マツダがMT車を展開している強い意志
日本国内の新車販売に占めるアニュアルトランスミッション(MT)車の比率が2%を割って久しい。ドライバーがクラッチペダルを踏んでシフトレバーでギヤをチェンジしながら走るMT車は、現時点で最新の統計データとなる2018年には1.4%。いずれも自販連(日本自動車販売協会連合会)調べの数字だ。今やスーパースポーツカーでさえ3ペダルMT車のないモデルが圧倒的多数を占めるようになっている。
それにも関わらずマツダは、ロードスターのようなライトウエイトスポーツカーのみならず、CX-8を除く自社開発の国内販売モデル全車種にMT車を設定している。
マツダはなぜMTにこだわるのか、その理由をマツダ広報部に聞いた。
MTならではの運転の楽しさも
−−マツダはなぜスポーツカー以外にもMTを設定するのでしょうか?
マツダをお選びいただくお客さまには、運転の楽しさを期待してマツダ車を購入いただく方が多くいらっしゃいます。ですので、スポーツカー以外のモデルでもMT車を楽しみたいというご要望に応えるべく、2012年から始まった新世代商品群では、CX-8を除くすべてのモデルでMT車を設定しております。
−−現行CX-5にモデルライフ途中でMT車を追加したのはなぜでしょうか?
当初CX-5にはMT車を設定しておりませんでしたが、MT車の設定を望むお客様の声も多く、導入の検討をしてまいりました。海外仕様にはすでにMT車の設定がありましたので、2018年10月の商品改良時に国内でも導入いたしました。
−−実際にMT車を購入したユーザーの評価はいかがでしょうか? 特に、ロードスター以外の車種でお声があればお教え下さい。
マツダ3のお客様からは「エンジンを使い切る感じで、自らクルマを操っている感覚が強い」「MTを操作してテンポ良く、とても楽しく走ることができる」といったお声をいただいております。また、「ATとMTを比較試乗してみたが、MTのが走りが楽しいと思って、MT車に決めた」というアテンザのお客様もいらっしゃいます。
ロードスターは約7割がMTユーザー
−−車種ごとのMT販売比率をお教え下さい。
2019年12月〜2020年2月の販売実績は以下の通りとなっております。
◆CX-3 約5%
◆CX-30 約3%
◆CX-5 約3%
◆CX-8 設定なし
◆マツダ2 約5%
◆マツダ3 約8%
◆マツダ6 約9%
◆ロードスター 約69%
◆新世代商品群 総計6%
−−MTに対し、技術面ではどのようなこだわりを持っているのでしょうか?
各車にMTを設定するにあたっては、どのモデルにおいても「人間中心」という一貫した設計開発思想で、純粋に運転を楽しめるMT操作フィールを追求し、どのモデルでもマツダらしい「人馬一体」を感じていただけることを目指しています。
新世代商品群の各車に搭載している「SKYACTIV-MT」は、「シフトフィールと燃費性能を高める、軽量・コンパクトMT」を開発コンセプトとし、ロードスターのようなスポーティで小気味よく、意のままに操れるシフトフィールの実現を目標に掲げました。
そこで、従来の構造にとらわれず機能を一から見直すことで、ユニット単体で最大16%軽量化するとともに、内部抵抗を大きく低減させ、ユニット単体で従来より1%車両の燃費を改善しました。そして、ショートストロークと軽い操作力という二つの相反する特性を両立させ、軽快なシフトフィールを実現しています。
MT効果はドライビング・ルネッサンスか
MTを純粋なスポーツモデル以外にも設定するのは、ブランド全体のスポーティなイメージを高める効果が期待できることから、マツダ以外でも同様の動きが広がりつつある。
また、近年多発する発進時のペダル踏み間違い事故を確実に防げるという観点からも、MT車は見直され始めている。
そしてクルマ好きにとっては、より精密に意のままにクルマを操る喜びを味わえ、ドライビングテクニックを磨くことのできる、なくてはならない存在だ。
マツダがクルマ好きの声に積極的に応え、クルマ好きが楽しめるフィーリングを持つMT車を、大半の車種に設定している英断には、心から拍手を送りたい。