変わらずとも愛され続けるクルマとは
技術革新によるものなのか、デザインが進化した結果なのか、今では多くのクルマが攻撃的なルックスを持つようになってしまいました。しかし、それを逆手にとって、例えばヘッドライトをまろやかなラインで仕上げたクルマも見かけるようになりました。
そんな中、シンプルな丸型ヘッドライトを持つクルマに注目が集まっているようです。クルマの顔で言えば”目”のようなものだけに、老若男女を問わずに受け入れられやすいはず。国産車にもジムニーやハスラーが存在しますが、あえて注目したのがロシア車。日本では未知の世界ですが、運良く取材することができたので紹介しましょう。
軍用車ベースの質実剛健なワンボックス
そのクルマの名前は「UAZ-2206」。近年は国産のワンボックスも随分スタイリッシュに仕上げられてきましたが、UAZ-2206はクラシカルで愛らしいルックスが大きな特徴になっています。
ルーツを探っていくとロシアで戦後、軍部の要求で軍用車両のGAZ-69をベースに4輪駆動のキャブオーバーのバン、要するにワンボックスカーとして開発された軍用車両、UAZ-450がありますが、その末裔ということになります。この進化・発展は、米国においてウィリス・ジープをベースにジープ・フォワードコントロールが生み出されたことに範をとったものです。
「UAZ(ロシア語表記はYA3)」は”ワズ”と読み、ウリヤノフスク自動車工場の略。同様に「GAZ」は”ガズ”と読み、ゴーリキー自動車工場の略。ともに国営企業でしたが、現在は株式会社に改組された自動車メーカーとして活動を続けています。
ところで、米国本家のジープ・フォワードコントロールは約10年で生産終了しましたが、UAZ-450は何度かの大掛かりな改変も含めてマイナーチェンジを実施。外観は大きく変えられることもなく今日に至っており、このクラシカルなルックスによって根強い人気を持つことに繋がっているのです。
なお、UAZ-2206のボディサイズは全長×全幅×全高(4363mm×1940mm×2064mm)。トヨタ・ハイエースのスーパーGL(標準ボディ/標準ルーフ)と比べると約330mm短く、240mm幅広く、40mmほど低いという、ずんぐりした独特のシルエットです。
そのクラシカルなルックスとは対照的に、メカニカルな部分では度重なるアップデートによって先進的(見た目よりは)。2.7リッターのガソリンエンジンは直4ツインカムで電子制御式燃料噴射を採用するなどモダンなスペックとなっており、欧州だけでなく日本国内の排ガス規制もクリアしているのです。
ユニークなクルマが暮らしにあれば
UAZには10人以上の乗車定員に対応するミニバスもラインアップされているほどですから、客室のスペースは充分に広く、キャンプギアを積み込むときにも余裕たっぷり。アウトドア系のファンも多いそうです。
そんなUAZ-2206の新車を輸入しているのが名古屋の名東区に本拠を構える「オートリーゼン」。1971年の創業以来『好きな車と、暮らそう!』を合言葉に海外からの新車・中古車を輸入販売すると同時に、アフターサービスも手掛けてきました。
UAZ-2206以外にもジープタイプ4WDのSUVである「UAZ ハンター」や、LADA(ラーダ)の「ニーヴァ4×4」、ルーマニアのDacia製クロスオーバーSUV「ダスター」など、マニア垂涎のユニークなモデルを扱っています。
ユニークと言えばチェコ生産の「トヨタ・アイゴ(初代モデル)」もバックヤードで発見。
こうした珍しいクルマも「お客さんからのオーダーがあれば、輸入の代行サービスも行なっています」とのこと。クルマならばすべて可能という訳にはいきませんが、排気ガスの規制や安全装備など(輸入したクルマの)国内登録に関してもノウハウは豊富。
なお、先述したUAZ-2206の車両価格ですが、390.5万円とのこと(1年もしくは20,000kmのパワートレイン保証付き)。このように世界には魅力的なクルマがあるわけで、人とは違う1台を求めるならば絶好の選択肢になるかもしれませんね。