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バルブ崩壊後の発売タイミングも不運! デキはいいのに売れなかった悲しき「国産セダン」たち

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TEXT: 大内明彦  PHOTO: マツダ、日産、Auto Messe Web編集部

コストをかけたマイナー車の存在

 バブル経済期は、商品力を高めるため、惜しげもなく高度な構造、メカニズム、上質な素材を投入する車両作りが行なわれていた。しかし、バブル経済が崩壊すると事情は急変。コストを絞り込んだ開発へと一転していく。

 今回は、バブル期の贅沢な設計ながら、実売が崩壊後となって価格変動が生じたモデル、あるいはよく出来たモデルながら不発だった「お買い得グルマ」に焦点を当てて紹介。共通するのは、車両の実力が一流だったこと。それに対してコストパフォーマンスの高かった4ドアセダンを集めてみた。

 

【レパードJフェリー】

 まず、バブル期の象徴、高級車ブームを作ったシーマの流れをくむ日産車、「レパードJフェリー(1992〜1996年)」だ。レパードとしては3代目にあたり、日産の高級車ブランド「インフィニティ」シリーズの一環として企画されたモデルだったため、質的な仕上がりは言うまでもなし。

 ただ、ボディ前後を丸くすぼめたデザインが裏目と出て不発。歴史的に角張った押し出しの強いデザインが支持される傾向が強かった日本の高級車市場だっただけに、丸いデザインは拒絶反応が強かった。

 しかし、ハンドリングは、プラットフォームを共用し、当時このクラスのナンバー1と評価されたセドリック/グロリア、シーマ系をしのぎ、搭載エンジンも3リッターV6と4.1リッターV8の強力な2タイプを搭載。その実力は日産サルーンなかでトップクラスだったのも事実である。

 しかし、価格設定はバブル期のものだったが、不人気だったことから大幅な新車値引き、あるいは新車価格より50〜100万円ほど下げられた登録落ちの新古車が登場するなど、スタイリングさえ納得できれば、超お買い得モデルとして、正直、買っておけばと悔やまれる1台だった。

 

【マツダ・ミレーニア】

 こうした意味では、会社の事情から新型車を開発する余力がなく、やむなくバブル期に設計、開発した上質なモデルをベースに価格を下げて販売した「マツダ・ミレーニア(1997〜2003年)」もお買い得の1台だろう。

 1993年登場のユーノス800がベース。マツダが販売店を5チャネル化する時代に企画、設計されたFF上級セダンだっただけに、質的な充実度は十分といえた。

 ミレーニアとなる際、エンジンは2.5リッター、2.3リッター(ミラーサイクル)、2リッターという3タイプのV6を用意。装備類を簡素化することで価格の引き下げを図ったモデルだったが、基本骨格や走行系メカニズム、エンジンはバブル期の設計でコストのかかったものだったから、価格の割りにデキのいい1台だっといえる。

 しかし、ブランドイメージと車両内容が十分に知られていなかったことから不発に終わった。

 

【トヨタ・ブレビス】

 走りの実力は高かったがデザインがいまひとつ。不人気だったという点では、トヨタの「ブレビス」もこれに当てはまる。当時のトヨタ車としては異例によく出来だった小さな高級車、プログレのプラットフォームを流用したのだ。

 ロングホーイルベース/ショートオーバーハングのシャシーは、スタビリティが高くコントロール性に優れたハンドリングを実現。3リッター、2.5リッターの直6エンジンは軽快なレスポンスで余力は十分であり、シャシー系の弱点が気になったマークII系より、はるかに上質な走りを提供してくれた。

 

【三菱・カリスマ】

 逆に、ごくベーシックなモデルでハンドリングの手応えもごくふつう。なんの違和感もなく走らせることができたという点で、熟成度の高さを示したのが三菱の「カリスマ(1995〜2007年)」だった。

 この”ごくふつう”の手応えというのが、実は非常に難しく、当時の日本車が実現できなかった領域、ヨーロッパ車に追い付けない性能だった。

 しかし、ネッドカー(オランダ)で生産された三菱カリスマは、これが三菱車か、と思わせるほど自然な手応え。「走る、曲がる、止まる」という自動車に要求される動きの三要素を、ソツなく反応してくれたモデルだった。

 ハンドリングに特徴はないのだが、考えてみるといかにも操っているという手応えがみじんもなく、すべての動きは脚色のない自然な反応で伝わってくる。日本車でも、三菱でもこんなクルマが出来るのか、というのが当時の偽らざる印象だった。

 自動車を日常の道具と捉えるヨーロッパの生活感覚、これを具現化した熟成度、完成度の高さを感じさせるモデルだったが、これも不発に終わってしまったのである。

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