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「ターボ」や「DOHC」を大々的にアピール! 1980年代に流行したクルマの「フルライン戦略」とは

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TEXT: 大内明彦  PHOTO: Auto Messe Web編集部

メカニズムがセールスコピーにとなった時代

 1980年代の国産自動車メーカーは、自社製品を特徴付けるため「フルライン○○」といった表現を使っていた。それは排出ガス対策に追われ、性能追求ができなかった1970年代のこと。メーカーあるいはユーザーにとって、自動車に対する欲求を抑える、いわば”我慢の時代”だった。が、排出ガス対策が一段落して性能追求が許されるようになった1980年代に入ると各メーカー間で性能競争が勃発。自社の製品を共通したメカニズムでPRする「フルライン○○」の表現がセールスコピーとして使われるようになった。

国産ターボ解禁からブームのように搭載車拡大

 性能競争のきっかけとなったのは、1979年に日産が発表した「セドリック/グロリア(430系)」のターボだろう。これをきっかけに日産は『フルラインターボ』の販売戦略を打ち出した。セドリック/グロリアの搭載エンジンがL20系のターボだったことから、同型のエンジンを使う車種は順次ターボ化。これに歩調を合わせるべく、4気筒のZ系エンジン使う「ブルーバード(910系)」も1980年にターボ化された。

 さらに1982年には「サニー(B11系)」にもターボモデルが用意され、先進技術を謳う日産はフルラインターボでユーザーにアピールしたのだ。

 そして、日産より遅かったものの、全車種においてフルラインターボ路線を打ち出したのが三菱だった。先鞭をつけたのは、1980年11月に登場した「ギャラン・シグマターボ(A160系)」。このモデルを皮切りに1981年にはランサーEXターボ、さらに1982年にはスタリオン、ミラージュにターボモデルを用意してフルラインターボ路線を確立。ハイテク&ハイパワーで三菱車の高性能ぶりをアピールした。

 

ツインカム(DOHC)を大衆化したトヨタ

 一方、日産がターボならば”DOHC”で、という姿勢を見せたのがトヨタだった。排ガス対策期も2T-G型1.6リッター直4DOHC、18R-G型2リッター直4DOHC(一時期カタログ落ち)を存続させたトヨタは、排ガス対策が一段落すると高性能指向の4バルブDOHCを量産化。エンジン型番に「G」がつくハイパフォーマンス指向の1G-G型(1982年、GX61系マークII、A60型セリカXX)、4A-G(1983年AE86型カローラ・レビン/スプリンター・トレノ)、3S-G型(1985年、T160型セリカ/カリーナ/コロナ)を続々登場させる。

 さらにエンジン型番に「F」がつく実用型の4バルブハイメカツインカムも開発。1987年にフルチェンジを受けた6代目「カローラ/スプリンター」に5A-FE型1.5リッターエンジンが搭載されたときには、実用車のカローラが4バルブDOHC仕様、と世の中に衝撃を与えるほどだった。

 このDOHC化は1G-FE型、3S-FE型とトヨタ主力エンジンのすべてにおよび、「フルラインツインカム」路線による高性能イメージの確立に成功したのである。

 

悪路走行から日常へ、4WDのイメージを一新

 高い走破性能を持つ「4WD」という駆動方式もフルライン化の対象となった。「フルライン4WD」を標榜したのは三菱だったが、当初はクロスカントリー型、SUV型のモデルで4WD化を考え、1982年に「パジェロ」を発表。その後はランサー、ミラージュ、ギャランといった乗用モデルにも4WDモデルを設定した。こちらはハイパワーエンジンとの組み合わせで”スポーツ4WD”を狙ったものだった。

 逆に、全天候型の駆動方式として日常使用の4WDを提唱したのがスバルだ。スタビリティの高さから安全性も高い駆動方式として乗用車に採用。最初はパートタイム4WD方式を持つ1972年登場の「レオーネバン」だったが、1975年には乗用車のレオーネに採用された。

 以後、歴代レオーネ、ジャスティ(1984年)と続いたが、いずれもパートタイム式4WD。1989年に発表した初代「レガシィ」が、初めてフルタイム4WD方式を採用した。その後は、「アルシオーネSVX(1991年)」、「インプレッサ(1992年)」をリリース。”フルタイム4WD”(スバル表記はAWD)を車両生産の核として謳っている。

「フルライン○○」の表現は、自信を持つ自社技術を前面に打ち出したセールスエンジニアリングとも言えるものだったが、ユーザーの立場からは、メーカーの特徴が分かりやすく、車両を選ぶ上でのひとつのキーワードとして有用だったのも事実。1980年代は、日本の自動車メーカーの個性が際立っていた時代とも言えよう。

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