン」。日本国内では「ロータリー・エンジン(RE)」と言った方が通りが良いのですが、海外ではヴァンケル・エンジンと呼ぶのが一般的です。

  NSUとヴァンケル博士から、その基本特許を得てマツダ(当時は前身の東洋工業)が製品化。1967年に登場したコスモスポーツに搭載されたことで、”RE”は初めて商品化されました。

 以来半世紀余り。2012年の6月に「RX-8」の生産が終了して以降、市販モデルでREを搭載した車両は姿を消していますが、マツダでは現在も研究開発継続中と伝えられています。今回は、そんなREを振り返ってみましょう。

最大の長所は軽量コンパクト

 ロータリーエンジン(RE)の最大の長所は、やはり軽量コンパクトなこと。正確に言うならば同排気量の、そして同程度の最高出力を生みだすレシプロエンジンに比べて、ということになります。

 軽量な理由は、構造が簡単なこと。レシプロエンジンのクランクシャフトに相当するエキセントリックシャフトと、シリンダーに相当するローターハウジングとサイドハウジング、そしてピストンに相当するローター。基本構造としてはこれだけで、レシプロエンジンでは必須である、同弁系が組み込まれて構造も複雑になり重量も嵩むシリンダーヘッドが不要になるぶん、軽量だけでなく、重いシリンダーヘッドがないのでエンジンの重心高も大きく引き下げられます。低重心化が要求されるスポーツカーには最適なのです。

 レシプロエンジンのクランクシャフトに相当するエキセントリックシャフトの周囲を、ピストンに相当するローターが回転しているだけなので、サイズ的には、レシプロエンジンでいうところのクランクケースをふた回りほど大きくしたもの、ということ。

 昔、富士で盛んに行わなれていたグランチャンピオン(GC)レースにREが登場した当初、リアカウルを開けた眺めに「エンジンは何処にある?」との声も聞かれた、とか。たしかに、クランクケースにシリンダーブロックを組みつけ、更にその上にシリンダーヘッドを装着するレシプロエンジンではシリンダーヘッド(カムカバー)がエンジンの頂上に載っけられていて背も高いのが当然とされてきました。その点、REのコンパクトさは、文字通り一目瞭然となっています。

 コンパクトなことから、エンジン搭載位置の自由度も高い。例えば、RX-7シリーズなどでも大きな美点となっていたフロントミッドシップ化(フロントアクスルより後方にエンジンをマウント)が可能になるうえ、エンジンの高さが低いぶんボンネットの高さも大きく引き下げることが可能。低く構えたボンネットは、結果的にスポーツカーらしいルックスを演出することができるのです。

 また、軽量なことは物理的にも“永遠の正義”です。エンジンが重いことでパフォーマンスを引き上げるためにエンジン排気量を拡大、結果的にさらに重量を増していく…といった悪循環とは無縁で、REが(レシプロエンジンに比べて)軽量なことは、クルマのパッケージのうえでは大きなアドバンテージ。つまり、ライトウェイトのスポーツカーを製作する意味でもメリットとなっているのです。

レシプロよりハイパワーで低振動かつ低騒音

 先に軽量コンパクトの項で紹介したのとは逆説的な論法となりますが、REは、同排気量のレシプロエンジンに比べてハイパワーなことも大きな特徴。例えば、1967年にマツダ・コスモスポーツに搭載されたマツダ初のRE(10A)は、491cc×2ローターで総排気量は982ccでしたが最高出力は110馬力を発生。翌年に発売された日産スカイライン2000GT(GC10)でも105馬力だったように、2リッタークラスのハイパワーを生みだしていたことからREのハイパワーぶりは多方面から高い関心を集めることになりました。

 ただし、REはエキセントリックシャフトが3回転する間に、ローターがその周囲を1回転だけ“公転”する構造。すなわち、ローターが1回転する間に、吸気→圧縮→爆発→排気の行程が3回も繰り返されます。これはクランクシャフトが2回転する間に同行程を1回行なうレシプロエンジンに比べて、2倍の爆発回数があるということ。つまり、REは同排気量のレシプロエンジンに比べて2倍の出力を発揮して当然、ということになります。

 実際には燃焼効率や冷却損失などの制約もあって(同排気量のレシプロエンジンに比べて)1.4~1.5倍の出力に留まっています。そのため、日本国内において自動車税課税時には総排気量(単室容積×ローター数)に1.5を掛けた換算排気量の排気量区分に入れられているのです。

 また、ピストンやバルブが往復運動を繰り返すレシプロエンジンでは、物理的に見ても振動を消し去ることは不可能ですが、ローターが偏心の回転運動を続けているREでは、比較的に低振動で低騒音に抑えられていることも美点。その構造から排気音が大きくなるのは致し方ないところですが、レーシング仕様の甲高いエキゾーストサウンドはともかく、ロードカーレベルの排気音は、むしろ雰囲気を演出する小道具となっています。REはまさに、スポーツカーに最適なエンジンなのです。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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