ルール遵守やモラルに欠ける困った人々
基本的には人里から離れた場所にあり、独自のルールも多い「サーキット」。自動車やバイクの走行会や競技を行なうための場所だけに、一般の行楽施設では考えにくい、変わった事件が起きることもある。全国各地のサーキットやイベント主催者、ドライバーたちから聞いた”あり得ないできごと”の数々を紹介しよう。
高齢ドライバーによる迷走からの逆走
各所から寄せられたエピソードで、もっとも多かったのが「招かれざる侵入者」だ。某サーキットで草レースが行なわれた日のこと。決勝のスタートは15時で、その時間から入場する人はいないと考え、サーキット入口のスタッフも引き上げていた。ところが道に迷った高齢ドライバーが、無人の入場ゲートを通過しパドックに。そのままピットロードに入り、こともあろうに逆走して車両がピットインする方向に進み始めたというのだ。
異変に気付いたスタッフが猛ダッシュするも、クルマに追い付くのは難しく、侵入者はピットロード入口から逆走でコースイン。ちょうどレースの先頭集団が手前のコーナーの出現、ようやく異変に気付いた運転手が停止し、目を覆うような大惨事には至らなかった。
サーキット内の進路が不明によるトラブル
もうひとつは運送会社の新人ドライバーが、初めてサーキットへ配達に来たときの話。パドックの中央に目立つコントロールタワーがあるにも関わらず、フラフラとピットロードを逆走し始めた。そのまま最終コーナー側からコースに入ってしまい、しばらく走った時点でポストのオフィシャルが気付き大騒ぎ。サーキットの仕組みを知らない一般客が誤ってコースに入ることはしばしあるという。
走行車両が1台もおらず大事には至らなかったが、知らない人にとっては確かに分かりにくいと反省。サーキット側は「進入禁止」の表示を明確にするなど即座に対策したという。
山中だからこそ招かざる侵入者も数多し
侵入するのは人間だけと限らない。とあるサーキットでスポーツ走行中、事故でもないのに走行中止を示す”赤旗”が出された。すぐにスタッフがセーフティカーに飛び乗り、コースへ出てしばらくすると銃声のような音が。すぐに走行が再開されたので不思議に思い、確認すると「ポストが猿に占拠された」とのこと。
破裂音は動物を追い払う花火みたいな道具で、今回のサーキットでは営業前の早朝、クマがストレートを駆け抜けていったこともあるそうだ。山の奥深くにある別のサーキットでは、猿が出没するのは日常茶飯事とのことで、ポストに『猿注意』というボードを用意。その扱いを聞けば黄旗と一緒で「追い越しは禁止で注意して走行せよ」ということだった。
絶対にやってはいけない暗黙ルールのはずが…
次は悪気がないのは十分に承知しているけど、少し頭を使えば分かるだろうという実話。秋の行楽シーズンで気持ちのいい青空だった日、某サーキットはイベントで大にぎわいだった。するとあるピットのすぐ後方から白い煙が上がっている。スタッフが飛んでいくと参加者の仲間が、炭を起こしてBBQの準備をしている真っ最中。火を使っていいピットなんて世界のどこにも存在しないし、給油やオイルの補充などを行なう場所でもある。
壁にはデカデカと『火気厳禁』と書いてあり、全サーキットが掲げる当然のルール。同行者にも最低限の決まりごとは教えないとダメ、というのを再認識させられた。
“サーキット免取り”という末路
また、二度とサーキットに出入りして欲しくない例としては、アルコールに関する常識はずれのドライバーのお話。パドックで物置に使っている小屋にクルマが突っ込み、運転中に意識を失ったかと心配した人が駆け付けると、車内はシャレにならないほど酒の臭いが充満していたそうだ。
元からマナーに関する評判はよくない人だったが、さすがにコレは限度を越しているレベル。サーキットから出入り禁止の処分を言い渡されたのは当然のことだろう。
赤いマシンが追い越すという怪奇現象
最後は事件というか少し笑えるエピソードを。それは、某サーキットでは霧の日に「赤い某車種」が追いかけてくる、直前まで見えず気付くと真後ろにいて追い越していく、という怪奇譚がまことしやかに語り継がれている。
噂によるとサーキットで事故死したドライバーの霊で、先輩の先輩が実際に見たなんて心霊話にありがちな話もあったので、創業から勤務するベテランのスタッフに質問。答えは「今までウチで事故死した人はいないし、そんな濃霧なら走行中止か追い越し禁止になっているはずです」だった。
*写真はすべてイメージです