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ル・マン優勝車「マツダ 787B」 伝説の4ローターユニットは市販エンジンの延長線だった

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TEXT: 大内明彦  PHOTO: Auto Messe Web編集部

史上最強REユニット”R26B”の真実

 世界的なコロナウイルス禍の影響はモータースポーツの世界も例外ではない。HVプロト規定最後の年となった今年のル・マン24時間レースも、すでに9月に延期が決定。トヨタの3連覇に期待されているが、ル・マンで衝撃的だったのは、何といっても1991年のこと。「マツダ787B」が日本車初のル・マン制覇を果たしたときだった。

 メーカー系として日本で最も長いル・マン参戦歴を持つマツダは、エンジンだけなら1970年に10A型ロータリーをベルギーのプライベートチームが使用したのを皮切りに、日本チームとしては1974年にシグマMC74が12A型を搭載して参戦。マツダとしては「マツダスピード」が1979年に252iで参戦を始める足跡を残していた。

 この間、車両もRX-7ベースのグループ5(正確にはIMSA-GT規定)からグループC2(当初はCジュニア)、そしてIMSA-GTPへと段階を踏んでステップアップ。エンジンも2ローター方式の”13B型”から1986年に757の3ローター”13G型”へ、そして1989年の767で4ローター仕様の”13J型”へと順次発展を遂げていくことになる。

 ロータリーエンジンの排気量拡大は、ローター径/厚の拡大、ローター数の増大で図ることができたが、当時のロータリーエンジンは、1ローター654ccが最大サイズ。ローター2基で1308ccの13B型、ローター3基で1962ccの13G型、ローター4基で2316ccの13J型というように排気量の引き上げを行っていた。

 なお、おなじみの13B型は市販エンジンだったが、13G型と13J型はレーシングエンジンで、ル・マン24時間レースを重きを置いて開発されたもの。13G型と13J型は開発初期の名称で、シーズンを重ねる段階で市販用と同じく排気量を意味する”(R)20B型”と”(R)26B型”と名称を変えている。 回転が滑らかなことを大きな特徴とするロータリーエンジンだが、レシプロエンジンと同じく、ローター数が増えるとスムーズさはさらに向上。出力的には、自然吸気方式の13G型で450馬力以上、13J型では600馬力以上を発生していたのである。

 最終的には、26B型の最終仕様となる787B用がル・マン制覇(1991年)することになったが、途中、13G型から20B型と呼称を変えた3ローターエンジンは、グループC/IMSA-GTP以外に3リッター規定時代の富士GCシリーズにも投入。サーキットに独特のカン高い排気音を響かせた。

 この20B型は、生産車にも搭載され「ユーノス・コスモ」に搭載。ロータリーファン待望の市販3ローター搭載車だったが、マツダはこれにターボを装着したのである。公表出力は、当時の運輸省指導によるメーカー間の自主的な申し合わせに従い280馬力。耐久性や実用制がまったく損なわれない状態で、当初は330馬力仕様で仕上がっていたという。

 振り返れば、330馬力仕様で市販されなかったことは惜しかったが、それでも4速ATと組み合わせ、上質な高速性能を持つ超快足GTカーとして十分以上の実力を備えたのである。

 残念ながら、さすがに4ローター26B型の市販計画までは耳にしなかったが、787Bが1991年のル・マンでターボのグループCカー勢に打ち勝ち、優勝を果たした瞬間の印象はいまも新鮮だ。

 ちなみに、787Bの履いていたホイールは「RAYS」製。メイド・イン・ジャパンのホイールは現在ル・マン2連覇中の「トヨタTS050」にも採用され、日本企業としては目下ル・マン3勝を記録している。なんとか9月のル・マンが開催できる状況になればよいのだが。

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