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シートベルトはクルマに乗るときの命綱!後席だから着装しなくて大丈夫は大間違い

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TEXT: 御堀直嗣(Mihori Naotsugu)  PHOTO: ボルボ、Auto Messe Web編集部

衝突のショックで車外へ体が放り出されることも

 シートベルトの装着率は、未装着が違反の対象となったこともあって、前席は一般道でも高速道路でも90%以上と高まっている。だが、後席では高速道路こそ74%であるものの、一般道では40%を切っている(2019年秋の警察庁とJAFの合同調査結果)。

 いつからか、後席は安全との間違った認識が広がり、それが根強く残っているようだ。理由を推測すれば、タクシーは後席に客を乗せるし、ハイヤーも後席へ客や要人を乗せるので、後席は運転席より安全という漠然とした印象が、シートベルトをしなくても大丈夫という安全神話になってしまったのではないか。

 しかし、JAFなどで衝突実験を公開しているように、クルマという一つの空間に前後席とも一緒に乗車している以上、衝突の衝撃は同じであり、なおかつ後席や助手席の乗員はハンドルなど体を支えるものを手にしていないので、衝撃の影響はより大きく現れる。

 たとえば、体を支えられないので、体が室内の前方へ飛んでいく。その際、前席の背もたれはほとんど役に立たない。その上を飛び越えてしまうのだ。なおかつ前席乗員にぶつかり、怪我を負わせてしまう。もちろん、後席乗員自身も、窓やその支柱に頭からぶつかる危険性が高い。さらには、窓ガラスを破って車外へ体が放り出されることさえある。そして、後続車に轢かれてしまうことも考えられるのだ。

 以上のことから、自家用車での全席シートベルト着用は当然ながら、タクシーやハイヤーはもちろん、観光バスや高速バスに乗車する際も、シートベルトを装着するのが最低限の安全の備えになる。

 クルマに装備されるシートベルトは、3点式とよばれるもので、バックル一つを止めれば、腰と上半身を一辺に拘束できる。

 これに対し、バスのシートベルトは最前列を除いて腰を拘束する2点式である場合がほとんどだ。これではあまり意味がないのではないかと思っている読者もあるかもしれない。だが、衝撃によって体が放り出されると、バスの車内のどこへ自分の体が飛んで行ってしまうかわからない。

 そして他の乗員に傷害を与えてしまうことも考えられる。したがって少なくとも座席に体が留まるために、2点式シートベルトをする意味はある。また、座席に留まれれば、窓ガラスを割って外へ放り出されることも防ぐことができる。

 乗用車に比べバスは車高が高いので、バスの事故を見ると横転している例がある。乗用車でもミニバンなど背の高い車種の場合は、横転の可能性がある。背の高い車種では車外へ体が放り出される危険がより高まるので、シートベルトは必須だ。

 それでも、なかにはエアバッグが装備されていればシートベルトを装着していなくても大丈夫なのではないかと考える読者がいるかもしれない。

 エアバッグは、正式にはSRSエアバッグと称され、SRSの意味は、「Supplemental(補助) Restraint(高速) System(装置)」で、あくまで補助機能でしかない。では何を補完する安全装置かというと、まさしくシートベルトなのである。逆にいえば、シートベルトをしていないとエアバッグの効果は半減し、なおかつ想定外の体の部分をエアバッグで圧迫する恐れもあり、それによって別の傷害をもたらすかもしれない。

 3点式シートベルトは、スウェーデンのボルボが発明した。ボルボは、1927年に創業した自動車メーカーであり、欧州の自動車メーカーとしては後発といえる。しかし、その開発段階で道路を外れ立ち木に衝突する事故を経験し、以来、クルマは何より人命を大切にするものでなければならないことを企業の根幹としてきた。以来、安全の追求を怠らなかったため、今日でもボルボといえば安全なクルマの代名詞にもなっている。

 ボルボの生み出した安全装置や技術は枚挙に暇がないが、3点式シートベルトは1959年に発明(PV544に初採用)された。なおかつ、安全の要との判断から、特許を申請せずに無償公開した。したがって、世界の自動車メーカーが特許料をボルボへ支払うことなく3点式シートベルトを採用することができ、100万人以上の命を救ったとされている。

 そこまでの熱意でボルボが発明し、世界へ公開した3点式シートベルトを、いまだに装着しない人があるのは信じがたいことだ。衝突事故を起こさなくても、事故回避のため急ブレーキをかければ、乗員の状態は前のめりとなり、3点式シートベルトをしていなければ車内のどこかへ頭や体をぶつける恐れがある。

 身の安全の基本は、いつでも、どの座席に座っていても、シートベルトを装着することを忘れてはならない。

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