路上に立たない、車内に残らない、安全な場所に避難
高速道路を走行中に故障や事故で道路上に停車することになった場合、乗員が行うべき行動を紹介しよう。まずは最初に、大原則として「路上に立たない」「車内に残らない」「安全な場所に避難する」である。これだけは覚えておいてほしい。この3点を踏まえたうえで、作業が安全かつ可能であれば後続車へ停車車両があることを知らせるための合図を行うこととなる。
停車している後の後続車への合図とその後の注意
すべてのクルマには助手席の足下などに赤色筒状の「発炎筒」がセットされているはずなので、それを取り外して停止車両の後方へ置く。カーブ区間であればコーナーの入口あたりで、後続車が停車車両の姿が見える前の位置がよいだろう。
つぎに停止表示板(三角表示板)も積んでいる場合はそれも停止車両後方に置くが、位置関係は停止車両~停止表示板~発炎筒という順番になる。後方への合図が終わったら、ガードレールや壁の外側へ出て待機をする。このとき避難スペースが選べるようなら進行方向に対して「停止車両より後」に位置したい。これだともし、後続車が停止車両に追突したときでも、飛び散る破片などを浴びる危険性が低いのだ。もちろん、これらの作業をしているとき、同乗者には先に避難してもらうことが言うまでもない。
そして最後に非常電話や手持ちのスマートフォンから通報する。高速道路であれば非常電話は「1kmごと」に設置されているし、スマートフォンからは110番または#9910に連絡してもいい。ガードレールの外側といえどあまり動き回らない方がいいと思うので、近く非常電話がないときはスマートフォンから通報したほうがいいだろう。高速道路上なら「キロポスト」と呼ばれる距離表示板が路肩にあるので、その数字を伝えると正確な位置を把握してもらえる。
都市高速では非常電話も避難場所
首都高速のような都市高速道路の場合は少し複雑だ。首都高速では道路上に停車するような緊急時の対応について以下の3点を挙げている。ひとつがハザードランプの点灯、次が後方に十分注意して発炎筒や停止表示板の設置。
そのときは最寄りの非常電話まで移動したい。ここなら多少避難できるスペースがあるのだ。なお、首都高速の場合、非常電話は「約500m」間隔に設置されていて、トンネル区間であれば「100m」間隔だ。
発炎筒の視認性は高いが長時間は使えない
さて、前出の発炎筒だが、これは字のごとく炎が出る筒のこと。同じ名前で発煙筒という合図としての煙を出すものもあるが、発炎筒は夜間でも後続車に危険を知らせなければいけないので視認性のいい「光が出る」ことがポイントだ。なお、正式名称は「緊急保安炎筒」だが、最近はLED式のものもあるので保安基準では「非常信号用具」と表現されている。
この緊急保安炎筒とLED非常信号灯の比較はよくされているが、どちらが優れていると言う考えは持たないほうがいいだろう。炎を出すものもLEDタイプも基準は夜間で200mの距離から確認できる赤色の灯光が出せることとなっている。
しかし、緊急保安炎筒のメーカーが発表する数値によると昼間で600m、夜間では約2km先から確認できるレベルなので視認性はバツグン。しかも煙も出るのでよりわかりやすい。ただ、緊急保安炎筒は5~10分程度で燃え尽きてしまうので、実際の現場では複数本用意していないと救援車両が到着するまで合図を続けられないと言う面もある。
それに対してLED非常信号灯(写真はエーモン工業製)。保安基準適合品であれば夜間でも200m離れた位置から視認できるという項目をクリアしているが、実際のところ例え点滅させていても緊急保安炎筒ほどの明るさはない。だが雨や霧などの条件では炎や煙よりLED非常信号灯のほうが視認性がいいと言うこともある。つまり現場の状況によってお互い得手不得手があるのだ。
停止表示板の併用が効果的
そこで登場するのが停止表示板(三角表示板)だ。こちらも夜間で200m離れた距離からヘッドライトの光で照射したときにその反射光を照射している位置から容易に確認できることが規定となっているので単独で使用しても効果はあるが、理想は緊急保安炎筒やLED非常信号灯と組み合わせて使うべきだ。炎が消えても危険を知らせ続けられるし、サイズが大きい停止表示板を置くことで光源が小さいLED非常信号灯にも気がつきやすくなる。
つまり緊急保安炎筒、LED非常信号灯のどちらを積むにしても停止表示板も用意しておくのが正解なのだ。なお、停止表示板にはLEDが組み込まれているタイプもあるが、このタイプは国家公安委員会認定品にはなっていないので、効果は公的に証明されていない。