NGの根拠は道交法の通行帯違反
高速道路を走る際、「追い越し車線を走り続ける」ことは違反行為。問題となっている「あおり運転」の原因のひとつと指摘されるようになり、気づかずに走っていた人にも禁止だったことが認知されはじめている。
追い越し車線を走り続けることがNGという根拠は、道路交通法第20条3項にある。追い越し車線は「追い越し行為」をするための車線であって、走り続けることは道路交通法違反であり、「通行帯違反」として警察の取締対象となる。もちろん、追い越し行為の最中は違反対象にはならないので、追い越しが終了してからもずっと追い越し車線を走っていると通行帯違反に問われることになるわけだ。
その基準として「2km以上の走行すると通行帯違反になる」というウワサがある。結論からいえば、明確に2km以上と決まっているわけではない。2km未満であっても状況によっては通行帯違反で取り締まられることもあるし、一方で2km以上を走っても問われないことだってある。
極端な例をあげれば、渋滞しているときに追い越し車線にクルマが詰まっている状態だからといって、それが即座に通行帯違反に問われることがないのは当たり前のハナシだ。
時速100キロならば1分で2km走ってしまう
そもそも、”2km”という距離について考えてみよう。追い越し車線を制限速度の100km/hで走っていたとする。この場合、分速1.67kmとなるので、2kmを走るのに1分12秒程度かかることになり、120km/hであればジャスト1分という計算だ。
すなわち、仮に2kmという数字を通行帯違反に問われるかどうかの根拠だとすると、追い越し車線を走り続けていいのは1分間程度ということになる。
当然ながら法的な根拠がないわけで、2kmという数字は、あくまでも追い越し行為が終了してから1分程度(以内)で走行車線に戻るという目安として捉えるべき。ただし、走行車線をそれなりにゆっくりと走るクルマが連なっている状態では1分毎に車線変更を繰り返すことになり、逆に周囲を不安にさせる運転ともなりかねない。
また、渋滞とまではいかなくとも適度に混んでいる都市近郊の高速道路では、追い越し車線も走行車線的に運用して3車線をフルに使わないとスムースに流れないという状況もある。こうしたケースで「通行帯違反」を検挙するというのは考えづらい。
建前論としては「通行帯違反」に問われないような運転をするべき。走行車線がガラガラなのに追い越し車線を走り続けるというのは、明らかな違反として問われるだろうし、後続車が迫ってきているのであれば道を譲るべきだ。
しかし、ルールやマナーというのは根本的にスムースな交通を生み出すために存在している。杓子定規に捉えて渋滞を巻き起こしてしまっては本末転倒。すべてのドライバーが、円滑な交通を意識して、その中で自分の走りたいペースで移動することが重要だ。