雪道に対する緊張感がチェーン装着車と違う
かつては雪道走行するとき夏タイヤにスノーチェーン(チェーン)を装着するが一般的でした。ご存じの通り、チェーンは駆動輪だけに装着します。ということから、スタッドレスタイヤを駆動輪だけに装着すればいいのでは?という考え方もありますが、これはとても危険なのです。
最近は見かけなくなりましたが、20年くらい前に首都圏で後輪だけスタッドレスタイヤを装着していたタクシー(FR車=後輪駆動車)をよく見かけました。きっとタクシー会社としては、運転手さんにチェーンを装着する手間を軽減する処置だったのではないかと思います。
ところが最近になって、スタッドレスタイヤをチェーンの場合と同じように駆動輪のみに装着してるクルマと遭遇することも…。まあ、世知辛い世の中ですから、「どうせ雪道は走らないから」「ゆっくり走るから大丈夫」などと言い訳しながら、節約メリットの為に4本ではなくて2本だけにしてしまう?のかもしれません。が、はっきり言って危険な状態で走ることになります。
FF(前輪駆動)車で前輪にスタッドレスタイヤ、後輪は夏タイヤの場合、前輪のスタッドレスタイヤが雪道を捉え、ハンドル操作にも反応するので走ることはできます。しかし、カーブを曲がる時やハンドルを切りながらブレーキをかけたとき、後輪はグリップ力が低い夏タイヤなので横滑りしスピンを起こしやすくなります。FR車の場合反対に前輪に夏タイヤで、後輪はスタッドレスとなるので、操舵輪が滑るのでハンドル操作に反応しにくくなります。ブレーキをかけたときは、前輪に荷重がかかるのですが、グリップ力の低い夏タイヤですから、制動力はかなり低くなります。
このような特性は、夏タイヤにチェーンを装着しているときも同様です。ただ、たとえソフトなラバータイプのチェーンであっても多少なりの振動などが出ますから、スタッドレスタイヤ装着車に比べるとかなりスピードを落として走行するようになります。ところが、駆動輪だけスタッドレスにしたとき振動などがないため、4輪スタッドレスタイヤ車のようなペースで走行してしまうようです。このあたりにチェーン装着車と駆動輪のみのスタッドレスタイヤ装着車では、ドライバーに心理的な違いがあると思われます。
もちろん4本ともスタッドレスタイヤを装着しても注意点はあります。
国土交通省では
・スタッドレスタイヤは、全車輪に装着することが基本
・一部のタイヤのみに装着した場合は、車両の挙動が安定しないなど、十分な滑り止め効果が得らない
・スタッドレスタイヤを装着しても、乾燥路面と比べると非常にスリップしやすいことを十分認識
・制限速度にかかわらず速度を十分落とし、十分な車間距離
・雪道は横滑りを起こしやすいので、ハンドルやブレーキの操作は特に慎重に
・急発進、急ブレーキ、急ハンドルは絶対にNG
などの注意点を掲げています。