寒さによって起こり得るダメージ
夏の暑さだけでなく、冬の寒さというのは、クルマに対してさまざまな影響を与える。もちろんいい意味ではなく、悪い意味でだ。そのために「寒冷地仕様」というのは一部車種ではあるが、今でも残っているし、対策をしないと不意のトラブルに見舞われることがある。降雪地や寒冷地のドライバーなら慣れていることでも、非降雪地からスキーなどに行った場合など、とくに注意が必要。今回は寒さによる悪影響について紹介しよう。
バッテリー
バッテリーは化学反応を利用して、充電と放電を繰り返している。ご存知のようにバッテリーは寒さに弱いのだが、化学反応が鈍るのが原因。実際にどれぐらい影響を受けるのかというと、気温25度を100パーセントとした場合、10度下がると性能は10パーセントも下がると言われている。外気温が0度になるだけで、性能は自然に3/4程度になってしまうのだ。これは新品の状態でのハナシ(製品の性能差もあるが)で、ヘタっていたり、メンテ不良だった場合はさらにダメージは大きくなるのは想像に難くない。
ウォッシャー液
降雪地帯など、冬場はウインドウウォッシャー液を利用する機会が多い。ウォッシャー液はアルコールを主成分にしているので、凍りにくいのだが、希釈して使用していると凍結温度が上がってしまい、凍る可能性が高まってしまう。凍ると配管などが破裂してしまうので、冬場は濃度を高めにしておくことをオススメしたい。
冷却水
最近は「スーパーLLC」という高性能タイプが普及して、冷却水の性能が上がり、凍結の心配はなくなっている。ただし、従来のLLCを希釈して使っている場合は、ウォッシャー液同様に凍結する可能性がある。冷却水は水に近いほど冷却性能は高まり、濃度が濃い、つまり防錆や消泡性能などを確保しようとすると、冷却性能自体は落ちてしまう。
エンジンオイル
最近のクルマは燃費のために、超低粘度オイルを指定しているので、低温には強い。問題は超低粘度オイルを指定していない時代のクルマで、エンジンオイルの粘度を表す「5W-30」といった後ろのフタ桁(この場合は30)の数字が40あたりを入れている場合。
軽油
いまや燃料タンクは樹脂製が主流になっており、内部に結露してそれが配管内で凍って悪さするということもなくなった。そのため、昔はガソリンスタンドで勧められた「水抜き剤」は不要とされるのだが、軽油については未だに注意が必要だ。
軽油の場合は水分が溜まるからというのではなく、性能に原因がある。見たことがある人はわかるが、軽油はドロドロとしていて、種類によって「流動点」が異なる。流動点とは流動性がどれぐらいあるのかを示すもので、温度で示される。これはJIS規格によって定められており、JIS特1号(気温5度以下)からJIS特3号(同マイナス30度以下)まで、5段階が定められているのだ。
すなわち、非寒冷地で売られているのは流動点の高いもので、寒冷地では低いものとなる。それぞれの地域で使っている分にはいいが、非寒冷地から寒冷地まで一気に走行する場合は要注意で、エンジンがかからないこともありうる。対策としては現地についたら給油をすればいいし、また寒冷地である程度給油できるようにタンク残量を計算しておくことも大切だろう。
ウインドウの割れ
特にフロントウインドウに小キズや飛び石によるヒビが入っていることがある。通常では問題なくても、冷えた極寒の朝などに、デフロスターで霜や曇りを取ろうとしてイッ気に温風を当てると、稀にヒビが拡大してしまうというケースがある。
番外編・下まわり
低温が直接悪さをするわけではないが、凍結路を走った場合、下まわりをぶつけたり、こすったりする可能性は高まるだけに要注意。ブレーキラインは下からのヒットでもダメージを受けないように取り回しが考えられているが、フロア下の塗装が剥がれたり、パネルが凹んだりすることもある。