低速度域でもエンジン温度を上げない工夫
2月14日から3日間、インテックス大阪で開催されている「大阪オートメッセ2020」では、トヨタが新型GRヤリスを公開をしている。すでにGRヤリスの『特別仕様車GRヤリスFirst Edition RZ“High-performance”』を紹介したが、本稿ではもう一台の「GRヤリス ラリーコンセプト」をクローズアップしたい。
トヨタ自動車ではGRヤリスの開発にあたり、様々な走行シーンを想定。なかにはダート走行もあったが、その際の開発車両をイメージした仕様だ。また、「様々な使い方でクルマを走らせることを楽しんで欲しい」と、ラリーやダートトライアル競技に使ってほしいという思いもある。そもそもGRヤリスはWRCでの勝利を目的にしているので、ラリーコンセプトのクルマを製作したのだった。
では、どのようなチューニングが施されているのだろう。まず、サスペンションの変更や下回りのガード類を装着。タイヤはダートユースのため15インチにインチダウンし、「ダンロップ・ディレッツァ88R(205/65R15)」をセットした。
インチダウンしたことでブレーキのローターサイズも小径化。ブレーキキャリパーこそ標準車と同一のものだが、ブラケットを加工して小径ローターにあわせたという。
ちなみにボディは市販モデルと変更なく、ボンネットやドア、リアハッチはアルミ製で、ルーフはカーボン製という仕様。しかし、インテリアはステアリングやシート交換のほか、ロールバーの追加にドアインナーはカーボン製に変更されるなど、ラリーマシンさながらの仕立てとなっていた。
ただし、エンジンや駆動系は変更なし。3気筒エンジンといえばエコカー向けというイメージが強いが、じつはGRヤリスにとっては非常に大きな武器であり、戦闘力に大きく貢献するそうだ。
その理由は、エンジン単体重量が非常に軽いこと。そして、3気筒エンジンは排気干渉が少ないというのが大きなメリットだという。排気干渉が極めて少ないということは燃焼室内の吸排気効率に優れることになるが、これはエキゾーストマニホールドのすぐ後ろにタービンが付くターボエンジンにはとくに有効。排圧が上がりにくいぶん、ハイブースト化や高回転域での点火時期の進角が可能になる構造だ。
さらに抵抗の少ない触媒やフロントパイプ、マフラーパイプの大径化など、徹底した排気抵抗軽減の対策を実施。1.6リッターとしてはかなり大きめのタービンで、ハイブースト(詳細な数値は未発表)をかけることを可能にしている。
もちろん冷却面についても妥協なく、大型インタークーラーにはウォータースプレーを装備。ラジエターはサイドタンク式を採用しているが、冷却水の入り口はタンクの上部ではなく、フロントグリルの開口部にあわせた位置になっている。なお、展示物ではエアコンのコンデンサーが省かれているが、市販車ではラジエター前にコンデンサーが装着される。
これについて解説員の方から、フロントバンパーの形状はデザイン性ではなくすべて空気の取り入れを考えたものという。
サーキット走行と違い、ラリーでは車速のわりにエンジン回転が高い状態で走り続けることが多いので、GRヤリスでは比較的低い速度域でもエンジン温度を上げない(エンジン保護のセーフティ制御が入らない)ようにするための工夫が随所に盛り込まれているのだった。
フォトギャラリーには同時に展示されていた。WRC参戦車両の写真も掲載しているのでそちらも見ていただきたい。