CASEの潮流が加速し日本の法整備は急務だ
日本自動車輸入組合(JAIA)は1月27日、上野金太郎理事長の定例記者会見を開催。同組合の近況と今後の活動方針を示した。
会見の冒頭に上野理事長は「今年は2020年代の幕開けとなるが、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の潮流が一層加速すると見ている。国連の場などでは国際調和基準作り、日本でもレベル3自動運転の法整備が進んでいくと見ている。パリ協定に基づき地球温暖化対策への取り組みも強化されるため、電動車普及のための充電インフラの拡充に努めていく」と挨拶。
その後、昨2019年の動向を振り返り、外国メーカー乗用車については、「2019年1年間の販売台数は対前年比3.2%減の29万9439台で、30万台には届かなかったが史上5番目の高水準。月別では10月に台風の影響があったものの年間を通しては概ね堅調に推移した」ことを報告した。なお、その主要因として「組合員各社が多様なニーズに応える幅広いパワートレイン・車種を提供」したことを挙げている。
そして2020年の新車販売は、ニューモデルを積極的に投入しつつ、5Gサービス開始をにらんだコネクテッドカーの投入、より一層の電動化、SUVなどのラインアップ拡充、ファイナンスサービス充実などの施策を展開することで、30万台を超える見通しであることを明言した。
充電インフラ整備など日本政府の支援が必要だ
上野理事長は続いて、2020年の活動計画を発表。まず税制改正については「引き続き税負担軽減・公平化を求めるとともに、関連団体の会合に積極的に参加していく」と述べ、環境分野については「昨年制定された2030年度燃費基準を達成するには、平均44.3%の改善が義務づけられることになる。これををチャンスと捉え、今まで以上にクリーンエネルギー車を積極的に拡充していくが、燃費基準達成のため政府が充電インフラ整備などの面政策的支援を強化するとともに、欧米ですでに導入されているオフサイクルクレジット制度の導入も必要」と提言している。
自動運転については、「レベル3自動運転や、地域限定レベル4が実現できるよう昨年法改正されたが、普及には法規制のWP29(国連自動車基準調和世界フォーラム)に沿った国際調和が不可欠であることを確認している」と強調。また、「JAIAは産学官連携によるSIP-ADAS自動運転実証実験第二フェーズにも参加し、セロアクシデントの実現に貢献していく」とした。
その後、高齢ドライバーによる事故の深刻化にも触れ、「安全は全てに優先すべきと確信している。高齢ドライバーを含む全てのドライバーにADAS(先進運転支援システム)を備えたモデルを、サポカー補助金を活用しながら、より多くのお客様に提供していく」考えを強調。
法規制の国際調和については、「AEBS(衝突被害軽減ブレーキ)の国連規則が発行され、日本と欧州で基準と義務化時期決定の手続きが進んでいるが、完全なIWVTA(国際的車両認証制度)の実現を目指していく」と述べている。
モーターサイクルについても、「メディア向け試乗会を今年も開催するほか、秋に大阪で開催される第8回バイクラブフォーラムへ積極的に参加し、4月10〜12日に開催される第1回名古屋モーターサイクルショーにも組合員各社が出展する」計画。その一方「モーターサイクルについても保安基準の国際調和を求めていく」こととした。
2019年は小型化SUV車種がトレンド
記者会見における主な一問一答は下記の通り。
Q:2020年の販売目標について。
A:(上野)30万台が一つの目安。昨年数百台こぼしてしまったのはいろいろな外的要因があるが、30万台を達成できるよう、輸入車がより価格と販売方法の両面でより買いやすいよう取り組んでいく。
Q:オリンピック・パラリンピックについて。
A:(小林健二副理事長)JAIAとしては参画は考えていないが、組合員各社においては積極的に活用していく。
Q:軽二輪・原付の市場展開について。
A:(小林)市場拡大に有効であることを理事会でも確認している。バイクラブフォーラムでは二輪車の全面的な活性化を推進するものなので、その一環として軽二輪・原付の普及にも期待している。
Q:どのような車種が人気か。
A:(上野)SUVがトレンド。2014年は数%だったのが2019年では30%ほどになっている。小型化したこともあり台数が膨らんだ。電動車はもう少し伸びしろがあると思っている。各社が投入するのでまたトレンドが変わるのでは。
Q:貿易摩擦の影響について。
A:(上野)関税障壁は縮減、撤廃されるものと考えている。残された非関税障壁の撤廃を期待している。影響は全くないとは考えていないが、規制に囚われず積極的にモデル展開しているアメリカブランドもある。
Q:消費増税の影響について。
A:(上野)前回より1%少ない増税だったが、駆け込み需要は見受けられなかった。同時に大きな反動減も見受けられなくフラットだった。9月が販売のピークで、10月は元々反動減があるところに台風があったので、元気がなくなっている印象がある。消費者がどう見ているか、心理的な面を含めて今後の動向を注視する必要がある。
自動運転の国際基準と日本の法制化の調和が重要
Q:中国発祥の肺炎の影響は。
A:(上野)当然ながら、経済活動が停滞すれば影響は想定できる。
Q:自動運転レベル3の関係規則はどのようなものが望ましい・望ましくないか。
A:(小林)レコーダーの義務化が入る。その国際基準化の動きがあるので、国際調和と日本での法制化がセットとなるよう国交省に説明している。
(上野)新しい仕組みの導入の際、タイミングがドタバタになると調和が取れず新しい基準が生まれてしまうので、既定の調和路線を実現していきたい。
Q:非関税障壁の撤廃の中身とは。
A:(松本博司理事)まだ日本独自の基準が残っている。最終的には認可書一枚で日本でも認可が取れることを目指している。
Q:BMWジャパンに公正取引委員会の立ち入り検査が入ったが、販売正常化へのアクションがあれば。
A:(上野)個社に関するコメントは控えるが、残念ながら直接報告を受ける立場になく、顛末を理解していない。組合員各社がいろいろなビジネスプランに基づいて商売に取り組んでいるものと理解して、それを支えていく。