見た目はストリート用でも悪路に対応した構造を採用
いま世界的にSUVが人気で、様々なメーカーから、大型SUVからコンパクトSUVまでたくさんのモデルが売られています。文字どおり百花繚乱といった感じです。
電子制御技術の進化で、スタイリッシュなSUVでも4×4と言われるクロカン4WDに迫る性能を発揮できるようになってきました。最近登場したSUVでそんな高性能SUVの代表モデルはトヨタRAV4でしょう。ダイナミックトルクベクタリングAWDという4WDシステムは、前後とリヤ左右輪の駆動トルク配分を自動的にコントロールして抜群の走破性を発揮します。
また、ラングラーのレネゲード・トレイルホークは、一見するとかわいらしく、およそ4×4的な性能を備えているとは思えませんが、9速ATのうちの1速をスーパーローギヤに設定することで、4×4のローレンジ並みの駆動力を発揮します。
そう、最近はSUV人気が熟成してきて、快適な都会はSUVだけじゃなく、本格オフロード性能をイメージさせるようなモデルも増えてきているんです。
しかし、近年人気のSUVはタウンユースが主体。加えて昨今のCO2排ガス規制もあって、一見するとオンロードタイヤ風のSUVタイヤを装着する例が増えています。
これだけ乗用車用タイヤと似ていると、いっそ乗用車用タイヤを履いてもいいんじゃないか? と思えてきます。実際、乗用車用タイヤを装着しているモデルもないわけではありません。ただ、多くのSUV純正装着タイヤは、乗用車用と異なるタイヤ構造になっています。
具体的には、サイドウオールのタフネス性を高めていた構造になっています。ラジアルタイヤは、サイドウオールが柔軟で乗り心地いいのが特徴の一つですが、不用意にオフロードやラフロードに足を踏み入れると、尖った石や岩などでタイヤ側面をカットしてバーストしてしまう危険性が高くなります。
SUV用として作られているタイヤは、そんなラジアルタイヤの弱点を補った構造になっています。
タイヤの名前の後ろにH/Tとか、A/Tなどと書かれているのは、SUV用タイヤです。文字には意味があって、H/Tはハイウエイテレーン。オンロードや高速道路を主体に使うことを考慮して作られたタイヤです。タイヤの内部構造はオフロード用のタフネス性を備えながら、ドレッドパターンは縦溝主体で、オンロード用のタイヤのデザインとよく似たものとなっています。
A/Tは、オールテレーンといって、ダートからオンロードまでカバーするオフロードタイヤです。それほどいかついデザインではありませんが、ブロックパターンを採用しているものが多く、ラフロードでの走破性を予感させます。ただ、オンロードを走らせてみると意外に乗り心地が良く、またノイズが少なくてその快適性の高さに驚かされます。
M/Tはマッドテレーンといって、本格的なオフロード走行で性能が発揮できるようにタイヤ構造もタフに、またトレッドデザインもトラクション性能に優れるラグパターン(横溝主体のパターン)が採用されています。
さすがにM/Tはオフロード性能に特化しすぎています。スポーツタイヤでいえば、サーキット専用のセミレーシングタイヤ的なキャラクターです。ストリート向けスポーツタイヤ…ポテンザRE71Rやアドバン・ネオバ、ディレッツァZIIIに相当するのがA/Tでしょうか。
先日、横浜ゴムのオフロードタイヤ「ジオランダーX-AT」に試乗する機会がありました。Xシリーズは通常のジオランダーシリーズよりもオフロードの匂いを強く出しタフネスなイメージなのですが、いざ走らせてみると思いのほか乗り心地が良く、またノイズも少なめなのに驚かされました。
もちろん静粛性を重視したSUVタイヤには劣りますが、実用性は備えているので、ドレスアップとしてこの見た目はアリじゃないか? と思えるタイヤでした。
また別の機会にBFグッドリッチのオールテレーンA/T KO2というオールテレーンのオフロードタイヤを履いたクルマに試乗する機会があったのですが、こちらもオフロードでの性能は素晴らしくいいのに、オンロードでも思いのほか静かで、乗り心地も良く、これなら毎日履いていてもいいかも…と思えるものでした。
最近のタイヤ開発シミュレーターや他の様々な技術の進化で、ドレスアップ用タイヤとしてもA/Tカテゴリーのタイヤがグッと身近になった気がします。
もちろん装着するSUVのキャラクターもあるし用途もありますから、全面的にオススメとは言いませんが、そんな面白いタイヤも出てきていますので、SUVユーザーにとっては選択肢が広がったといえるのではないかと思います。