対向車などに検知して照射範囲を自動調整
その自動切り替えシステムをさらに発展させたといえるのが「アダプティブヘッドライト」などと呼ばれるハイビーム自動調光システムである。これは前走車や対向車の部分だけを避けるように照射範囲を自動制御するというもので、周囲に迷惑をかけないようにしながら、可能な限り遠くまで光を届かせることができる。
とくにAEBの制御などにカメラセンサーを使っているクルマにおいてはヘッドライトでの照射範囲は、そのままセンサー能力に直結する。メーカーによって呼び名は異なるが、今後採用の拡大が期待できる先進安全装備のひとつだ。
調光方式は大きくわけて3パターンがある
アダプティブヘッドライトが照射範囲を調整する方式は大きく3つある。主流といえるのが「アレイ式」だ。仕組みとしてはLED多灯型のヘッドライトを使い、それぞれのLEDをオン/オフすることで照射範囲をコントロールしようというものだ。トヨタ/レクサスやマツダ車の採用例が目立つ。
そのほか「シェード式」もある。先代のレクサスLSに採用されるなど10年近く前から存在する方式で、可動式シェードにより配光パターンを変えるというもの。アレイ式に比べると調整範囲は大雑把になる印象もあるが、歴史のある仕組みだけに安心感のあるシステムだ。現行モデルでの採用例としてはスバル・フォレスターがあげられる。
最後に紹介する最新の方式が「ブレードスキャン式」。レクサスRXに採用される世界初の調光システムだ。基本構造は、LED光源をミラータイプのブレードに当て、その反射光により前方を照らすというもの。
斜めに置かれたブレードが回転することで左から右へと照射するが、高速回転しているため人間の目には前方をしっかりと照らしているように見えるという構造になっている。そして、前方の状況をカメラなどで検知、対向車など照らしたくない部分だけ光源をオフにすれば無段階に照射範囲をコントロールできるというわけだ。
このようにアダプティブヘッドライトは日々進化している。トヨタの調査によると自動ハイビームシステムによってハイビームになる作動率は20%程度だというが、アダプティブヘッドライトにすることでハイビームの作動率は85%まで上がるという。すなわち夜間の安全性を向上させる効果が大きいということ。前述したように先進運転支援システムにとってもアダプティブヘッドライトは有効であり、ますます進化・普及が進むことだろう。