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電気自動車の消費電力は冷蔵庫何個分?年間1万km走行で電気代を試算してみた

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: Auto Messe Web編集部、日産

EVの航続距離は10年前に比べ約3倍に延びた

 電気自動車(EV)に搭載されている駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は、日産リーフで40kWh(キロ・ワット・アワー)と、62kWhの2種類がある。初代のリーフは前期型が24kWhだったので、約2~3倍の容量を搭載していることになる。

 初代リーフの場合、1回のフル充電での走行距離が、燃費測定のひとつの基準であるJC08モードで200kmであったのに対し、現在の40kWhの車種では400km(日本では2018年より使われるようになった国際基準のWLTCモードでは322km)、62kWhの車種では570km(WLTCモードは458km)と伸びている。やはり約2~3倍遠くへ走れるようになったわけだ。

 走るための消費電力は、モーターの出力も上がったので初代より増えて、現行車では155~161Wh/kmだ。1km走るのに、155~161Wh(ワット・アワー)の電力を消費するという意味である。

 と、いわれても、どれほど電気を使っているのか実感しにくいのではないか。そこで、家庭電化製品を例にあげてみよう。そのなかでもっとも電力消費が多いのは、冷蔵庫だ。

冷蔵庫は大容量のほうが消費電力が低いことも

 冷蔵庫は、ほかの家庭電化製品と違って24時間365日稼働し続けるので、もっとも電力を消費する。一家庭で使う電力の14%ほどであるとの調べが経済産業省資源エネルギー庁の『省エネ性能カタログ』にある。

 冷蔵庫は、過去10年の間に省エネルギー化が進み、消費電力は35%ほど少なくなっている。いっぽうガソリンエンジン車の燃費は10年で20%ほど向上しているが、より冷蔵庫の省エネルギー化の方が進んでいるのだ。日々使う家庭電化製品にとって、差し迫った課題であることがわかる。

 冷蔵庫の消費電力は、当然ながらその大きさによってかなり異なると思いがちだ。ところが、1~2人住まい用の130~220リッターの容量で250~300kWh/年であるのに対し、4人家族以上向けの500リッター容量で250kWh、大容量の700リッターでも約300kWhなのである。

 大容量なのに消費電力が少ないというのは、不思議な気がする。だが、大型冷蔵庫の方が、庫内のたくさんの空気をしっかり冷やすので、開け閉めに際し温度が変化しにくい。一度冷えてしまえば、あまり電気を使わないという根本的な理由がある。さらに、断熱材や人工知能での温度制御など、大きいが故のゆとりによる機構や、高価格帯となるため最新技術も応用できることから省電力化しやすくなるというわけだ。また使い方の面でも、物を詰め込み過ぎないで済むなど、機器としての電力消費に大小で差が出にくくなっている。

 さて、そこでEVとの比較になるが、日産リーフが走るときの電力消費は、1kmあたり155~161Whであると紹介した。したがって、年間走行距離が1万kmと仮定すると、1550~1610kWhの電力消費と算出できる。

 冷蔵庫の年間の電力消費量である250~300kWhと比較すると、5.3~6.2倍になる。EVの年間の消費電力は、冷蔵庫5~6個分といえるだろう。

年間1万km走行の電気代は月々約4000円

 では、電気代はどれくらいかかるのだろう。

 一例として、東京電力の標準的な料金では、1kWhあたり26.48円の設定だ。したがって、冷蔵庫の年間の電気代は、消費電力が250~300kWhとして6620~7944円である。毎月551~662円である。ただし、季節によって外気温が異なるので、夏は高め、冬は安めになるだろう。

 EVを使う場合、それまで家庭で使っていた電気量より増えるので、1kWhあたり30.57円の料金設定で試算するのが現実的と考えられる。というのも、電力料金は、1973年の第一次オイルショック(石油危機)を背景に、省エネルギーの推進が求められ、74年から三段階料金制度が導入された。国が生活を保障すべき最低生活水準の電気使用量を第一段階とし、続いて標準的な一般家庭での電気使用量の第二段階、そしてそれ以上の第三段階に分けられているからだ。

 冷蔵庫の電気量は第二段階の設定で試算した。一方、EVを使用すると従来考えられてきた家庭での電力消費に加え、ガソリン代に変わる移動のためのエネルギー料金としての電気代が追加となるため、家庭での電気使用量が増えることから第三段階の電気料金で試算するのが適切と考えた、ゆえに1kWhの電気料金は、30.57円の料金設定とし試算しよう。

 年間1万km走行すると仮定した日産リーフの場合、電気使用料金として試算すると、電力消費は1550~1610kWhなので4万7383~4万9217円になる。毎月の電気代としては、4000円前後上乗せになる計算だ。

非常用電源としても使える電気自動車

 ちなみに車体寸法的にリーフに近いトヨタ・カローラの燃費は、ハイブリッド車(HV)で25.6km/L、1.8リッターのガソリンエンジン車で14.6km/L。レギュラーガソリン代を全国平均の135.7円(3月30日時点)で試算すれば、年間1万kmで、HVが5万3007円、ガソリン車が9万2945円と計算できる。

 世界でもっとも効率のよいハイブリッドシステムの一つと考えられるトヨタの例であっても、EVの電気代と比べると割高であり、ガソリンエンジン車とEVでは、1.8倍の燃料代の差が生じる。

 一方、EVを家庭で充電する場合には200Vのコンセントを屋外に設置する必要があり(家庭電化製品の多くは100V。ただし、広いリビング用のエアコンディショナーでは200Vを使っている例も珍しくはない)、これに10万円ほどの費用が掛かる。

 ガソリン車と比較すれば、2年ほどで元が取れそうだし、初回の車検の3年後までであれば、コンセント設置代金を上回る利点がEVには生じる。しかしすでにHVに乗っているなら、経済的には乗り続けたほうが燃料代に関して損は少ないかもしれない。

 EVならガソリンスタンドに立ち寄る必要がなくなる。家に帰れば毎日満充電で翌日出かけられる。もちろん、出かけた後の充電も自宅で済ませられる。

 また、家庭との電力のやり取りを行う装置を設置すれば、万一の停電に際してもEVからの電力供給で冷蔵庫はもちろん稼働し、パーソナルコンピュータなど重要情報を保存しているデータを失わずに済む。

 EVと家庭との電気のやり取りを行う装置にもお金はかかるが、災害等に対する生活の安全保障の視点からなど、単に経済性だけでなく、時期が来たらEVに乗り換える意味はありそうだ。

 

 

 

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