後席の空調環境はワンコにとって重要ポイント
ワンコとの旅行に最適な国産車10選に続き、今回はワンコとの旅行に最適な輸入車をお届けしよう。筆者はモータージャーナリストにして、ドッグライフプロデューサーとしての活動も行っている。以前、交通タイムス社CARトップ誌の長期連載”CT DOG”の集大成として、「愛犬と乗るクルマ」というムック本をリリース。そのほかにも多くのペット関連の媒体で仕事をしている。毎月のように愛犬のラブラドールレトリーバーとジャックラッセルを連れ、国産・輸入車で愛犬同伴のドライブを楽しんでいる(仕事ですが)。そのような経験から、愛犬とドライブするのにふさわしい輸入車を紹介したい。
【ボルボV60】
トップバッターは北欧、のスウェーデンのボルボV60だ。ボルボカーズジャパンの要請で、車幅をできる限り日本の交通環境に合わせて登場したエステート=ステーションワゴンだが、世界最高峰の先進安全装備の搭載に加え、極めてドッグフレンドリーなクルマであることを、愛犬を連れた軽井沢、伊豆など、1000キロ以上のドライブで確認している。実際、友人の愛犬家にも薦めているぐらいなのである。
では、どこがドッグフレンドリーかと言えば、後席、ラゲッジを問わず犬の乗り下りのしやすさだ。ゆったりとしたスペースの後席の地上高は約520mmと、極めて低い。大型犬はもちろん、小型犬でも乗り降りしやすい高さだ。また、ステーションワゴンとして本格的な機能を備えたラゲッジルームの開口部地上高も約640mmと、世界のステーションワゴンの平均値約620mmよりはやや高いものの、元気な大型犬なら余裕で飛び乗れる高さ。
しかも、V60最大のドッグフレンドリーポイントは、犬の乗せ場所のひとつとなる後席の空調環境だ。何しろボルボのこのクラス以上には、センターコンソール後端のエアコン吹き出し口(温度、風量調整可能)のほか、左右Bピラーにもエアコン吹き出しがあり、暑さに弱い犬にとって、最高の空調環境が確保されているのだ。
ラゲッジルームも凝っている。後席使用時のフロアは幅約1020mm、奥行1010mm、後席格納時フロア長1670mm(ほぼフラットフロアに)、最小天井高660mmと、大型犬の乗車に十分なだけでなく、万一、ラゲッジスペースに犬と荷物を同居させなければならないシーンでも(できれば避けたいが)、立ち上がるパーテーションによって前後が仕切れるのである。
その際の奥行は手前500mm、奥540mm。わが家のジャックラッセルなら十分すぎるスペースだ。そのほかにも、飼い主の愛犬との長距離ドライブの肉体的疲労を軽減してくれる前席マッサージ機能なども、実際に愛犬と軽井沢や伊豆を往復してみて、褒められる点だと実感している。
【ボルボV60クロスカントリー】
が、その上をいく究極のドッグフレンドリーカーとして挙げられるのが、V60のクロスオーバーモデルのV60クロスカントリーだ。後席やラゲッジルームの地上高は40mmほど高くなってしまうものの、最低地上高に余裕、4WDによって、悪路や雪道により強いオールラウンダーとなるからだ。
ではなぜ、オールラウンダーが究極のドッグフレンドリーカーになりうるのか。それは犬の寿命とも関係がある。犬の寿命は10年から15年。その短い犬生の間に、いかに多くの飼い主との楽しい思い出を作ってあげられるかが、飼い主の使命と言えるのではないか。
一般的な家庭では、愛犬とドライブ旅行に出掛けられる機会は、そうは多くない。せっかく予定した愛犬とのドライブ旅行が、悪天候だから、雪だから中止……では、家族も愛犬もがっかり。犬生の間で希少な、楽しいはずの思い出づくりの機会をつぶしてしまうのだ。
が、ボルボV60クロスカントリーのような、本格SUVよりも犬が乗車しやすく(後席、ラゲッジフロアが低いから)、しかも走破性に優れ、V60同様に後席の空調環境に優れたクルマなど、ほかにそうあるものではないのである。V60クロスカントリーは、わが家の理想のドッグフレンドリーカーだ。
そうそう、ボルボ純正の世界最高峰の愛犬対応機能・快適性を備えた、後席用のドッグベッド(大型犬用フルサイズと中小型犬用のハーフサイズ)が、2020年中半には発売される予定である。そのほかにも愛犬用アクセサリーが豊富に揃っていて、それもまた、ボルボがいかに愛犬家の期待に応えてくれるクルマであるかの証明ともいえるだろう。
走行性能は文句なしのドイツ勢
同クラスのステーションワゴンには、ドイツ勢としてメルセデス・ベンツCクラスステーションワゴン、BMW3シリーズツーリング、アウディA4アバント、そしてVWパサートヴァリアントなどがある。その中で、愛犬家にお薦めしたいのが、メルセデスベンツCクラスステーションワゴンとVWパサートヴァリアントだ。
【メルセデス・ベンツCクラス】
走行性能はどれも文句なしだが、特にCクラスステーションワゴンを推す理由は、まず、後席シート地上高が低く、なおかつラゲッジの開口部地上高がこのクラスでもっとも低い約600mm(A4アバントは630mm、同Sライン610mm)、かつ開口部の段差がもっとも小さいからだ。
犬をラゲッジルームに自身で乗り降りさせるシーンに限れば、大きな段差があると足を引っかけ、骨折する原因になる可能性がある。そして後席エアコン吹き出し口を完備していることはもちろん、A4アバント同様、ラゲッジのマットがリバーシブルになっていて、愛犬を乗せる際は裏面の樹脂面を使うなどの工夫が可能だからだ。乗り心地、車内の静かさもメルセデスならではで、車内でどこかにつかまれず、聴覚に優れた犬も快適にドライブを楽しむことができるに違いない。
【VWパサートヴァリアント】
VWパサートヴァリアントは、このクラスのドイツ製本格ステーションワゴンとして割安かつ、ドッグフレンドリー度の高い1台。後席地上高は約560mmと低く、犬も乗り降りしやすい。ラゲッジ側も、開口部地上高は約620mmと低く、フロアボード上段なら開口部に段差なし。
フロアは995~1440(フロアボード外し)mm、奥行1140mm、後席格納フロア奥行1750mmと、ライバルを圧倒。3ゾーンオートエアコンによって、後席の空調環境も十分だ。それで400万円台前半からの価格なのだから、超お買い得でもあるドッグフレンドリーカーと言える。
そこまで大きなワゴンは必要ない、というなら、VWゴルフヴァリアントも文句なしのドッグフレンドリーワゴンである。そのゴルフをベースにした3列シートミニバンのVWトゥーランも、後席を格納することで大容量ワゴン化が可能。大型クレート(犬を運搬するケース)も積みやすい1台だ。
【ミニクラブマン】
意外なる輸入ドッグフレンドリーカーと言えるのが、ロングホイールベースでミニ最上級のフラットでしなやかな乗り心地を示してくれるミニクラブマン。後席地上高は約560mmと低く、犬の乗り降りのしやすさは文句なし。
ラゲッジ側の開口部地上高は約700mmとSUV的に高いものの、観音開きのバックドアは、降車時、犬の飛び出しを防いでくれる効果あり(左右に少しずつ開くことができる)。ラゲッジロシアは幅1020mm、奥行720mmと、幅が広く、奥行は本格ワゴンにはかなわない寸法だが、4:2:4分割の後席を片側だけ倒すことで、後席に飼い主が乗った状態で、縦長のフロア奥行約1350mmの愛犬スペースが出現。後席エアコン吹き出し口もあり、犬も快適・安心なドライブを楽しめる。
【ルノー・カングー】
最後の1台はルノー・カングーだ。輸入車としては希少な、犬の後席乗降が容易なリヤスライドドア完備で、ラゲッジスペースは元々、働くクルマゆえ使いやすさ抜群。ラゲッジの開口部地上高は545mmで開口部に段差なし。
フロアは奥行780mm、幅1165mm、天井高最大1230mmと大容量。後席を格納すれば、最大奥行は1660mmに達し、その際のスライドドア側からの後席格納フロア地上高は645mmと、これまた犬の乗降に無理のない高さとなる。
なおかつバックドアが観音開き式で、特に犬の降車時の飛び出し防止効果があり、安心・安全。天井のコンパートメントも、愛犬グッズを置いておくのに好都合。そして、ゆったりとした快適無比な乗り心地は、犬にとってもやさしいのである。価格も200万円台中半からと、輸入車として買いやすいのも魅力だ。