寒くなると軽油は着火しにくくなる
自動車カタログのオプション項目などで目にする「寒冷地仕様」というもの。その名の通り、寒冷地での使用に耐えられるようバッテリーが大容量だったり、ウインドウなどの凍結防止の対策が施されているのだが、同じ「寒冷地仕様」がディーゼル車の燃料に使う「軽油」にも存在する。取り扱われるエリアや標準の軽油との違いを調べてみた。
都内など気温があまり下がらない地域で軽油を満タンにし、泊まりがけでスキー場へ行ったら、翌朝にエンジンがかからない。そんな経験をした人はいないだろうか。じつはディーゼル車の燃料である軽油は、季節や地域によって数種類を使い分けている。地域ごとの気温によって「引火点(揮発し空気と可燃性の混合物を作れる最低の温度)」や、「流動点(液体が凝固する直前の温度)」などにより、特1号/1号/2号/3号/特3号と5つに分類。使用に関してはJIS(日本産業規格)によるガイドラインがあり、北海道から沖縄まで日本を13の地域に細分化したうえで、1カ月ごとに最適な軽油の号数を定め、各地域のガソリンスタンドにはそれに従って石油メーカーから軽油が納品されるという。
数値で見るともっとも温暖な気候に対応した特1号は、引火点が50℃以上で流動点は5℃以下。2号になると引火点こそ同じだが流動点はマイナス7.5℃になり、究極の寒冷地仕様といえる特3号は引火点45℃以上で流動点はマイナス30℃以下と、それぞれの特性が変わる。
例えば冬でも温暖な沖縄は年間を通して”特1号”。東北地方ならば6〜9月が”特1号”で、秋から春は1〜3号を使い分ける。道南を除く北海道になると、特1号は7~8月のみで1~3月は全国で唯一の特3号といったように、かなり細かく分類されている。
他にも目詰まり点/セタン指数/動粘度の違いがあるけど、いずれもエンジンの動力性能や耐久性には影響しない。低温になるとガソリンよりも着火しにくい軽油だからこその、エンジンがかからなくなるのを防ぐための使い分けなのだ。
では、東京など気温があまり低くならない地域に住んでおり、冬は頻繁にスキーへ行くような人はどうすればいいのだろうか。関東では12~3月の冬季でも”2号”の軽油しか供給されておらず、ガソリンスタンドで3号や特3号を指定して買うことも不可能。そのような場合は、行き先まで間に合う量だけ出発時に給油し、目的地付近に着いたらすぐに寒冷地仕様の軽油を満タンにするのがベストだろう。