自衛隊で取得する特別な免許
インテックス大阪で開催された西日本最大級のカー&カスタマイズカーの祭典「大阪オートメッセ2020」では、『自衛隊 大阪地方協力本部』がブースを出展、車両や装備の展示から制服試着コーナーまで、老若男女を問わずに多くの人の関心を集めた。
展示車両は「1/2tトラック」、「高機動車(HMV)」、そして「87式偵察警戒車(RCV)」の3台。自衛隊員さんから説明を聞いたり記念写真を撮ったりと終始人だかりができていたが、なかでも注目されていたの車両が機銃を備えた87式偵察警戒車だった。
さて、自衛隊といえば”陸”、”海”、”空”のそれぞれで「自衛隊員でしか乗ることができない乗り物」が存在するのはご存知の通り。今回の展示車でいえば、87式偵察警戒車がそれだ。1/2トラックは三菱パジェロで、高機動車はトヨタのメガクルーザーがベースなので身近に思える存在だが、戦闘車や戦車は特別感がある。
そこで気になったのが、「戦車に乗る」ためにはどういう課程を踏めばいいのか、ということ。早速、現地にいた陸上自衛隊の隊員に話を伺ってみた。
*記事内の写真は、大阪オートメッセで撮影したもので本文(戦車)とは関係のない車両が登場します
入隊後で変わる戦車乗りへの近道
まずは、陸上自衛隊へ入隊。「採用種目」には大学を卒業し、その後、将来の幹部となるための「幹部候補生」と、部隊のなかでの中堅の「曹」になるための「一般曹候補生」、そして2年ごとに任期を更新する任期自衛官である「自衛隊候補生」がある。
試験に合格して入隊すると、つぎは15種目の職種のなかから希望を選ぶが、戦車部隊を持つ「機甲科」がある。ただし、誰でも入れるものではなく、希望者が多いときなどは選抜になるようだ。とはいえ、選ぶ基準はその人の適正にもよるので、乗り物好きや運転免許を持っていれば、意外と入れる確率は高いようだ。
そして、機甲科内にも「戦車部門」だけでなく「偵察部門」が存在するため、配属部隊によって扱う車両も変わる。つまり、戦車に乗るには入隊後は「機甲科」へ進み、そこから「戦車部門」へ入ることが最短の近道。ちなみに、87式偵察警戒車は偵察部門に所属する車両だ。
なお、自衛隊に入隊すると最初の3ヶ月は基本教育を受け、つぎの3ヶ月で機甲科の隊員としての教育を受ける。偵察部門に入る際はさらにひと月、専門教育を学ぶという。それが終わると部隊に配属され、戦闘車に乗るわけだが、戦車は装填手、砲手、操縦手、車長という乗員が基本で、最初は弾薬の装填を専門に行なう「装填手」からスタート。その後、「操縦手」になるのだが、最新式の『10式戦車(ヒトマル式)』は自動的に装填する装置を持つため、最初から操縦手ということも考えられるわけだ。
また、幹部候補生で入隊した場合だが、機甲科の幹部になれば大型免許、大型特殊免許を取得することになり、体験的に戦車に乗ることはできる。しかし、実際の任務ではないため、戦車専任にはなれないとのことだった。
公道を走るための特殊免許取得と訓練
さて、戦車も公道を走ることがあるため、当然ながら運転免許証は必須だ。戦車の場合は「大型特殊免許(カタピラ限定)」を取得せねばならず、さらに陸上自衛隊内のライセンスとして職務や職種に応じた「特技(MOS)」という資格も必要。この場合、「双輪操縦」が必要となるそうだ。
なお、免許取得は自衛隊が管轄する教習所(自衛隊自動車訓練所)にて実施(期間は3~4ヶ月)。これも仕事の一環なので集中的に学ぶことになる。まずは大型免許取得を行ない、それが終わると特技の練習をするそうだ。
ちなみに毎年、富士の演習場で実施される「総合火力演習」は、富士の普通科教導連隊が中心になって行なうので、演習で戦車に乗りたいという場合は、そちらに所属する必要があるようだ。なお、ほかの地区部隊も支援として派遣されるが、その都度持ち回りになっているとのこと。
これが戦車に乗るための道筋だが、免許や特技の取得の難易度はあるが、想像していたより現実味がある印象だ。また、戦車に乗っている隊員たちは常に一緒に行動するため、仲間としての結びつきはとても強いものになるとも聞いた。
国を守るためだけでなく、地震や噴火などの災害派遣でも目にする自衛隊の活躍。今日も隊員たちは専門分野を学び、日本の平和を守っている。
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