クラシカルな木目調が当時の若者に人気だった
外観では、車体側面に木目調をあしらったステーションワゴンも、余暇を楽しむクルマの趣を高めるため、60~90年代あたりに装備する車種があった。主に米国のステーションワゴンで車体側面に木目調をあしらう車種があったほか、英国ミニのトラベラーでは、木目調とは異なるが木製の枠組を車体側面に取り付けていた。
国産車でも80年代の2代目シビックの派生車種としてシビック カントリーがあり、また日産のセドリック/グロリアにも車体側面に木目調を採り入れていた例がある。木目調や木枠の発想の原点は、馬車にあるのではないか。これら木目調や木枠を車体に取り付けたステーションワゴンは、鉄製のクルマにほのぼのとした人のぬくもりを加え、親しみを増した。
馬車に時代の名残としては、レザートップもある。屋根や、屋根の一部に革張りのような装飾を施し、幌のような面影を持たせたものだ。屋根全体を覆うものと、ハーフレザーといって屋根の後半にだけ装飾を施したものもある。そして、屋根の後ろ側の側面にS字型をした金具のような造形を持つものもあり、この装飾はかつて幌を折りたたむ際に使ったヒンジの名残を飾りとしたものだ。
空気抵抗を減らすためにミラーの形状に拘った
小さな部品では、砲弾型のフェンダーミラーも憧れの装備の一つであった。
今日のようにドアミラーが1983年に認可されるまで、国内ではフェンダーミラーでなければならず、標準は平らな鏡に支柱を取り付けた形状だったが、よりスポーティな車種では砲弾型といって鏡より前方の部分を流線形にしたものがあった。どれほど効果があったかわからないが、それによって少しでも空気抵抗を減らそうとしたためだ。
しかし砲弾型では鏡の部分が丸くなり、後方視野が限られるため、やや横に長い長方形の鏡を使いながら、空気抵抗を減らそうと砲弾型のようにカバーを取り付けたものを、タルボ型といった。
木目調の内装部品では、木目調ステアリングも60~80年代に、革巻きとともに憧れの一つであった。欧州の高級車は、内装にローズウッドが使われるなどしてきた経緯があり、それと調和するのは木目調のハンドルであった。また、60~70年代のスポーツカーやスポーティな車種でも国内外を含め採用されていたり、注文装備として用意されていたりした。
イタリアの自動車部品メーカーであるナルディ製がとくに有名で、日本でも憧れの的になり、標準のハンドルから付け替えることがクルマ好きの間で行われた。しかし、エアバッグが標準装備になっていく過程で、交換はもちろんのこと、木製ステアリングの採用は減った。また木目のハンドルは、革巻きに比べ滑りやすい場合もあり、姿を消すようになったと考えられる。
ただし、レクサスLSなど国内外の高級車では、手で握る部分に皮を用い滑りにくく対応しながら、他の部分を木目調としたハンドルが今日も選択肢として残る。