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クルマとバイクはどっちが速い? レーシングドライバーの出した答えとは

国内でもっとも適任といえる青木拓磨選手に訊いてみた

 これまで誰もが何度も心に思ったことがある「バイクとクルマ、どっちが速いのか?」という究極の疑問。「加速はバイクだ」とか「トップスピードは4輪だ」「サーキットでのラップタイムを見れば歴然だ」とさまざまな意見があるだろう。

 ただ車両や乗り手、フィールドシチュエーションといった要因もあることから、どちらが速いと一概には言えないのだろうか。

 それを実際に確認してみようと、過去に幾度もトライしたことがあった。しかしその結果がハッキリ決着したとはならないあたりが、ある意味、答えは永遠に出ないものなのかも知れない。

 そこをあえて、ということで今回は2輪と4輪のどちらのレースフィールドも経験している青木拓磨選手にその質問をぶつけてみた。

「4輪と2輪ではコーナーの入り方が違う」

 青木拓磨選手は国内で活躍したのち、1997年に2輪ロードレース世界選手権(WGP=現在のMotoGP)の当時最高峰クラスとなるGP500クラスに参戦を開始。翌年のシーズン直前、テスト時の事故によって脊髄を損傷し下半身不随となってしまった。しかし現在は車いすドライバーとして4輪でのレース活動を展開し、2021年のル・マン24時間レースへの挑戦を目指して積極的にレース活動を行なっているレーシングドライバーである。 レーシングライダーとして2輪の最高峰クラスまで登り詰めた。2輪レーサーとしての活動は23年前に途絶えているものの、昨年からは「サイドスタンドプロジェクト(SSP)」のサポートを受け、ホンダの市販MotoGPマシンであるRC213V-S、そして市販レーサーともいえるホンダCBR1000RRRというマシンにも乗っている。 また、4輪レーサーに転向してからはサーキットからラリーレイドまで、さまざまなレースで何台ものマシンに乗ってきた。現在はル・マン24時間耐久レースへの挑戦のためにLMP2マシンでのテストを行なっている(新型コロナウィルスの影響で、まだLMP2マシンでのレース実戦は出来ていないが…)。

 その青木選手の答えは、なんと「4輪」であった。
 
 その結果に至ったのは、山本尚貴選手スーパーフォーミュラマシン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)のオンボード映像(1分3秒953のコースレコード)だという。 その映像を確認してみると確かにすごい走りだが、このどこで2輪は負けたと感じたのだろうか?

 「コーナーの処理の仕方です。1コーナーの進入も、馬の背もSPコーナーも、ですね。LMP2マシンに乗ってどうしてもタイムが遅いってことでたまたま山本選手のオンボード映像を見たんですよ。そうしたら、自分の2輪時代からの乗り方とコーナーの入りが全然違う。マシンを完全に信用しているっていうか、ブレーキングポイントからクリップまで進入スピードが2輪より遥かに速いんです。

 コーナーをパスする時って、イメージとしてスローインファーストアウトってセオリーがあると思うんですが、それが全くない。アクセルを戻すけど戻していない? って感じなんですよねぇ。加速とかトップスピード云々よりも、このコーナーでやられちゃうなって思ってます」。

 山本選手の走りの映像は、自身のこれからのレースカーの乗り方にも大いに参考になった様子だ。

 ということで、2輪と4輪のトップクラスを経験してきた青木選手の答えは「4輪のほうが速い」であった。次は誰がどう答えるのか? 他のドライバーやライダーたちにも、ぜひ聞いてみたいと思う。

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