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急増する国産高級車、1000万円オーバーのクルマと所有する価値と意義とは

貴重な時間を生み出す特別な世界

 クルマの価格が高くなっている。昨今の自動車メディアにおいて飛び交っているそんな言葉は、たしかに現実を反映したものといえるだろう。たとえば軽自動車でも、日本で最も売れている乗用車といえるホンダ「N-BOX」といったスーパーハイトワゴンの最上級グレードとなれば200万円に迫るプライスタグ。コンパクトカーも200万円台というケースは珍しくはない。

 しかし、そこには理由がしっかりとあり、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)をはじめとするほんの10年前には考えられなかったコストのかさむ装備がいまや当然となり、ハイブリッドの搭載などコストも増加。車両価格は上昇して当然なのだ。その分は確実に、快適性や走行性能、そして安全性の向上としてユーザーのメリットに反映されている。

 いっぽうで、全く別のレベルでも国産車の価格上昇を感じるゾーンがある。1000万円を超える、超高額車の世界だ。

 遡ること30年前の1990年9月。ホンダが発売したスポーツカー「NSX」の価格は標準状態でMTが800万円、ATでは860万円であり、当時の日本車最高額だった。当時はトヨタ「センチュリー」でも491〜758万円。量産の乗用車においては、1000万円オーバーのクルマは存在しなかったのだ。

 しかし現在は、複数の1000万円を超えるクルマがいくつも存在する。現時点(2020年3月)で一般的に購入できるモデルだけを並べても、

日産 GT-R:1082万8400円~2420万円
ホンダ NSX:2420万円
トヨタ センチュリー:1996万2963円 
レクサス LS:999万6000円~1670万900円
レクサス LC:1326万3268円~1479万926円
レクサス GS-F:1144万円
レクサス LX:1135万6481円
レクサス RC-F:1040万円

 以上のように多くの車種が存在(価格は消費税10%込み)。今では、国産車でも2000万円オーバーの量産車も存在するのだ。気になるのは、1000万円オーバーの価値をどこで実感できるかということ。それは、いくつかのパターンに分けられる。

世界にも通じる圧倒的なパフォーマンス

 速さを求めた結果、車両価格が上昇する。これはクルマの価格上昇の基本的なパターンだ。速いクルマを作るためには軽量化のために高価な素材が必要だし、高機能の先進的なデバイスにもお金がかかる、エンジンだってサスペンションやブレーキだって高性能なモノが必要で部品代は上昇する。

 そのうえ極限のテストにも膨大な予算を投じる必要があるし、かといって多くの販売台数を見込めるわけではないから1台当たりの開発費用負担も大きくなってしまう。速さを手に入れるにはお金がかかるのである。

 その代表例が2420万円の「GT-R NISMO」といえるだろう。同社の価格は国産車の最高峰だが、いっぽうで速さは量産車として世界最高峰ゾーン。絶対的な価格は高いもののライバルたちよりは安価で、そういった意味では、コストパフォーマンスは高いと判断できるだろう。

 上記のランクでは、NSXやGS-F、そしてRC-Fも当てはまる。NSXは高価なアルミでボディを作り、専用エンジンも搭載。高い性能を含め、こちらも世界的なスーパーカーと考えればリーズナブルな価格といえるだろう。

 レクサスGS-FやRC-Fは、いまや世界的なハイパフォーマンスカーでも少数派となった大排気量自然吸気エンジンの搭載が最大の魅力。いまや、貴重な存在である。燃費など環境規制が厳しくなる社会的背景を考えれば、モーターもターボを組み合わせない、ピュアな高出力エンジンを新車で味わえるのに残された時間はそう長くないだろう。

 

贅を尽くした極上のインテリアと快適性

 では、決して速くないセンチュリーが2000万円近くもするのはどうしてだろう。それはトヨタのハイエンドセダンとしての誇りである。頂点に立つ存在であるために、インテリアは高価な素材をふんだんに使った妥協なき作りだ。

 また、振動を徹底的に抑え込んだ車体つくりや、完成後には1台1台テスト走行をおこない、しっかりと状態を確認してから出荷されるといった一般的な市販車とは異なる品質管理のコストも価格に含まれる。

 レクサスのフラッグシップサルーンとなるLSや最上級SUVであるLXも同じ方向性。プレミアムブランドも頂点に立つモデルとして、テクノロジーも装備もインテリアの仕立ても、贅を尽くした仕上がりになっているのだ。

優雅さと特別感の象徴として

 GT-Rなどのように世界最高峰を競う抜群の速さがあるわけではないし、極上の快適性を誇るわけでもない。しかし、そこには最高の贅沢がある……。

 レクサスLCはそんな存在だ。パワートレインはハイブリッドとガソリンがあるが、後者はいまやレクサスLSにも搭載のないV8エンジンを搭載。スポーツモデルと違ってエンジンの性能を絞り出すのではなく、優雅さの象徴として搭載することに大きな意味があるのだ。

 近いうちにラインナップに追加予定のオープンモデル「LCコンバーチブル」は、そんな優雅さを象徴したモデルとなる。

 優雅さの象徴としての高価格の大型クーペは日本車では珍しいが、たとえばBMWの「8シリーズ」やメルセデス・ベンツの「Sクラスクーペ」など、プレミアムブランドには必須といえる存在。各車とも、ハイエンドセダンのコンポーネンツを活用しつつ、ぜいたくな空間としているのが一般的である。決して多く販売されるモデルではないがラインナップされるのは、それを求める層がいると同時に、ブランドの優雅さを象徴するからである。

 1000万円を超えるようなクルマは、はたから見れば「無駄に高い」と思われるかもしれない。しかし、貴重な時間を生み出す特別な世界は、大枚をはたいた人にしか味わえないし理解できないのもまた事実だ。しかし、高いからにはしっかりと理由がある。

 1000万円を超える予算を投じて満足度が得られるか?と問われれば、即座に「得られる」と断言できる。

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