アクティトラックの生産終了で軽トラは2択時代へ
2021年6月現在、新車で買える軽トラは、スズキ・キャリイ、ダイハツ・ハイゼットトラック、の実質3車種のみ。「サンバートラックとかミニキャブトラックもあるじゃん」と思われる人もいるだろうが、前述の2車種以外はすべてOEM(エンブレム等が違うだけで中身は同じクルマ)。まとめると以下のようになる。
〈キャリイ系〉
スズキ・キャリイ、ミツビシ・ミニキャブトラック、マツダ・スクラムトラック、ニッサン・NT100クリッパー
※2019年4月~2020年3月の新車販売台数は合計7万5042台(全軽自協調べ)〈ハイゼット系〉
ダイハツ・ハイゼットトラック、スバル・サンバートラック、トヨタ・ピクシストラック
※2019年4月~2020年3月の新車販売台数は合計8万9356台(全軽自協調べ)
ホンダ独自開発のアクティトラックは2021年6月に生産終了。後継車種も予定されていないため、今年から軽トラはキャリイかハイゼットの2択に絞られることに。
「アクティは空荷でも後輪にトラクションを掛けやすいミッドシップレイアウト。エンジンは元気だし耐久性も高く、ファンも多いのに残念ですが…。ただカスタムベースとしては、キャリイやハイゼットに比べてアフターパーツが極端に少ないのが難点。イジっている人も少ないと思います」と、軽トラックの販売やカスタムに詳しい但東自動車の岩出さん。
ということで、軽トラカスタムの世界では今、キャリイvsハイゼットという一騎打ちの様相を呈している。これから購入を考えている人は果たしてどちらを選ぶべきか? エンジンやコスパ、室内&荷台の広さ、そしてイジりやすさなどの面で比較し、岩出さんのコメントと共にどちらが“買い”なのか検証していく。軽トラ7番勝負、始まります。
エンジン勝負! キャリイのR06AとハイゼットのKF、どっちがイイ?
まずは心臓部、エンジンから。キャリイのR06A型とハイゼットのKF型を比較してみよう。いずれもターボはなく自然吸気のみ。ハイゼットはMTとATでマックスパワーが異なるが、エンジン自体は同じだ。
〈キャリイトラック〉
◆エンジン型式:R06A型
◆種類:水冷直列3気筒DOHC12バルブ
◆総排気量:658cc
◆内径×行程:64.0×68.2mm
◆圧縮比:11.0
◆最高出力:37kw(50PS)/5700rpm
◆最大トルク:63N・m(6.4㎏・m)/3500rpm〈ハイゼットトラック〉
◆エンジン型式:KF型
◆種類:水冷直列3気筒DOHC12バルブ
◆総排気量:658cc
◆内径×行程:63.0×70.4mm
◆圧縮比:11.3
◆最高出力:[5MT]34kw(46PS)/5700rpm
[4AT]39kw(53PS)/7200rpm
◆最大トルク:60N・m(6.1㎏・m)/4000rpm
出足も伸びもパワフルなキャリイのR06Aエンジン
「両車を乗り比べてみると、キャリイの方がレスポンス良くキビキビ走れる印象。低回転でトルクが出る分、出足からパワフルで普段の使い勝手がいいし、高速域もしっかり伸びる。静粛性も高く、細かいところだと始動時のセルモーターの音も安っぽくないのがGOODです」と岩出さん。
ハイゼットのKFエンジンはチューニング向き!?
一方でハイゼットは耐久性の高さが長所だという。「知り合いのリース業者に聞いた話ですが、何十万キロと走らせてもハイゼットのエンジンは故障がかなり少ないそう。軽トラはたいてい徹底的に乗り潰すクルマですから、頑丈なのは嬉しいポイントでしょう」。
またエンジンチューンを考えた場合も、ハイゼットのKFの方が「面白い」と岩出さんは語る。「伸びる余地が大きいというか、手を入れた分だけしっかり応えてくれる。ターボ化するのもすごく楽しいですよ。その点、キャリイのR06Aはノーマル状態ですでにチューニングエンジンに近い印象。イジり甲斐があるのはKFの方ですね」。
〈エンジン勝負 結論〉
ノーマルで乗るならキャリイ。チューニングするならハイゼット
燃費勝負! もともと燃費はいいけど、よりエコなのはどっち?
仕事でも遊びでも、とにかく乗り倒す軽トラだから燃費も気になる。二駆か四駆か、またマニュアルかオートマかでも変わってくるのだが、カタログ上のJC08モード燃費は以下の通り。
〈キャリイトラック〉
◆キャリイ・5MT:[2WD]19.8km/L [4WD]19.6km/L
◆キャリイ・3AT:[2WD]17.2km/L [4WD]17.0km/L
◆スーパーキャリイ・5MT:[2WD]18.8km/L [4WD]18.0km/L
◆スーパーキャリイ・3AT:[2WD]16.2km/L [4WD]15.6km/L
◆スーパーキャリイ・5AGS:[2WD]19.0km/L [4WD]18.4km/L
〈ハイゼットトラック〉
◆ハイゼット・5MT:[2WD]18.6~19.6km/L [4WD]18.6~19.0km/L
◆ハイゼット・4AT:[2WD]17.4~18.4km/L [4WD]17.4~17.6km/L
◆ハイゼットジャンボ・5MT:[2WD]18.6km/L [4WD]18.6km/L
◆ハイゼットジャンボ・4AT:[2WD]17.4km/L [4WD]17.4km/L
オートマ4速のハイゼットは燃費良好
マニュアルで比べると微差ながらキャリイが有利、オートマになるとハイゼットの方が明らかに優秀だ。「キャリイのオートマは3速ATでハイゼットは4速AT。その差が出ているのでしょう。パワフルさならキャリイ、エコならハイゼットという感じです」と岩出さん。
スーパーキャリイの5AGSも要注目。2WDでは19.0km/L、4WDでも18.4km/Lと省燃費だ。「5AGSはクラッチやギアチェンジ操作が自動になった5MTのようなもの。だから燃費もいいんです。それでいてオートマ感覚で乗れる(AT限定免許でもOK)のがメリットですが、ちょっと走りにクセがあり、常にアクセル踏みっぱなしだとギクシャクしちゃう。AT車というよりはMT車の感覚で、アクセルON・OFFのメリハリを意識するとスムーズに走れますよ」。
惜しむらくは現在、5AGSはスーパーキャリイX限定になっていること。以前はKXやKCにも設定されていたのだが、2019年9月の一部仕様変更を機に廃止されてしまったようだ。
〈燃費勝負 結論〉
MTならキャリイ、ATならハイゼット。スーパーキャリイの5AGSも良し