200万円オーバーもある軽自動車の購買戦の敵は誰
日本自動車工業会が4月8日に発表した「2019年度軽自動車の使用実態調査」によれば、軽自動車ユーザーの高齢化が進展するとともに、ファーストカー需要が都心部でも増加するのに合わせ、安全・快適性が着実に進化。それに伴って価格帯も年々上昇傾向にあり、ユーザーの購入理由も経済面より使い勝手にシフトしている。今や軽自動車でも車両本体価格が200万円を超えるものは珍しくない。
だが果たして本当に、軽自動車のコストメリットはなくなったのだろうか? むしろコンパクトカーの方が安くなっているのだろうか?
軽自動車vsコンパクトカーの具体例として、ひとつには、2020年3月の日本自動車販売協会連合会(自販連)の新車販売実績および全国軽自動車協会連合会(自販連)の調査で最も売れている、軽自動車とコンパクトカーの、ホンダN-BOXおよびフィットに関して、もう一つは、価格の安さを大きなセールスポイントにしている軽自動車とコンパクトカーの、ダイハツ・ミライースおよびブーンに関して、それぞれの購入コストとランニングコストを比較してみた。
購入時のコスト安はミラ圧勝
まずは購入コストを、ホンダおよびダイハツ公式サイトのセルフ見積りで計算する。グレード・メーカーオプションはいずれも、安全装備を可能な限り充実させつつ、コストパフォーマンスにも配慮して選択した。駆動方式はいずれもFFとしている。またディーラーオプションは、設定がある限り、基本的に下記の装備を装着している。
・フロアマット
・トノカバー
・ナビ
・ドライブレコーダー
・フロントカメラ
・リヤカメラ
・ETC2.0車載器
・スピーカーセット
【ホンダN-BOX G・EXターボホンダセンシング】◆車両本体価格 179万3000円
◆ディーラーオプション 49万5264円
◆軽自動車税(6月届出) 0円
◆軽自動車税環境性能割 0円
◆自動車重量税 5600円
◆自賠責保険料(37ヵ月) 2万9550円
◆手続代行費用 4万7300円
◆預かり法定費用 6000円
◆リサイクル法関連費用 8400円
◆計 238万5114円
【ホンダ・フィットHOME(1.3Lガソリン)ナビ装着pkg、コンフォートビューpkg付き】◆車両本体価格(メーカーオプション込み) 180万700円
◆ディーラーオプション 53万7372円
◆自動車税(6月登録) 2万2800円
◆自動車税環境性能割 1万4700円
◆自動車重量税 1万6800円
◆自賠責保険料(37ヵ月) 3万170円
◆手続代行費用 4万7300円
◆預かり法定費用 6000円
◆リサイクル法関連費用 9240円
◆計 248万5082円
車両本体価格は大差ないものの、N-BOXのディーラーオプションにトノカバーの設定がないなどで約4万円の差が付いたのに加え、税金の差が5万円強に及んだことで、最終的にはフィットの方が約10万円高くなっている。N-BOXは軽自動車の中でも高額な部類に入るが、それでも登録車のフィットより購入時の出費を抑えられそうだ。
【ダイハツ・ミライースGリミテッドSA3】◆車両本体価格 124万8500円
◆ディーラーオプション 34万6500円
◆軽自動車税(5月届出) 0円
◆軽自動車税環境性能割 0円
◆自動車重量税 3700円
◆自賠責保険料(37ヵ月) 2万9550円
◆計 162万8250円
【ダイハツ・ブーンX“GパッケージSA3”サイド&カーテンエアバッグ、ナビ装着pkg付き】◆車両本体価格(メーカーオプション込み) 159万8300円
◆ディーラーオプション 39万6616円
◆自動車税(5月登録) 2万800円
◆自動車税環境性能割 0円
◆自動車重量税 1万1200円
◆自賠責保険料(37ヵ月) 3万170円
◆計 205万7086円
ダイハツのオンライン見積りでは手続代行費用、預かり法定費用、リサイクル法関連費用が計上されないものの、実際の購入時にはこれら費用6万円強がプラスされると考えてよいだろう。
ともあれこちらは、約43万円もの差を付けてミライースが圧勝。1人乗りが中心で、ともかく安く済ませたいということであれば、やはり軽自動車が有利ということになりそうだ。
ランニングコストの軍配は難しい
続いて、ランニングコストを計算する。なお、整備費用についてはいずれも60ヵ月・車検2回分込みのメンテナンスパックに加入することとした。ホンダ各車は「定期点検パック まかせチャオ スタンダードLSコース」にホンダカーズ東京中央で加入した場合、ダイハツ各車は「ワンダフルパスポート60AE」にダイハツ東京販売で加入した場合の費用となっている。
自動車保険料についてはイーデザイン損保で、主に下記の条件でオンライン見積りしている。
・6等級新規
・運転車限定特約なし
・運転車年齢条件なし
・ブルー免許
・通勤・通学使用
・対人・対物・人身傷害無制限
・搭乗者傷害3000万円
・無保険車傷害2億円
・弁護士費用300万円
・車両保険は諸費用込みの車両購入コストをカバーできる金額に設定。免責は1回目5万円、2回目以降10万円
この1年間の保険料を単純に5倍にした額を計上した。実際には、車両保険価額のダウンや料率クラスの変更などによって保険料は毎年変わることをご了承いただきたい。
燃料代については、資源エネルギー庁が発表した2020年4月27日時点のレギュラーガソリン店頭現金小売価格129.0円をベースに、各車とも5年間で5万km走行し、燃費はWLTCモード総合燃費の通りだった場合を想定している。
【ホンダN-BOX G・EXターボホンダセンシング】
◆メンテナンスパック代 14万8620円
◆軽自動車税(5年分) 5万4000円
◆自動車重量税(車検2回分) 1万3200円
◆自賠責保険料(車検2回分=24ヵ月×2) 4万2280円
◆自動車保険料 298万9200円
◆燃料代(WLTCモード総合燃費20.4km/L) 31万6176円
◆計 356万3476円
(車両購入コスト 238万5114円)
トータルコスト 594万8590円
【ホンダ・フィットHOME(1.3Lガソリン)ナビ装着pkg、コンフォートビューpkg付き】
◆メンテナンスパック代 16万4700円
◆自動車税(5年分) 15万2500円
◆自動車重量税(車検2回分) 4万9200円
◆自賠責保険料(車検2回分=24ヵ月×2) 4万3100円
◆自動車保険料 259万3200円
◆燃料代(WLTCモード総合燃費20.2km/L) 31万9307円
◆計 332万2007円
(車両購入コスト 248万5082円)
トータルコスト 580万7089円
メンテナンスパック代や税金は軽自動車のN-BOXが圧倒的に安く、自賠責保険料と燃料代はほぼ変わらないものの、イーデザイン損保では軽自動車に新車割引が適用されないため、N-BOXのトータルコストがフィットを14万円も上回ってしまう。
自動車保険料は損害保険会社や契約内容によって大きく変わる。またデビュー間もない車種や料率クラスが高い車種の場合、保険会社によっては車両保険を付帯できないこともあるため、特に注意して選ぶようにしたい。
【ダイハツ・ミライースGリミテッドSA3】
◆メンテナンスパック代 13万8050円
◆軽自動車税(5年分) 5万4000円
◆自動車重量税(車検2回分) 1万3200円
◆自賠責保険料(車検2回分=24ヵ月×2) 4万2280円
◆自動車保険料 271万2850円
◆燃料代(WLTCモード総合燃費25.0km/L) 25万8000円
◆計 321万8380円
(車両購入コスト 162万8250円)
トータルコスト 484万6630円
【ダイハツ・ブーンX“GパッケージSA3”サイド&カーテンエアバッグ、ナビ装着pkg付き】
◆メンテナンスパック代 13万8050円
◆自動車税(5年分) 12万5000円
◆自動車重量税(車検2回分) 3万2800円
◆自賠責保険料(車検2回分=24ヵ月×2) 4万3100円
◆自動車保険料 257万5850円
◆燃料代(WLTCモード総合燃費21.0km/L) 30万7143円
◆計 322万1943円
(車両購入コスト 205万7086円)
トータルコスト 527万9029円
こちらもやはり、新車割引が適用されないミライースの自動車保険料が約14万円高いものの、税金が約9万円、燃料代が約5万円安いことで帳消しに。車両購入コストの差(約43万円)がほぼそのままトータルコストの差となった。 このように、依然としてコストメリットは軽自動車の方に分があるものの、契約する自動車保険の会社や内容によっては容易に逆転してしまうほど、その差が小さいケースも生まれている。裏を返せば、軽自動車かコンパクトカーかは、もはや経済性ではなく、運転のしやすさや使い勝手、デザインや走り、つまりは好みで選んでもよくなったと言えるのかもしれない。