大型トラックはドラムブレーキが主流
それでは、トラックやバスなどの商用車はどうなのだろうか。日本の中型・大型トラックではほとんどの場合、前輪も含めすべての車輪がドラムブレーキとなっている。その理由をトラックメーカーや部品メーカーにたずねてみたが、最も回答の多かった理由は「減りにくいから」という。
物流のプロが使う商用車は稼いでナンボの世界。つまり、ひたすら稼働し続けることが大切なので、法的な点検は行なうとしてもメンテナンスによるダウンタイムは、極力避けたいし短くしたいというニーズが強い。その点でドラムブレーキはライニングの面積が大きいので、ライニングの単位面積あたりに掛かる負担が小さく摩耗が少なくなるのだ。
トラックで同様の仕事をディスクブレーキで行なうとパッドの面積が小さいので、同じ制動力を得るためには素材の摩擦係数を上げるか、強く押し付けることが必要となり消耗しやすくなる。構造としてはディスクの方がシンプルなので、作業時間は短縮できる可能性はあるが、そもそもの摩耗が減らせることが大事というわけだ。
小型トラックではフロントあるいは4輪にディスクを採用する車種もあるが、フロントではキャリパーを2つ搭載するなどしてパッドの接触面積を増やす事例もある。
もちろん、大型でもディスクにトライした例もあり、かつては「ふそう」が採用したこともあるが、イニシャルコストがやや高くつくこともありドラムに戻している。
しかし、最近では材質が良くなり耐久性が上がり、イニシャルコスト面でもドラムに拮抗してきたこともあるのかUDトラックスでは総輪ディスクとなっている(Volvoグループのためか?)。実際、高速走行が多い欧州ではディスクを採用するメーカーが増加しているそうだ。
ディスクは本質的にコントロール性が良いという特性があり、現在は電子制御が洗練されてきているので、リターダーや排気ブレーキと摩擦ブレーキの統合制御を行うことも可能となってきている。今後はネガ部分が解消されつつあるのでディスクが増えてくるかもしれない。
取材協力:田中オートサービス