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自動車メーカー各社「新型コロナウイルス感染防止対策」へ支援強化、具体的な内容は?

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TEXT: 工藤貴宏  PHOTO: トヨタ自動車、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント、日産自動車、本田技研工業

新型コロナウイルス世界大流行のもとでの自動車メーカー

 ランボルギーニがレザー職人の手によってマスクを制作したり、フェラーリが人工呼吸器用のバルブを手がけるなど、イタリアのスーパーカーメーカーまでもが対応している新型コロナ感染拡大のなかでの貢献。果たして、日本の自動車メーカーの状況などはどうなのだろうか。現時点で判明している各メーカーの動きをまとめてみた。

フェイスシールドから患者搬送車まで様々な支援

 いち早く表明したのが「トヨタ」グループだ。一部の地域に非常事態宣言が発出された4月7日には、グループ各社として医療現場および医療用品への支援を表明。サプライチェーンを通じてマスクなど衛生用品の調達を実施するほか、試作型や3Dプリンターなど車両開発における試作部品を作る技術(量産品以外の部品を作る能力がある)を生かし、医療現場で必要とされる『フェイスシールド』を作り始めている。427日から月産約4万個のペースまで引き上げ、今後は月産7万個まで拡大する予定だという。

 また、関連会社の「アイシン精機」では病院向けの『簡易ベッド台』『消毒液容器』、医療機関などで使う『簡易間仕切り壁』など“医療機器以外”で必要とされる備品生産での可能性について「調査をスタートしている」としている。

 また、大手の病院やいくつかの自治体には『コロナウイルス感染者の移送用車両』を提供。JPNタクシーをベースに制作され、前席と後席に隔壁を設置。前方を陽圧、後席を陰圧することで後席の空気が前席へまわらない構造となっている。トヨタ自動車東日本の東富士総合センターにて開発・架装をおこなった車両で、軽症者の移動サポートを担う。

 さらに、トヨタの関連会社であり、日本の救急車マーケットで圧倒的なシェアを持つ「トヨタカスタマイジング&デベロップメント」では、救急車での患者搬送時に使う『陰圧搬送用簡易カプセル』を急ピッチで開発中。すでに施策を終えて近日中のデリバリーを予定しているという。

 また、医療従事者に向けてフェイスシールドだけではガードしきれない広範囲の飛沫拡散を最小限に防ぐ機材を開発し、4月中には現場実証に投入するとしている。

 いずれも、これまでは海外品に依存していたものを国産化し、さらには救急車とのマッチングをはかることで今後につなげていくという。

 4月13日から、東京都港区や渋谷区へ軽症患者輸送用の車両を提供し始めたのが「ホンダ」だ。オデッセイやステップワゴンをベースに、前席と後席の間に隔壁を設置し、前席を陽圧/後席を陰圧とすることでドライバーへの飛沫感染を防ぐ構造となっている。今後、さらに車両提供を拡大していくという。

 また、5月末までには医療現場で不足している「フェイスシールド」の生産をモノづくりセンター栃木や鈴鹿製作所などで開始。医療現場へ無償提供する。

 そして、日産は各事業所で保有している3Dプリンターを活用して『医療用フェイスシールド』を製造。月に約2500個のペースで医療現場へ提供するという。ちなみに英国サンダーランド工場では、ボランティアとして最大で毎週10万個のペースでフェイスシールドを出荷する見通しだ。

 三菱自動車も各事業所で『フェイスシールド』の制作に着手。月産1500枚のペースで制作する岡崎製作所などが4月27日に岡崎市へ提供したほか、岐阜県のパジェロ製造や岡山県の水島製作所も製造し地元への寄贈を計画。今後は生産枚数を増やすとともに、マスクなど他の感染拡大防止のための製品についても生産を検討するとしている。

命に関わる支援の重要性

 なかには「今後に不足すると言われている人工呼吸器を作ればいいのに、自動車メーカーにそういった動きがないのはなぜ?」と考える人もいるだろう。そういったニーズは自動車メーカーも認識しているが、簡単にはできない理由があるのだ。製品が”人の命に直結する”からである。

 4月10日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて自動車工業の4団体が合同でメッセージを発信。日本自動車工業会の会長である豊田章男氏は、スピーチで人工呼吸器について語っている。

「人工呼吸器の製造を期待する声があることも認識しております。しかし、これは、人の命に直結する医療器具です。自動車も人命に関わる製品ですので命に関わるモノづくりが、どれだけ難しいかを我々は理解しています。簡単なことではありません」と。

 つまり、万が一のことを考えると、医療に関するノウハウが全くなく、かつ不具合が命に直結する製品を急遽作るのは難しいということだ。確かにそのとおりである。

 しかし、トヨタをはじめ自動車メーカーがすすめている人工呼吸器に関わることはある。それは自動車生産のノウハウを生かした医療器具生産効率改善のサポート。場所や人材面でのバックアップをおこなうことで人工呼吸器の供給台数を増やそうという試みだ。

「まずは、医療機器を作っている方々のところに行き、その生産を一つでも増やせるような、生産工程の改善など、我々のノウハウが活かせるサポートを始めてまいります」と、豊田章男会長は述べている。

 日本の自動車メーカーはトヨタばかりではなく、全メーカーに渡って動きがある。トヨタの動きは一例だが「トヨタ自動車を中心にTPS(トヨタ生産方式)支援チームを結成し、医療機器の大幅な増産などで困りごとを抱えている企業にすぐに支援に入れるよう、現在、製造者側を含めた関係各所と具体的な対応について調整を開始しております」とも説明している。

 戦後最大の危機と言われる、新型コロナウイルスの感染拡大。日本が誇る産業である自動車産業も、その被害を最小限に抑えるために大きく動いているのだ。

 そこで働くスタッフ、そして医療関係やインフラに従事するスタッフの負担を軽くするためにも「ステイホーム」の徹底が求められる。そして、1日も早い終息を祈ろう。

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