道筋を意識しながら操作する
とくに高齢者は足腰が弱くなってきたり、体の動きが鈍くなったりするので、同乗の際には運転に気遣いが必要だ。同じく小さな子供連れの場合も、クルマの動きに体がうまく対処できないことも考えられ、チャイルドシートを使うにしても、同乗者があるときの運転には気遣いが求められる。
運転者の操作の様子をクルマの後ろから眺めていると、落ち着きのない走りをしているのをよく見かける。クルマの流れが順調なのに、速度が安定せず、常に加減速を繰り返しているというもの。あるいはカーブへ入っていく際に、外側の車線をはみ出しそうになるというケースも然り。さらに市街地では先の信号が赤になっているのに、まだアクセルを踏んで加速するといったパターンだ。
それでもドライバーは、自分の意志で操作をしているので、それほど違和感を覚えず走っているかもしれない。しかし同乗者は、落ち着きがなく、突然挙動を変える車内で、不安や不快な思いをしているケースが多いのも事実。また、車酔いを起こしやすい自分を、自身の体調のせいだと考えているかもしれない。
運転中の目線が近すぎることが原因
理由の第一は、運転中の目線が近すぎること。多くの運転者が、前を走るクルマの後ろ姿を見て、車間距離を維持する操作をしている。したがって、車間距離が少しでも縮まればブレーキペダルを踏む、広がればアクセルペダルを踏むことを繰り返す。
このやり方で運転中に先の様子を見ていると、クルマの流れをつかむことができ、何台か前のクルマがブレーキランプを点灯させれば、いずれ目の前のクルマも減速するので、早めにアクセルペダルを戻しはじめる準備ができる。前のクルマがブレーキを踏んだから、慌ててブレーキをかけるのではなく、まずはアクセルを戻し、ゆっくりと減速すれば同乗者も前のめりになりにくいだろう。
同じく遠くを見ることは、カーブを曲がる際にも有効。あらかじめ、カーブのきつさを予測できるからだ。しかし、目の前を走るクルマばかり見ていると、カーブに気付くことが遅れ、カーブの深さもわからずハンドル操作をはじめるので、まず遅れ、遅れるので慌てて切り込んで、今度は切り込み過ぎてしまう。
そこで、切り込みすぎたハンドルを戻す操作をカーブの途中で行うことになる。カーブで外側の車線をはみ出しそうになる様子はまさに、ハンドルの切り遅れを示しているのだ。
一つのカーブを曲がるだけなのに、何度もハンドルを切ったり戻したりすれば、同乗者は左右に体を振られ続け、体は安定しない。さらに、カーブの出口を見るくらい遠くを見る癖をつけておけば、カーブの終わりが近づいたところでハンドルを戻しはじめることを意識すると、滑らかに直線へ移行できるだろう。
このように唐突な加減速やハンドル操作の繰り返しを減らすことで、車酔いも起きにくくなるはず。そもそも、発進する際も、クリープで前に進もうとする力が急にクルマに掛からないようにするため、ブレーキペダルから足をパッと離すのではなく、戻すようにしてからアクセルペダルに踏み換えるといい。
その後もアクセルペダルを踏みこむのではなく、ブレーキペダルを離すとクルマが動き出すクリープを利用し、タイヤが1回転するくらい動いてからアクセルペダルを踏みこむようにすれば、急な加速にならず、同乗者への負担は減る。
ブレーキの際も、停車する寸前に軽くペダルを戻し気味にすれば、カックンとクルマが停車せず、同乗者の体が前のめりになりにくい。
単に運転操作をゆっくりやればいいというのではなく、クルマの機能を活かし、また道筋を意識しながら操作をすれば、おのずと滑らかな走りとなるのである。
そのうえで、発進の際のアクセルワークは、燃費向上にも役立つ。遠くの信号を見ながら速度調整をする運転であれば、信号の直前でブレーキを使って減速し過ぎたり、停車してしまったりする前に、徐行の段階で信号が青になるかもしれず、そうすればクルマが動いているうちに再加速できるので燃費向上に効果がある。クルマの燃費は、発進するときにもっとも悪化するからだ。