「自分だけの1台」にするための大技カスタム
他車種や新型モデルのヘッドライトやフロントバンパーなどを移植する「顔面移植」、いわゆるフェイススワップ。10年以上前に流行したカスタマイズ手法のひとつだが、大阪オートメッセ2020(2月14日~2月16日・インテックス大阪)では、そういった“フェイススワップ車”も多い。これは人気の再燃か!? 気になる車両をチェックしてみた。
トヨタ最高峰”センチュリー”顔のセルシオ
スポーツカーからセダン、ミニバンに軽自動車など様々な車種で取り入れられ、かつて大きな人気を得ていたカスタマイズ法のひとつがフェイススワップというもの。大技であるため工法が難しく、コストも掛かるためなのか、近年はそうしたドレスアップ車は減少傾向だ。
そんな中、ここで紹介するトヨタ・セルシオ(2代目・20型)は、約20年前からセンチュリーの顔を移植、センチュリーがモデルチェンジする度に、常に最新型のフェイススワップを続けているという1台。現在は、2018年のフルモデルチェンジ後(3代目)、2019年のマイナーチェンジモデルのフェイスが移植されている。
製作したのは「水野ボディーワークス」。セダンや軽自動車のカスタマイズパーツで有名な「K-BREAK」とのコラボレーションによって、フェイスだけでなく全体的に高級感と迫力あるフォルムを手に入れている。
フェイススワップの仕様変更は今回で3回目。フロントのグリルやバンパー、ヘッドライト、ボンネット、フェンダーなどに現行センチュリーの純正パーツを投入。前からの面構えは、まさに「センチュリー」そのものである。
さらに、フロントバンパー下部のメッキパーツに合わせ、サイドステップやリアバンパーなどのモール部分もセンチュリー純正パーツに換装。ドアだけでも純正品を4枚も購入したというコダワリようだ。
「最初にこのクルマ(セルシオ)を購入した18歳の時から、最高級車のセンチュリーに対する憧れがあり、常に(センチュリーの)現行モデルの顔に変えてきました。作るには手間やお金もかかりますが、それ以上の価値がありますね」。そう語る水野代表にとってのフェイススワップは「オンリーワンな最高の1台にしたい」という、クルマ好き特有の愛情表現のようだ。
先代フェアレディZをトヨタ86フェイスに
次は、日産・フェアレディZ(33型)に、トヨタ・86のフェイスを移植した1台。「ボディショップ Vivid Luster」が製作したこのクルマは、ヘッドライトやフロントバンパー、ボンネットなどにトヨタ86用パーツを換装し、ワンオフのフロントリップなどでスポーティに仕上げた。
「86のフェイスデザインは好きだが、ボディが全体的に短すぎる」とはオーナー談。大柄のフェアレディZのフロント部分を86フェイスにすることで、好みの“顔”とスポーツカーらしい“長さ”を手に入れたのだ。
また、オーバーフェンダー(前15センチ・後10センチのワイド化)やGTウイングなどの装備で、映画「ワイルドスピード」に出てくる派手なムービーカーのようなイメージに。
今後はリアフェンダーを現在のオーバーフェンダー仕様から、ボディ全体をワイドにするブリスター化するなどで、さらに進化させる予定だ。
クーペ顔のスカイラインセダン
日産・スカイラインのセダン(V36型)をベースに、同型のクーペモデルのフェイスを移植したツウな車両を発見。製作は同じく「ボディショップ Vivid Luster」だ。
ヘッドライトやフロントフェンダーはクーペ純正を加工移植、フロントバンパーは社外品(リバティウォーク製)を装備しているが、クーペのフェイスはセダンよりも長くなるため、ボンネットはセダン用を延長加工し、全体的に自然な仕上がりとなっていた。
4枚ドアのセダンに、「スポーティなテイスト」を取り入れたかったというオーナー。こちらも、フェンダーをワイドボディ化(前片側10センチ・後片側13センチのアップ)し、エアサスペンションの装着で車高をローダウン。約17センチ伸びた全長と相まって、スポーツカーらしい「ロー&ロング」な美麗フォルムへと上手く変身させていた。
ライバル車のフェイスをスワップ
スズキ・ワゴンR(MC22S)に、現行型のダイハツ・ムーヴの顔を投入した車両がコチラ。ヘッドライトはムーヴ純正、フロントバンパーは「ファブレス」のエアロ、フロントリップには「シックスセンス」のプリウス用をそれぞれ加工して移植するなど、まさに“正体不明”のインパクトを持った1台だ。
軽自動車系のイベントやオーナーズ・ミーティングに通うのが趣味というオーナーは、「同一メーカーのクルマにフェイススワップする人は多いので、より目立つために他メーカーのクルマの顔を投入したかった」とのこと。こちらも「ボディショップ Vivid Luster」が手掛けている。
カプチーノに日産スポーツカーのフェイス投入
スズキ・カプチーノ(F6A型)をベースに、フロントフェンダーから前を日産・180SXにすることで、「超ロングノーズ化」を実現したユニークな1台。製作したのは、ナカムラレーシングファクトリーだ。
日産のスポーツカーとして、80年代後半から90年代に人気を博したのが180SX。かつては、同じ日産のシルビアへ180SXの顔を移植した、通称「シルエイティ」が人気だったが、軽自動車のカプチーノがベースの“180SX顔”はかなり珍しいはず。
ヘッドライトに180SX純正を流用したほか、フロントのバンパーやフェンダー、ボンネットなどは全てワンオフ製作。全長は伸びているにもかかわらず、軽自動車登録が可能というから驚きだ。
製作したナカムラレーシングファクトリーの中村代表によると、「5〜6年前に一度作ったクルマなのですが、事故で破損。オーナーの強い要望で、再度同じ仕様で作った」という。壊れても、諦めずにもう一度作る、オーナーにとってはそれだけお気に入りの1台だったことが窺える。
今回紹介したクルマたちは、いずれも他車種の顔に変えることで、独自のオリジナリティを追求したものばかり。オーナーたちは、手間やコストはかかるものの、それには変えられない「個性のアピール」や「愛車への愛情」を表現するために、フェイススワップを行なっているようだ。
筆者は10年以上大阪オートメッセの取材をしてきたが、今回は近年の中でも特に面白い「顔面移植」を施したクルマが多かった。かつてのブームが再燃するかどうかは不明だが、今後も根強い人気を持ち続けるだろうことは間違いないだろう。