そもそも「徐行」の定義とは
クルマを運転する人ならば「徐行」の意味を知らない人はいないはず。しかし、なんとなく理解しているというレベルでしょう。交通安全に関わる大切なことのひとつですので、改めて徐行とは何かについておさらいしてみるのもいいかもしれません。
道路交通法において「徐行」とは「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう」(道路交通法第二条)というもの。道路交通法第四十二条で、徐行すべき場所というのが指定されています。
道路標識がなくても徐行すべき場所は数多い
道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合、および次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければなりません。
1)左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く)。
2 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂を通行するとき。
また、道交法の各条文では徐行すべき場合が規定されています。ざっとご紹介しますが、条文が難解なので要約します。
第9条 警察の許可で歩道を通行するとき。
第18条 歩道のない道で歩行者の脇を通過するとき。
第25条 道路から左折して出るとき。
第31条 安全地帯で停車中の路面電車を追い越すとき。
第32条 徐行している車両に追いついたとき。追い越しは禁止。
第34条 右左折するとき。
第35条 環状交差点(ラウンドアバウト)内を通過するとき。
第36条 信号のない交差点で優先道路に進入するとき。
第37条 環状交差点(ラウンドアバウト)に進入するとき。
第39条 緊急自動車が停止指定場所を通過するとき。
第53条 徐行するときは合図しなければならない(右左折・転回。停止・後退も)。
第71条 水たまりや泥を飛散させそうなとき。身体障害者・児童・高齢者・乗降中のスクールバスの脇を通過するとき。安全地帯に歩行者がいるとき。
なお、道路交通法施行令第21条で「徐行する時は制動灯を点けること」となっています。安全運転の基本ともいえる徐行ですから、意外かもしれませんが徐行すべきシーンが多いわけです。
また徐行の速度ですが、直ちに停止できる速度ですから、常に一定ではなく、路面状況によって変わるということ。積雪路とドライ舗装路とでは当然ながら停止できる速度は変わってきます。
後続車にはブレーキランプで徐行の合図を
道交法の条文を読んで驚いたのは、徐行にも合図が必要だということ。自転車の場合は停止のときと同じ右手を斜め後方に向ける合図ですが、自動車の場合は「制動灯を点ける」ように施行令第21条で指定されています。
たしかに、徐行するときはブレーキランプが点灯しますので普通に減速すれば合図が完了しますが、徐行状態を維持して走行する場合は消灯してしまいますから、後方確認して、接近する車両があればブレーキランプを点灯させる必要があるということでしょう。
あえて徐行したほうがいい場所
これは筆者の経験的なケースですが、対面2車線道路の踏切や、信号待ちの先頭にいて青に変わり発信加速する際に、対面側がやや渋滞している時に、その車両の隙間から横断しようと人や自転車が飛び出してくることがあります。こちら側は前方が空いていて速度が出しやすい状況ですが、徐行するようにしています。
また、住宅地の路地などは子供や自転車が一時停止もせずに横切ってきたりしますので、徐行もしくは20〜30km/h程度でかなりノロノロ走るようにしたほうが安全でしょう。
特に朝の通勤時間帯などは、遅刻しそうな自転車がかなり無法な状態で走っていることもありますし、帰宅時間帯の中学校や高校に隣接する通学路は二重走行や逆走など、命知らずなカオスに巻き込まれるケースも数多し。このような状況が想定される場所を走る方は、徐行したほうがいいと思います。
さらに買い物の自転車が多く走る夕方の時間帯の大型スーパー周辺、コンビニ駐車場に入れる際、スーパーや量販店の狭い駐車場もいろいろ飛び出してくるので徐行必須でしょう。
そして、こちらが徐行していても、相手がまったく見ていない場合もあるので、デイライトを積極活用するなど視認してもらう工夫も有効。ちなみに徐行の標識ですが、最近の標識は英語表記も併記されるようになりました。平成19年に施行された観光立国推進基本法や東京五輪により、外国人観光客向けの表記へと標識を変更するようになり、徐行の標識にも”SLOW”の文字が順次追加されていくようです。 危ないな、と思ったら徐行する。それだけで事故リスクはかなり低減できるのではないでしょうか。