販売台数、2015年以来最も少ない結果に
自動車産業の世界的な調査会社「JATO Japan Limited」は、欧州自動車市場についての最新レポートを公開した。
下降が続く欧州の新車市場。JATO Dynamicsのデータによれば、当月の販売台数は106万3264台であり、2019年2月の114万3852台から約7%減少。これは、95万5113台を販売した2015年2月以来、最も少ない2月度であった。この結果は、前年同月比で7.6%減となった1月とも重なる。今年の最初の2か月間で累計219万4706台が販売されたが、すでに7.3%のマイナスを積み上げている。
JATOのグローバルアナリストであるFelipe Munoz氏は「複合的な規制、認証を受けた車両が不足していること、経済にのしかかる重圧が増大していることを受けて、欧州での状況は急速に悪化している。これらの要因は、消費者への信頼感へ有害な影響を与えている」と述べた。
電動車のマーケットシェアは13%へ拡大
マイナスとなった状況に反して、電動車はまたも傑出した結果を残した。販売台数は、2019年2月の7万5400台から13万5500台へと大幅増加。80%以上となった増加は、著しく少ない台数となったディーゼル車とガソリン車との引き換えによって生まれたもの。また、Munoz氏は「今年になってこれまでのところ、欧州で運営している自動車会社にとって、電動車は唯一の命綱だ。これは良い知らせと言えるだろう。なぜなら、業界の電動化計画が、とうとう消費者から肯定的な反応として返ってきたからだ」と付け加えている。
さらに電動車の台数は、欧州の最大市場であるドイツ、フランスでは2倍以上。乗用車の中で電動車が占めるマーケットシェアは、ノルウェーが75%、スウェーデンで33%、フィンランドで31%、オランダで22%、ハンガリーで17%となっている。欧州主要5カ国の中では、フランスが先頭に立っており14%、イギリスが13%、ドイツが11%、スペインが10%、イタリアでは8.6%となった。
現実的なガソリン車とディーゼル車の代替となっている電動車。そのため、SUVは競争の激しい環境の中でもがいている状況だ。当月のSUV販売台数は、前年同月比1.7%減となる41万5300台となり、年度累計でも昨年同期比1.4%減となる86万5500台。減少の理由は、ラージSUVが17%増と大きく成長しているのに対し、コンパクトSUVが3.7%減少しているためである。SUVの販売台数は減少しているが、市場全体が縮小しているため、マーケットシェアは拡大しているわけだ。
ミッドサイズカーとバンは成長を記録
意外かもしれないが、ミッドサイズカーが、すべてのセグメントの中でもっとも大きな成長を記録した。これは新型となった「BMW 3シリーズ」と、「フォルクスワーゲン・パサート」によるもので、2モデルを合わせた台数はセグメント全体の31%。昨年と異なるのは、ミッドサイズカーの好調な結果は「テスラ モデル3」によるものではないことで、当月は6%減を記録した。
バンもまた、販売台数を伸ばしており、MPVのマーケットシェアを超えそうなほど成長している(MPVの台数は27%減となっているが)。一方、昨年においては消費者に2番目に好まれたボディタイプとなり、世界全体では1885万台を売り上げ、乗用車全体の4分の1を占めたセダンは、当月の台数は6.8%減少している。
このネガティブな状勢は、モデルランキングにも影響を与えている。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」は、欧州販売首位の座を「ルノー・ルーテシア(クリオ)」に奪われた。これは、 新型ルーテシア(クリオ)が以前から販売されていたのに対して、新型ゴルフは納車が始まったばかりであり、その間隙を突かれた形になったためだ。上位10位以内での変化としては「フィアット・パンダ」が5位となったことと、SUVが全体的に順位を落としたことがある。
このように、新型コロナウイルスの影響は、2020年2月29日の段階で、まだ欧州自動車市場へ達していなかったことがJATOのデータからわかる。6カ国のみ販売増となっているが、それは当月全体の4%にすぎない。
すでに、3月度における日本の新車販売台数は、昨年同月に比べて9.3%減少している。新型コロナウイルスの感染拡大は、世界にどのような影響を与えるのか油断できない状況だ。